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第9話 ハズレスキルの値段

 ギルド1階のカフェスペースに、朝の光が差し込んでいる。


 あれから5日が経った。


 〈属性洗浄〉の感覚を身体に馴染ませるため、E級ダンジョンを毎日1か所ずつ回った。裁縫の★も少しでも上げたくて、ダンジョン内で大地の鎧の縫製を繰り返し修理した。指先の感覚は確かに少しずつ鋭くなっている。


 今日はギルドで装備の点検と、次のD級選びをする予定だった。


 ——のだが。


「あの、碇さんから聞いたんですけど」


 カフェスペースのテーブルに、見知らぬ3人組が座っていた。革鎧の男が2人と、杖持ちの女が1人。胸元のバッジはD級。


「バフ料理って、作ってもらえたりしますか?」


 背の高い方の男が頭を下げた。横の2人も期待の目でこっちを見ている。


 (碇さんって——大地か。あいつ、勝手に広めてんのか)


「すっげぇ美味くて効果抜群だって。しかも冒険者が作ってるから、戦闘中でも食いやすい形にしてくれるって聞いて」


 後者は本当だ。おにぎりにしたのは片手で食えるようにするためだった。ダンジョンの中で皿とフォークは使えない。


「……料理の素材は誰が出すんですか」


「もちろん自分たちで持ち込みます! 依頼料も払います!」


 断る理由がなかった。素材を持ち込んでくれるなら試作費だけでいい。新しい素材でバフの研究もできる。


「試作費だけで大丈夫です。ただ、効果は保証できないですよ。素材との相性とか個人差があるんで」


「全然オッケーっす!」


 カフェの一角を借りた。テーブルの上にまな板を置く。持ち込まれたダンジョン産の鶏肉と薬草を受け取り、ポーチから包丁を取り出した。


 朝のカフェスペースで包丁を振るう冒険者。シュールな絵面だった。周囲のテーブルにいた冒険者が何人か目を向けている。


 (まあ、もう慣れた。ダンジョンの中でやるよりマシだ)


 鶏肉の筋を丁寧に取る。薬草の茎は硬いから、繊維に沿って斜めに切る。細かく刻んで混ぜ合わせ、塩加減を指先で覚えた分量に整えた。


 STR+20%の剛力おにぎりを3個。素材が良かったので仕上がりも悪くない。握った瞬間、手のひらに淡い光が走った。〈錬金術〉のエフェクト。バフが付与された証だ。


 ついでに余った素材でINT+15%のおにぎりを1個追加した。魔法使い向け。杖持ちの彼女に合うだろう。


「——うっま!? なにこれ!?」


 背の高い男が目を見開いた。おにぎりを一口食って固まっている。大地と同じリアクションだ。


「これ、マジでステータス上がってる……! 身体が軽い!」


 杖持ちの女が自分の手を握ったり開いたりしている。INT+15%のおにぎりを食べた直後だ。


「集中力が全然違います。頭の奥がクリアになるっていうか——」


「それ、持続時間は15分くらいなんで、ダンジョン入る直前に食べてください」


「はい! ありがとうございます!」


「あの、もう1回お願いしてもいいっすか? 来週また——」


「水瀬です。まあ、素材持ってきてくれれば」


「ありがとうございます!」


 3人が頭を下げて去っていった。背中がまだ興奮で揺れている。


 ——2分後。


 別の2人組が近づいてきた。盾持ちの男と短剣使いの女。


「すいません、俺たちも頼めますか? さっき食ったやつ見てて——」


 (需要、あるのか。こんなに)


 2人組からの持ち込み素材は豚肉とダンジョン産の根菜。根菜の断面が紫がかっている。マナを含んだ土壌で育った野菜だ。


 包丁で豚肉を薄切りにする。根菜は皮を剥いて乱切り。出汁を取って——ギルドのカフェにはさすがに鍋がないから、備え付けの電気ポットを借りた。


 即席のATK+10%豚汁。水筒に移す。携帯できるように蓋付きにして渡す。


 盾持ちの男が一口飲んで動きを止めた。


「めっちゃうまい……なんで冒険者やってんですか」


 (いや、冒険者だから作ってるんだが)


