第86話 フレイム暴走再び
レッドヴィーセルはあの大量の斬撃から回復するほどの体をしていることから、この水蒸気爆発でもやられていないだろうと推測し、怯んでいるであろうレッドヴィーセルに追撃を仕掛けに行った。しかし、視界不良であまり姿が見えない。自分の方向感覚を頼りに僕は距離を縮めた。すると突然目の前に大きな爪と赤い体毛が現れた。
「うおっ!?」
僕は咄嗟にク守の側面受けを使いダメージを抑えた。それでもあの花の効力あってか10m近く飛ばされた。そしてこの霧を晴らすかのように薄いオレンジに光った光線が僕の後ろから放たれた。その光線はレッドヴィーセルの姿を鮮明に映し出した。光線はヴィーセルの右半身に当たって穴が開いたものの、すでに再生が始まっている。
「リオ~!なんでこいつこんなに攻撃が聞かないのだ!?」
「あの花によって作られた再生の核を破壊してないからだと思う~!」
「それってどこにあるのだ~?」
「さっき探してみたけど見つかんなかった~!」
「じゃあどうやって倒すのだ!?」
「何か手立てはないかもう少し観察してみるから時間稼ぎを一緒にしてくれる~?」
「了解なのだ!」
そういうとヴァルキーはあたりを飛び回り、注目を彼女に集めていた。その隙に僕はレッドヴィーセルを観察することにした。すると、一つさっきとは異なる点に気が付いた。
「ん?…あ、口がなんか焼け焦げて回復してない…そしてさっきよりも移動スピードがない気がする…」
今レッドヴィーセルはヴァルキーを追いかけて4足歩行で移動している。その際ジャンプしてヴァルキーに爪を振りかざす様子が見られるが先ほどより振りかざす速度が落ちている。
「もしかしてヴァルキーの時と違って再生に限界があってさらにあのブレスも回数制限がありそう。じゃあこれは連撃か?」
そう仮定した僕は早速ヴァルキーに指示することにした。
「ヴァルキー!空中から空気の斬撃とか連発できる攻撃できる~?」
「あっちの姿なら出来るのだ~!」
「オッケ~じゃあそっちの姿に変身してひたすら空気の斬撃放ち続けてほしい!」
「それが作戦なのだな?分かったのだ~!」
そういうとヴァルキーは光に包まれ、レッドドラゴンの姿に変化した。そして某火のトカゲの最終進化系のようにエアスラッシュを放ち始めた。そのエアスラッシュを避けるように僕は引き続き上級の回転突進切りを続けた。その際、反撃でブレスを放とうとしたときは数秒間だけ技を発動させた後に攻撃を中級の高速突きに切り替え、ヴァルキーにブレスが向かわないようにした。そうこうして居ているとだんだんと再生の速度が落ち、さらに口の周りは熱で黒く焦げたところから崩壊が始まっていた。やはり元はヴィーセルの体である。ドラゴンほど熱の耐性が無かったのだろう。こうしてダメージを与え続けること5分ほどで再生が止まりかけていた。
「ヴァルキー!多分あと一回でこの体が崩壊すると思う!」
「了解なのだ!」
そうしてこちらでもとどめを刺そうとしたその時である。レッドヴィーセルは最後の力を振り絞り、どんどん熱エネルギーを高めていた。その際、頭頂部にかすかに赤色に光る部分が見えた。そこがこの再生の核だったようだ。しかし、ヴィーセルの熱エネルギーは体の中で抱えきれないほどにまで達し、僕でも近寄れないような温度に達していた。そうして口を大きく開け、青色の球体が現れたと思ったら勢いよく巨大化していった。
「あっつ!あの炎の球体は全身全霊っていう感じだな…」
「リオ!我こいつの全力ブレスに対抗してみたいのだ!」
そう感想をつぶやいているとこのブレスに反応したヴァルキーが再び水龍の姿に戻り、最大火力のブレスを溜めていた。意外と負けず嫌いなところがあるようだ。
そうしてほぼ同時にそのブレスと光線を放った。その衝突で大量の光が発せされ、ヴァルキーの方は見えなくなっていたが、微かに見えるヴィーセルの方を見るとどんどんと口周りの崩壊が進行していた。正直このままでも討伐は出来そうが、万が一ブレスで負けたら困るのでしっかり弱点らしき場所を狙うことにした。僕は思いっきり地面をけって上空に上がった後、その光る頭のてっぺんめがけて思いっきり初級の重力切りを使い振り下ろした。
「うおおおおお!」
