第87話 想定外の足止め
僕たちは農家の方の所を離れてナビのギルドに到着した。やけどを負った右手の方は痛みは引いているものの、その様子はまだ完治している様子ではない。中に入ると先ほど受付をした人が再び対応してくれた。
「あ、先ほど怪獣駆除のクエストを受注されたリオさんですね?報告書をお預かりします」
「これです」
そうして道中ヴァルキーに書いてもらった報告書を提出した。てっきり龍人は字が書けないものだと考えていたが、彼女はむしろ僕よりきれいに字を書いていた。その報告書は受付の人がしっかり目を通した後――
「確認しました。まさかこのようなモンスターが森の奥にいるとは私たちも確認不足でした。それで…報告書に記載があったその部位を提出をお願いいたします。」
そうして僕はヴァルキーに頼みバッグの中に入っていたレッドヴィーセルの目、心臓、そして食したオレンジの発光する花を提出した。少し引かれると思ったがやはり受付の人はこういうのを別のクエストでも見慣れているのか動じることなく対応していた。しかし――
「あれ…?この花は…マリースの花に似ていますが発光していますね。このギルドに来てから初めて見ました。こちらの方はボスティール研究所の方へ送らせていただきますのでお預かりいたします。」
「よろしくお願いします。」
「今回はレッドヴィーセルという変異個体の討伐、この発光する花の分で追加報酬を支払われせて頂きます。今平然を装っていますが、これは歴史的発見だと思われますので興奮しています。恐らくそれ相応の報酬が支払われると思います」
再び高額報酬を受け取ることになりそうだ。これまでにデーガ遺跡探索、オートマ―遺跡の新しい入り口の探索、リカーゴ郊外のイエローサラマー討伐など…大量報酬が何度も支払われてきた影響でだんだんと感覚がマヒし始めてきている気がする。その後僕の右手を見た受付の人が救護室の方へ案内してくれた。そこで火傷の治療を行った。先生曰く、手を冷やし続けていたのが功を奏し、完治出来るらしい。右手には大量の薬が塗られ、包帯もぐるぐる巻きにされた。その後救護室を後にした僕たちは宿に向かった。すでに日が落ちていたので前に楽しんだストリートミュージシャンたちが各々の楽曲を奏でていた。演奏を横目に僕たちは部屋へと滑り込み、そのまま火傷していないほうの手でヴァルキーを撫でた。
「なんなのだ~?うれしいが~」
「ヴァルキーのあの処置のおかげで完治して元の見た目に戻るってさ、本当にありがとう」
「これくらいお安い御用なのだ!でも…今度手が治ったら…我と…ね?」
「それくらいなら全然かまわないよ」
彼女は潤んだ目でこちらに訴えてきた。こういうお願いも段々と上手になってきている気がする…いや僕がチョロくなったか?その日は右手に刺激を与えないようにしながら入浴しそのまま就寝した。
その後1週間ほど経過観察として毎日救護室に通った。そしてついに包帯が取れるようになり、その後も完治まで数日程ナビで待機した。結果右手は宣告通り完治し僕はリハビリも兼ねて薬草採取クエストをすることにした。この間利き手でない左手をずっと使っていたため、左利きになりつつあったが、久々に右手を使うとその実家のような安心感に感動していた。
「僕って右利きだったんだな…」
「何言ってるのだ?当たり前なのだ」
そのままスムーズにクエストを終わらせ宿に戻り翌日に僕たちはナビを出発した。
「まさかここでこんなに足止めを食らうことになるとは…」
「そもそもリオがあそこで無理しなければこうはならなかったのだ!あのまま我がブレスを打ち続ければ勝てたのに…」
「その節はご迷惑をおかけしました…」
「本当なのだ!我心配だったんだぞ!」
何回も無理をしていても僕に付いてきてくれるヴァルキーは天使だなと思った僕である。
「そういえば前に言ってた報酬はどうなったのだ?」
「今回はボスティールからかなり離れてるから報酬を支払うのはだいぶ先になるって」
「それだけもう我の元の家から離れているのだな…」
ヴァルキーは感慨深い表情をしていた。思えばヴァルキーと出会って冒険を始めたのはそのタイミングからである。さらに言えば付き合い始めてからももう少しで1か月ほどになる。時の流れは速いな…