 手を動かしながら、頭の隅で考えていた。バフ料理は珍しいんだ。通常版の〈錬金術〉でも理論上は作れるはずだが、わざわざ携帯食にして味まで整える人間はいないらしい。


 ——バフ料理って、売れるのか。


 考えたことがなかった。仲間のためにおにぎりを作っていただけだ。でも今日だけで5人が食べに来た。


 素材を持ち込んでくれるなら、試作費は実質ゼロ。俺の手間だけで人の役に立てる。


 (いや、商売にする気はないけど……でも、悪くない話だ)


◇◇◇


 カフェスペースの片付けを済ませて手を洗っていると、背後に気配がした。


「水瀬さん。少しよろしいですか」


 九条さんだ。いつもの紺のスーツ。タブレットを胸に抱えている。ボブカットの黒髪がきっちり揃っている。


「先週お預かりしたポーションの分析が完了しました」


「あ、はい」


 先週、九条さんに回復ポーションを3本渡していた。「データとして必要ですので」と言われて断れなかった。


「分析室をお借りしています。こちらへ」


 ギルドの奥に通された。


 小さな部屋だった。白い壁に蛍光灯。パイプ椅子と机が1つ。机の上にはガラスの小瓶が5本、ラベル付きで並んでいる。


 3本は俺の回復ポーション——淡い琥珀色の液体が、窓から差し込む午前の光を受けて鈍く光っている。残り2本は比較用だろう。濁った灰色。同じ回復ポーションのはずなのに、色からして別物だ。


「まず結論から申し上げます」


 九条さんがパイプ椅子に座り、タブレットを操作した。数値の表が表示される。


「あなたの回復ポーションは、A級市販品と同等の品質です」


「……は?」


「HP回復量、持続時間、副作用リスク。3項目すべてでA級市販品に匹敵しています」


 A級市販品。冒険者ギルドの正規ルートで流通する最高品質のポーションだ。1本5万円以上する。俺がスライムゼリーと水から30秒で作ったやつが、それと同じ。


「次に、通常版〈錬金術〉保有者3名のポーションと比較しました」


 九条さんの指がタブレットの上を滑る。グラフが切り替わった。


 3名分の棒グラフが並んでいる。青・緑・黄色。——その隣に赤い棒。俺のだ。赤い棒だけ、他の3本を大きく上回っている。


「3名のINTはそれぞれ31、34、29。あなたのINTは35。差は小さい」


 九条さんの指がグラフの注釈を示した。


「しかし——INT34の保有者の回復ポーションは、品質として平均的です。INTがほぼ同等であるにもかかわらず、あなたの製品だけが突出している」


「……INTのせいじゃない、ってことですか」


「変数はINTではありません」


 九条さんがタブレットを机に置いた。メガネを中指で押し上げる。


 ——この仕草。何かを分析しているとき、この人は必ずこうする。


「推測ですが」


 間を置いた。九条さんにしては珍しく、言葉を選んでいる。


「あなたの〈錬金術〉は〈家事全般〉から派生しているため、調理工程を経ることで素材の特性が最大限に引き出されているのではないかと。あくまで仮説ですが」


 小瓶が机の上で光を弾いている。琥珀色の液体の中に、小さな粒子が揺れていた。


 ——やっぱりそうか。


 スライムゼリーからポーションを作ったとき、俺は包丁で刻んで、鍋で煮た。普通の料理と同じ手順を踏んだ。通常版の〈錬金術〉はスキルで直接生成する。素材を入力して、ポーションが出てくる。自販機みたいなものだ。


 でも俺は料理をしている。素材を切って、火を通して、味を見て、配合を調整して。


 大地が言っていた。「市販のポーションは苦くて不味い」。俺のは出汁の味がした。


 なぜ美味いのか、ずっと引っかかっていた。答えが、今——


「……なるほど。俺のポーションが美味かった理由、それか」


「美味いかどうかは管轄外ですが。品質データとしては有意です」


 九条さんの口角が、ほんのわずかに上がった。


 一瞬だった。すぐに元の無表情に戻る。でも確かに見た。


 (この人——楽しんでないか?)


