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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第二章 26班
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観察

観察


「・・・って事は親父、ほとんど分かった事なんて無いってことかよ。」


今の段階では情報が錯綜しており、正しい情報は掴めておらず分かっているのはあの様子のおかしい物を感染者と呼び、噛まれたら感染する事、報道では外出禁止と感染者との接触の禁止を繰り返していた。


「感染者ですか。あれはたしかに操られているだけで悪意は感じられませんね。それで我々はここから何を?」


元はすでに感染者しか見えなくなった道を窓から眺めながら、頭を掻くと五人を見る。


「現状では出来る事はほとんどないな。とりあえずここの建物自体に侵入される心配はないが、出るとなるとかなりしんどい。」


「班長、0班は動けないんすか?」


「あの人達強かったもんね。」


雄山と拓実の言葉に、元は少し考えるがすぐに結論は出たようだ。


「今回は無理だろうな。あれが全員犯罪者グループとかであれば正面からいって全て叩き潰せばいいが、今回はそうもいかん。出来ることは俺らとたいして変わらんだろうし、そして手加減が苦手なやつも若干いるしな。」


今は出来ることもなく、皆歯痒い気持ちで窓の外を眺めていた。そしてあたりは薄暗くなり始めている。


「とりあえず夜は外に出ないほうが賢明だろう。あの感染者とやらが夜目がきくのかは分からんが、噛まれたらアウトだ。明るくなるまでは情報を集めつつ体を休めとけよ。」


霰はパソコンの前に座り元から頼まれた調べ者を続け、残りの班員は交代で仮眠室で休憩をとったり、いつでも動けるようにできる範囲で軽く体を動かしたりしていた。


「なあなあ霰、なんか新しく分かった事ある?」


勇司はあまり眠り事もできず、所在なさげに部屋をウロウロしたり椅子に座ったりを繰り返しながら作業を続けている霰に話し掛けてみる。


「そうだねー。特局の人達はほとんど無事みたい。現場に出てた人達もなんとか感染は避けながら解決の方法を探してるみたいだよ。」


「そいつは何よりだな。霰も休憩入れといたほうがいいんじゃないか?」


「うーん、もうちょっといろいろしてから休憩もらうよ。」


「そっか。じゃあ頑張ってな、少し寝てくるわ。」


そう言うと、パソコンにむかう霰を残して仮眠室へとむかい時間は過ぎ去っていく。




そしつ朝日が昇る頃には全員が自らのデスクに座り、少し疲れた表情を見せていた。


「さて、とりあえずおはようさん。困った事に状況はあまりよくないみたいだ。感染を広げないように警察を中心になんとか押し留めようとはしてるみたいなんだがあまり上手くはいってないらしい。」


「班長、それよりもさらに重要な問題が発生していそうです。」


全員の視線が久信に集まり、久信は立ち上がると窓際に立つ。


「昨日に比べてなんですが、感染者達の動きが少し鈍くなっているよう感じます。」


「それが何の問題なんだよ久信、そのほうが被害少なくなるだろ。」


勇司の言葉を無視して久信は言葉を続ける。


「昨日から感染者達の動きを見続けてきたんですが、全く休む様子がありません。そして人を噛みますが食べるのか目的ではなく感染、すなわち増殖が目的です。そしてその動きから同胞を増殖する以外の意思が非常に希薄に感じます。」


「って事は食事も取らず、睡眠も取らず、ひたすら増やす事だけに終始しているわけか。そいつはあんまり持ちそうに無いな。」


「そうですね。最初に感染した人間で考えるともってあと二日、動き続けていると考えると更に時間は少ないかもしれません。」


その発言を聞いて皆の顔に焦りが出てくる中、その時窓ガラスに何かが突然激しく叩きつける音がし、皆の体がビクッと反応する。

窓ガラスには羽根を生やした要がぶち当たり、そのままずり落ちていくのを呆然と見守っていたが慌てて勇司は窓に走り寄り、窓を開けると足の鉤爪が窓枠に引っ掛かり気絶しながもぶら下がっていた。


「自分がやるっすよ。」


後ろから歩いてきた雄山が片手で足首を掴むと、室内に引きずり入れる。そして要の体を力強く揺さぶるとゆっくり目を開けた。


「・・・み、みっ、水っ・・・。」


勇司は飲みかけのペットボトルの水を手渡すと、むさぼるように飲み干しそのまま気絶したが、雄山は先程より強く揺さぶり目を覚まさせる。


「・・・ここは?あれっ、たしか容疑者を追い続けてやっと捕まえて引き渡したら、財布がないことに気付いて特局に飲まず食わずで飛んできて、何やら透明な物にぶつかって・・・。あっ、橋中さんに勇司君もお久しぶりです。」


「要さん、もしかして今何が起こってるか知らないとかじゃないですよね?」


勇司からの質問に、要は霰からもらった板チョコと干し梅を一緒に頬張りながら首を捻った。


「何かあったの?みんないるしもしかしてみんな合宿中かい?そういえば0班で合宿した時はあれは凄かったな。一泊二日で合宿所を五ヶ所壊して班長が頭抱えて悩んでたし、賠償金が凄かったよ。」


勇司は今起こってる事を手短に話し、要がぶつかった窓から下の歩き回る感染者の姿を見せるとようやく全てを理解したようだ。


「いつの間にそんな事に。前も似たような事件があったような気がするけどあの時は、ここまで広がる前に取っ捕まえて、気絶させたら特技が解けたからここまで広がらなかったからなぁ。」


そこまで黙ってずっと考え込んでいた久信が思わず話し掛ける。


「それはどうやって容疑者見つけたんでしょうか?」


「たしかあれは・・・、そうあれだよっ!たしか特技【ハーレムの王】ってやつでその本人は雄ライオンになり、噛まれたら雌ライオンになるっていう特技だったはず。あれは0班に入ってたしか最初に確保した容疑者だったな、思い出深い事件だよ。」


多少ふざけた事件にもかかわらず、久信は真剣に話を聞きそして更に考え込んでいた。


(最初の保菌者と感染者の違いですか。たてがみのような分かりやすい見た目の違いがあればいいのですが、見た目の違い・・・いやっ、なんで今まで気付かなかったのでしょう。今ならまだ間に合いますか。)


「班長、この特技の持ち主が分かりました。すぐに個人の特定に入ります。」


久信の言葉とともに、一気にこのウィルス感染事件は動き始めるのであった。




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