「そういえば次はどこに行くのだ?」
「次はアドリーに向かうよ」
「アドリー?それはどんな街なのだ?」
「最近発展してきている町でその規模間で言ったらこの間のトゥーロンと同じくらいになるらしい」
「それって相当大きい町なのでは?」
「そう、めっちゃ規模の大きい町らしい」
「何があるのだ?」
「なんか飲み物が有名らしい。頭痛に効く薬から作られた飲み物らしいけど」
「薬が名産ってなんか嫌なのだ」
自分の口から行ってみてわかったことがある…コーラである。作られた経緯からしてもほぼ確実だろう。
「なんか似たような飲み物をあっちの世界でも飲んだことがあるから言うけどおいしいよ多分」
「ええ…リオのいた世界は変な味が好きな人が多いのだな…リオはそういう風にならないで欲しいのだ!」
「まあそう言わず…飲んでみれば分かるよ」
ヴァルキーに名前は伏せているがこのコーラはとっても美味しい飲み物なので是非とも堪能してもらいたい。そうしていつもの会話を続けること数時間して周りの風景が変化しつつあることに気が付いた。
「ねえ、ヴァルキー…周りの木変わってきてない?」
「言われてみれば変わってるのだ、あと虫も増えてきている気がするのだ…」
「さっきまでは真っ直ぐな木と蛇行した木があったのに今は蛇行したのばっかりだな…ジャングルみたい」
「我あの木初めて見たのだ!」
「あの木は…ちょっと待って、調べる」
そういって僕は久々にチャコルド夫妻から頂いた図鑑を手に取り、植物を調べた。これを取り出したのはボスティールの時以来である。そうしてページをめくっていくと一致するのがあった…オーク…まんまじゃねえか!確かにあのブロックのゲームの木に似ているとは思ったけど!まさか名前まで同じだとは!そうして驚いてるとヴァルキーが不思議そうにこちらを除いてきた。かわいい。
「リオ?結局何だったのだ?何か驚いた表情をしてたから珍しいものだったのか?」
「珍しくはないんだけどまさか植物の名前が僕のいた世界と同じだとは思わず…」
「え!?リオの世界にあった植物と同じ名前なのか!?何て名前なのだ?」
「オークって言うんだけど、まあこちらの世界も元の世界でもありふれた木だね」
「ということはこれを見ればリオの世界の風景が見れるということなのだな?嬉しいのだ!」
喜んでいるところ申し訳ないのだが僕はオークの木を生で見たことがない。ゲームでしか見てない。そしてこちらの世界でのそういう木は楓とか楢の木…まあそこは黙っておこう。ヴァルキーは僕が見てきた風景を見れたことでしばらくの間感動して目をキラキラさせていた。しばらくしてヴァルキーはこんなことを言ってきた。
「いつかリオが元の世界に変えることが出来るようになったら我もそっちに行ってリオが見てきた風景を全部見てリオのことをもっと知りたいのだ…いいでしょ?リオ?」
「もちろん、そのためにもまずは手掛かりを探さないとだね」
「そういえばこの間の花も不思議な力を持っていたのだ。あれも手掛かりだったり?」
「その可能性は高いと思うけどまあ今は分からないからもっと直接的な物から探していきたいね」
「それもそうなのだ…リオ!これからも我はリオについて行ってもっともっと!役に立てるように頑張るのだ!」
ヴァルキーは満面の笑みで僕に宣言してきた。頼もしい限りである。そうして僕たちは変化する風景に心躍らせながら道を進んでいくのだった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はナビでやけどの治療を受け、そして次の目的地アドリーに向かうお話でしたがいかがだったでしょうか?リオは火傷によって2週間ほど遅れてナビを出発することになってしまいました。火傷は怖いですね。私は幼少期に炊飯ジャーのスチームに手を突っ込んで火傷したことがあります…読者の皆さんも火傷には気を付けてください。ということで、今回で22話から続いたプレール地方編が完結します。まさか3つに分裂するとは思いもよりませんでした。でも楽しいのでヨシ!次回はついに別の地方での冒険が始まります。お楽しみに。それではまた次回のエピソードでお会いしましょう。