黒剣は光る場所にしっかり命中し、その際何か固いものに当たりそして割れる感覚がした。核が破壊できたのだろう。その直後肥大化したレッドヴィーセルの崩壊は始まり、そのまま目と心臓を残して灰になってしまった。そして周りにいた数匹のノーマルヴィーセルは恐れをなしてどこかへ逃げてしまった。
「終わったぁ…あ…手火傷しちゃった」
そうして赤く染まった手を眺めていると上空から人の姿になったヴァルキーがこちらに駆け寄ってきた。
「リオどうしたのだ~?って、その手はどうしたのだ!?」
「最後の攻撃仕掛けるときに熱くて火傷しちゃった」
「何やってるのだ!早く手を出すのだ!」
「ん?」
そういうとヴァルキーは僕の手を掴み、薄い水の膜で覆って冷やしてくれた。結構ひんやりしていて気持ちい。
「我は水龍だからこういう火傷を治すのは得意なのだ!そういうことだから今度火傷した時はすぐに我言いうのだ!」
「了解、ありがとうねヴァルキー。そういえばこの魔法こういう風にも使えたんだ~」
「当然なのだ!ちなみに我の一族はやけどすることはなかったのだ!」
「だから炎の耐性も高かったのか」
今回のヴィーセル暴走で分かったのはあの魔法によって使うことのできる炎の魔法は火力が高くて身をも焦がすほどだ。ヴァルキーの水龍の体はそういった意味でも適性が高かったのかもしれない。こうして少し休んでいると崩壊したヴィーセルの体の灰から再びオレンジ色の物が見えた。
「リオ…あれって!」
「分離されてまた花が現れたみたいだね、危ないからこちらで回収しとこう。今度はしっかりとられないようにしようか…」
「もうあんな奴と戦うのはごめんなのだ…」
弱点がない相手だったのだ、今回はたまたま体が耐えきれなくなって弱点が出現したから良かったものの、そうでないと…想像するだけでもゾっとする。僕は片手がやけどで使えない状態だったのでヴァルキーに僕のバッグの中へ心臓、目、花を入れてもらい、そのまま来た道を戻ることにした。その時周りにたくさんいたヴィーセルはどこかへ消えており、散り散りになったのかはたまたどこかへ移動して統制と取っているのか分からない状態になってしまった。とにかく農家にはしばらくの期間注意してもらうことにしよう。そうして、僕たちはまず農家の方へ戻ると僕たちの様子を見るなり素早く駆け寄ってきた。
「そのけがはどうしたのですか!?ボロボロで特に右手なんて真っ赤に変色してるじゃないですか!」
「あ~このヴィーセルの群れのボスに遭遇しまして、その時の攻撃でこのように」
「もしかして今回のヴィーセルの件解決したのでしょうか?」
「申し訳ないです、そのボス自体は討伐したのですが、その配下たちはボス討伐後にどこかへ消えてしまいました。数匹程度でしたが…あと数週間は様子を見てください…お役に立てず申し訳ございません。」
「いえいえ、これまでは帰ってこなかったことも多かったので…今回は、その諸悪の根源を断ち切れただけで随分と進歩しました。この度はこのような難しいクエストを引き受け、そして状況の改善に尽力いただきありがとうございました。報酬はしっかり支払わせていただきます。後日ナビのギルドを訪れてください。」
「いいんですか?今回の依頼内容は駆除じゃ…」
「ボスの方はしっかり駆除されたんですよね?ならそれだけでも十分です。あとはこちらで対策します、なので冒険者さんはお気になさらず」
「そういうことならお言葉に甘えて…受け取ります」
そういうと農家の方は笑顔になり、満足げな表情をしていた。そして僕たちは農家さんに別れを告げ、ナビのギルドの方へ向かうことにしたのだった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はついに紫色巨大ヴィーセルの討伐が完了するお話でしたがいかがだったでしょうか?あの花は前にヴァルキーが暴走した時と同じような効果があるみたいですが、その力にも適性はあるようです。皆さんは何かこういう不思議な力を手にしてみたいと思いますか?私は意外と思い付きませんでした…ということで、次回はついにナビに別れを告げ、そして長かったプレール地方編が終わります!まさかここまで伸びるとは…ここまでお付き合頂いた読者の皆様には感謝申し上げます。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




