経過
経過
ワンボックスは特局へと戻ってきたが、特局の周りは未だ平静を保っていた。勇司達は急いで26室に戻るとそこは緊急要請を知らせる連絡音が鳴り響いている。
「こりゃあまずいなんてもんじゃないな。こっちまでくるのも時間の問題か。」
パソコンに表示されている地図上で要請の場所を知らせる赤点が、徐々に広がっていく様子を元は眺めながら煙草に一本火をつける。険しい表情で一口吸うと、すぐに揉み消しすぐにいろいろな場所と連絡を取り始めた。
久信は窓際に立ち、何かを考えながら外の様子を見ていると、その横に勇司も並び窓から外を眺める。
「なあ、ありゃあいったい何だったんだ?」
「何なんでしょうね?とりあえず勇司さん行きますよ。あの方達がもうそこまできて、保育園の象さんバスが囲まれそうになっています。」
「マジか?ちょいと行ってくる親父っ!」
二人は26室から飛び出すと、後ろから聞こえる声を無視して駐車場に走っていきワンボックスに乗り込むが入り口のゲートは閉じられ、ワンボックスを出す事ができない。
二人は車をあきらめ、通用口から外に出ると目の前を逃げ惑う人々が通り過ぎていく。
「こりゃあさっき見た光景だな。どっちだ久信?」
久信は黙って走り始め、勇司は慌てて後に続くが、逃げ惑う人々の中に白く濁った目が複数混ざっておりなかなか進めずにいた。
【紫煙・麻痺】
勇司の口から吐き出された紫色の煙は、噛み付こうとしていたサラリーマンの口に吸い込まれるとその動きを止め、地面に倒れ込んで歯をカチカチ言わせている。続けざまに襲いかかってくる老婆に、ローキックを放とうとするが久信に止められる。
「勇司さんっ!その方々は多分自らの意志でやってるわけではないのでお年寄りにローは駄目です。」
勇司は慌てて出しかけたローキックを軽い足払いに変え、腕を掴んで地面に優しく転がすと腕を噛みにきた老婆を無視し、走って先を急ぐ。
なんとか障害を排除しつつ先に進むと、象がデザインされている幼稚園バスへとたどり着くが、外は完全に囲まれており、中はパニック状態におちいっていた。
「勇司さん、目を閉じていて下さい。」
運転手がサングラスをしているのを確認した久信は、あらかじめ威力を弱めてあるスタングレネードを二つロングコートの中から取り出すと集団の中に投げ込んだ。いきなり放たれた光と音により、目を白く濁らせた集団はその動きを鈍らせ右往左往している所に甲冑姿の勇司が飛び込み、バスの前方にいた集団を一人ずつ噛まれる事も気にせず退かし始め、バスの前方を空ける。
久信は正面から走って、象の鼻に脚をかけ天井に飛び乗ると、運転席の窓を叩き窓を開けさせた。
「運転手さん特局のものです、今すぐ出してください。あの銀色の方は気にせずどうぞ。」
運転手は何度も頷くと、バスはゆっくりと進み始める。バスの前方の安全を確保していた勇司は迫ってくるバスに気づくと慌てて象の鼻にしがみつくと徐々に加速し始めた。さすがは運転手らしく、スムーズな運転でバスに迫ってくる者をかわしながら進んでいくと久信が再び窓を叩く。
「少しだけスピードを落として下さい。私達が降りたらそのままこの道を真っ直ぐ進み続けて、決して安全が確認出来るまで戻らないようにお願いします。」
そう言うと久信はバスの天井から飛び降り、勇司は掴まっていた鼻から手を離したがそこはまだバスの前であり、軽くバスに引っ掛けられ勇司は回転して倒れ込む。
「ふーっ、甲冑は着てて正解だったな。そして気が付くと特局前だ。」
勇司は何事もなかったかのように立ち上がると、走っていった象さんバスに手を振っているが、久信が首を強引に捻り来た道を見せる。
「ここも本格的に相当危なくなりますよ。中に戻ったほうがよさそうです。」
そこには何かを探して歩く普通じゃない者の姿しか見えなくなり、その足取りは軽快ではないものの案外素早く、順調に迫ってきていた。
勇司と久信は急いで特局に戻ると、元達が待ち構えており中に引き入れるとすぐに鍵を閉めた。
「あんまり無茶はするなよ。結果的には良かったから煩くは言わないがな。」
「ああ、悪かったよ親父。それにしてもこれ何か分かったのか?」
「まあそれなりってとこだ。とりあえずはここにいてもなんだから部屋で話すぞ。」
すでに特局の入り口に張り付く姿も気にせず26室に戻ると、すぐに対策会議に入るのであった。