「水瀬さん。これは登録しておく価値があります」


「登録?」


「ギルドのスキルデータベースに、あなたの〈錬金術〉の特性を記録します。〈家事全般〉由来の派生スキルが通常版と品質差を生じるという事例は——」


「前例がない?」


「……ええ。ありません」


 メガネの奥の目がタブレットに向いている。でも視線は数字を追っていない。何か別のことを考えているようだった。


 俺のスキル——〈家事全般〉が、こんなところで意味を持つとは。


 ハズレスキルランキング3位。47人全員が諦めて引退した。でも俺の手で作ったポーションは、A級の市販品に並んでいる。


 胸の奥がじんわり温かくなった。ずっと傷ついていた何かが、少しだけ修復された気がした。


 (……役に立つんだ。俺のスキルは)


「以上です。何かご質問は」


「……いえ。ありがとうございます、九条さん」


「はい。それでは——ひとつだけ」


「はい?」


「今後もポーションのサンプルをお願いできますか。継続的なデータがあると、より正確な分析ができますので」


「どうぞ。余った分で良ければ」


「助かります」


 分析室を出た。蛍光灯の白い光から、ロビーの自然光に戻る。目が少し眩んだ。


 廊下を歩きながら、さっきの琥珀色の小瓶を思い出す。俺のポーションは色が違った。灰色じゃなくて、琥珀色。


 料理をしているから——色が変わる。味が変わる。品質が上がる。


 〈家事全般〉を引いた日、あんなに落ち込んだのに。今日この部屋で、初めてそれが誇らしかった。


◇◇◇


 ロビーに出ると、大地と白鳥さんがソファに座っていた。


 大地がスマホに目を落としている。白鳥さんはその隣に、1人ぶんの隙間を空けて座っている。まだ近すぎると落ち着かないらしい。


「悠斗! 見ろこれ!」


 大地がスマホを差し出した。


 SNSの投稿画面だ。写真——見覚えがある。俺が作ったバフ料理。盛り付けが綺麗な剛力おにぎりと集中スープが、ギルドのカフェテーブルの上に並んでいる。光の加減がいい。大地の撮影、意外とセンスあるな。


 キャプション: 『同パーティーの料理担当が作ったバフ料理。マジで美味い。効果もある。ぜひ食ってみてほしい』


 コメント欄が荒れていた。


 ——「見た目良すぎ。プロだろこれ」


 ——「本当にバフ料理? 証拠は?」


 ——「冒険者ギルドのメシとは思えない」


 ——「どこで食えるの?」


 ——「嘘松乙」


 ——「写真は上手いけど、バフ効果ある根拠が何もないんだが」


 賛否半々。バフ料理というワードの珍しさと、写真の見た目のインパクトで注目を集めているらしい。リポスト数が地味に伸びていた。


「反応よかったぞ? バフ料理珍しいのと、見た目のインパクトで。冒険者ギルドのメシとは思えないって声もあった」


「——お前、なんで勝手に投稿してんだ」


「いいだろ! 事実だし!」


「バフ料理って書くな。証拠ないだろ、写真だけじゃ。信じてもらえなかったら俺のせいになるんだぞ」


「いや、オレが体感してるから」


「お前の体感は証拠にならないんだよ!」


 大地が不服そうに頬を膨らませた。


 白鳥さんがスマホを静かに操作していた。


「わたしも見ました」


 声が小さい。画面にはやはり大地の投稿が表示されている。


「写真、綺麗ですね。水瀬さんの料理の色合いがよく出ています」


「ありがとうございます——いや、褒めてる場合じゃなくて。大地、消せ」


「えーーー」


 白鳥さんが少し間を置いた。


 俯いたまま、指先が膝の上で小さく動いている。緊張しているときの癖だ。


「……わたしも」


「ん?」


「作ってみたいです。料理」


 小声だった。


 手が止まった。


 白鳥さんが料理をしたいと言うのは——初めてだ。


 卵焼きを一瞬で炭にした。洗い物で泡まみれになった。そのたびに耳を赤くして俯いていた人が。


 「わたしにもできるはずです」とは何度か言っていた。でも今日は違う。「できるはず」じゃなくて——「作ってみたい」だった。


「……材料費は俺が出すよ」


「え。でも——」


「試作費みたいなもんだから」


 白鳥さんがちらりとこっちを見た。すぐに目を逸らす。髪の毛先を指で弄っている。


「……ありがとうございます」


 (何を作りたいんだろう。聞きたいけど、今は聞かないでおこう。白鳥さんのペースで)


 大地がニヤニヤしている。


「いいじゃん。白鳥も料理覚えれば——」


「猪狩さん」


「はい」


 白鳥さんが真顔で名前を呼んだだけで大地が背筋を伸ばした。C級冒険者のプレッシャーは伊達じゃない。


 (白鳥さん、本人に自覚ないだろうけど……怖いんだよ、その視線)


 カフェスペースからカウンターに移動した。


 九条さんが受付窓口に立っている。先ほどの分析室とは違う、いつもの仕事モードだ。タブレットを操作する指が速い。


「水瀬さん。ちょうどよかった。お渡しするものがあります」


 九条さんが封筒を差し出した。ギルドの紋章が押された公式書類。


「昇級試験の案内です」


「昇級——」


「E→D昇級試験。あなたの活動実績が受験資格を満たしましたので」


 封筒を開いた。試験概要が書かれた用紙。2つのルートが並記されていた。


 ——標準ルート。ソロで、E級ダンジョン3か所を1週間以内に攻略する。プラス安全管理の筆記テスト。


 ——サポートルート。パーティーでの受験が可能。ダンジョン1か所+筆記試験。


 昇級試験——冒険者がランクを上げるためのギルド公認試験だ。E級からD級。今の俺に必要な次の一歩。


「現在のパーティー実績からすると、サポートルートで十分な評価が得られます」


 大地が横から覗き込んだ。


「サポートでいいんじゃないか? 3人で行ったほうが楽だし確実だろ」


「わたしも——水瀬さんの実力なら、どちらでも問題ないと思います」


 白鳥さんがそっと言った。


 用紙を見つめた。2つのルート。


 サポートルートなら3人でD級をクリアした実績がそのまま活きる。合理的だ。大地と白鳥さんがいれば、E級ダンジョン1か所なんて半日で終わる。


 でも。


 冒険者登録をしたとき、〈家事全般〉を引いた。周囲に同情された。ハズレスキルランキング3位。あの日の視線が、まだ胸の奥に残っている。


 さっき九条さんの分析を聞いた。俺のポーションはA級市販品と同等。〈家事全般〉の派生だから品質が高い。


 ——俺のスキルには意味がある。


 わかった。頭では、もうわかっている。


 なら、それを自分の力で証明したい。他の誰でもない、俺の足で。


「……ソロにします」


 大地が目を丸くした。白鳥さんも顔を上げる。


「自分の力がどこまで通用するか、ちゃんと確かめたいんです」


 九条さんが少し間を置いた。


 タブレットに視線を落とす。受験票の発行手続きを始めた。指の動きはいつも通り正確で速い。


「わかりました。受験票を発行します」


 処理が終わった。受験票を差し出しながら——


「……自信を持って受けてください」


 一瞬、九条さんの声のトーンが変わった。


 いつもの事務的な声じゃない。もっと柔らかくて、静かで、どこか励ますような。


 九条さんはそれ以上何も言わず、次の来客に対応し始めた。メガネの奥の表情は読めない。


 受験票を受け取った。紙の端に日付と試験会場が印字されている。


 大地が肩を叩いた。重い。


「ソロか。お前らしいな」


「……ありがとう」


「オレは見てるしかねえけどさ。帰ってきたら飯奢れよ」


「逆だろ」


 白鳥さんが小さく口を開いた。


「水瀬さんなら——大丈夫です」


 短い言葉だった。でも白鳥さんが「大丈夫」と断言するのは珍しい。戦闘中の判断以外で、はっきり何かを言い切るのを聞いた記憶がない。


 (ありがたいな。本当に)


 大地と白鳥さんと別れた。


 ギルドの出口に向かう。受験票をポケットにしまった。


 出口のドアに手をかけたとき——


「おい」


 後ろから声がした。


 振り返った。


 C級バッジ。茶色い革鎧。短髪で、顎が角張っている。目つきが鋭い。知らない男だ。腕組みをしてこちらを見下ろしている。身長は俺より10センチ近く高い。


「お前、最近噂のバフ料理使いだろ?」


 周囲のざわめきが一瞬止まった。ロビーにいた冒険者の何人かがこちらに目を向けた。


「……まあ、そうですね」


「ふん」


 鼻で笑われた。腕組みをしたまま、一歩近づいてくる。


「バフ料理でD級昇格とか、ハズレスキルのくせに調子乗んなよ」


 (——昇級試験の話、もう広まってるのか。さっき受験票もらったばかりなのに)


 ギルドの噂は速い。カウンターでの会話は筒抜けだ。


「どうせ仲間に運んでもらってるだけだろ。C級のタンクとA級冒険者の娘に背負われて、自分は後ろで飯作ってるだけじゃねえか」


 言い返す言葉を探した。


 喉の奥で言葉が固まる。舌が動かない。


 ——だって。半分は事実だ。


 大地がいなかったら前衛を張れない。白鳥さんがいなかったら火力が足りない。俺はバフ料理を作って、モップで浄化して、〈属性洗浄〉で泥を洗い落として。後方から仲間を支える。


 それが俺の戦い方だ。間違ってるとは思わない。


 でもこの人が言ってることは——全部が嘘じゃない。


「……そうっすね」


 口からぽろっと出た。


 冒険者が一瞬面食らった顔をして——鼻を鳴らして去っていった。背中が遠ざかる。革鎧の金具がかちゃかちゃと鳴っている。


 C級。俺がいま目指しているD級の、さらに上。その人に「ハズレスキルのくせに」と言われて——言い返せなかった。


 (なんだよ、その返しは。もっとマシなこと言えよ、俺)


 ロビーの視線がゆっくり散っていく。何事もなかったように喧騒が戻った。


 ポケットの中の受験票を握った。


 紙が少しくしゃっとなる。


 ——仲間に運んでもらってる。


 事実だ。大地がいて、白鳥さんがいて、九条さんがデータを見てくれて。周りの人間のおかげで、ここまで来た。


 でも。


 だからこそ——自分の力を知りたい。


 5日前、ステータスウィンドウの隅に灰色の文字が見えた。「属性吸収:未解放」。あと2つ、派生スキルが眠っている。裁縫と整理整頓。


 全部覚醒させたいとか、最強になりたいとか、そんな大きな話じゃない。


 ただ——ハズレスキルで冒険者をやっている。それが間違いじゃないと、自分で確かめたい。


 (自分の力で。証明する)


 受験票を握りしめたまま、ギルドを出た。


 午後の日差しが白い。受験票の端が、指の間で皺になっていた。


 E級ダンジョン3か所。ソロで1週間。


 ——やってやる。

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