第85話 オレンジの花
僕たちは紫の巨大ヴィーセルについていった。向かった先はヴィーセルが現れた穴であった。木の中はまるで住居のように整ってくりぬかれており、このヴィーセルコミュニティーの知性の高さすら感じる。そうして木をさらに進み、いくつもの分かれて道が見え始めたところでヴィーセルは動きを止めた。そこはやや広い空間で中央にはオレンジに光一輪の花が生えていた。まるでマリースの花に似ている。ヴィーセルはこれとどうにかしろと言わんばかりにこちらを見つめている。ちょうどその時、光るマリースの花?の光でやっとヴァルキーが目を覚ました。
「ん?ここどこなのだ…ってなんだこのでっかい動物は!」
「やっと目覚ました?」
「うん…なんかさっきまで夢を見てた気がするのだリオと冒険に行く夢~」
「本当に行ってるから寝ぼけてるだけだな」
「いや~なんかスッキリしたのだ~それで、このでっかいのはどうするのだ?倒すのか?」
「戦闘なら今頃戦ってると思うよ」
「それもそうなのだ…ってあの花何なのだ?なんか光ってるのだが…」
「このモンスター、ヴィーセルはあの花をどうにかしろとのご所望ですって」
「普通に引っこ抜くのだとダメなのか?」
「それならすでに引っこ抜いてるんじゃない?」
「とりあえず我も試してみたいのだ!」
「了解、ちょっとやってみて、僕も近くに行ったほうが良い?」
「爆発とかで2人やられるといけないからリオはそこで待ってていいのだ~」
そういってヴァルキーは一人で花の所に向かい、茎を両手でつかんで引っこ抜く動作を始めた。すると――
すぽんっ!という擬音が聞こえるように勢いよく抜け、その勢いでヴァルキーはレスリングのスープレックスのように花ごと後ろに倒れてしまった。
「うっ~痛いのだリオ~!頭ぶつけたのだ!」
「そんなに簡単に抜けたんだ、じゃあなんで――」
疑問をヴァルキーに投げかけようとしたその時である。少し離れたところで見守っていたヴィーセルはそのオレンジの花目掛けて突進してきたのである。しかし、ヴァルキーの反応速度には勝てず、余裕でヴァルキーは避けきった。
ジーーーーーーーー…!!!
ヴィーセルは話が違うというような表情をしていた。それはこっちのセリフである。僕たちをここへ連れてきたのはこの花のためということらしい。見るからにエネルギーがこもった花である。あっちに手渡したらどうなることやら…
「ヴァルキー!逃げよう!」
「了解なのだ!って外は大量のヴィーセルがいるからそれを町の方まで連れてきたら…?」
「あ…仕方ないな、ここで片づけるか…」
僕は黒剣を取り出し、こちらに四足歩行で走ってくる紫ヴィーセルと対峙した。僕は真っ先にク守のリ下ろしを使い、ヴィーセルの脳天めがけて黒剣を振り下ろした。剣は見事に命中し、ヴィーセルの重たい体はその場にドシンと音を立てて動きを止めた。
「なんか呆気なかったのだ」
「そういうこと言わないの、今回は直線的な攻撃だったからまだよかったものの、これが色んな種類の攻撃使うとか、遠距離とか刃が通らないとかってなるともう手が付けられないかもしれないから」
「そんなやつ誰も倒せないのだ」
「どうだろ、僕より強い人はいると思うけど」
「どうしてそこで自己肯定感低いのか分からないのだ…」
ヴァルキーにはジト目をされてしまった。謙遜のつもりだったのだけれど…それはさておき、僕たちはあの広場で回収した子の光る花を持ち帰り、そのついでにこの集団のヴィーセルを倒すことにした。しかし、このボスの虫の知らせを聞いた子分の小さいヴィーセルが大量にこちらにやってきた。
「え!?どうやって気が付いたのだ!?」
「動物の勘ってやつじゃない?とにかくここから出るためには倒し切らなきゃね」
「もちろんなのだ!」
僕はヴァルキーに腕の武具を渡し、戦闘態勢に入った。ヴィーセルたちはボスがやられたのを目視すると敵討ちのために先ほどとは全く異なる力でこちらに攻撃を仕掛けてきた。ここでドラゴンのブレスを使えば一網打尽だが、その姿になるのにやや大きさが足りない。まるで計算されていたかのようにも思えてしまう。僕たちはその数の多さに何とかして対応していたが、後ろに回られた時にバックの中身を漁られてしまい、光る花を持ち出されてしまった。それに気が付きその花を取り返そうとしてその個体を倒したが、やられる直前に上へぶん投げてしまい、そのまま花は宙を舞って紫ヴィーセルの元へと向かってしまった。それに気が付いた紫ヴィーセルは残りの力を振り絞り、その花を加えて飲み込んでしまった。恐らくこの花を摂取して自身の体を強化なり何かをしようとしたのだろう。そうすると尚僕たちにこの花を抜かせた理由が分からない。僕はそこで考えるのをやめ、花が消化される前に体を切断することにした。フ流の回転切りで周りのヴィーセルを片付けた隙に一気に紫ヴィーセルとの距離を縮め、首のところ目掛け上級の渾身の縦切りを使った。すると見事に首は切れたが、一足遅かったのか切れた断面から暴走ヴァルキーが出したようなオレンジ色の液体が染み出し、切れた胴体と頭を繋いでしまった。顔の部分を見るとその花が噛まれており、その成分を吸収した影響と思われる。そうしてこれまでも大きかった体がさらに大きくなり、色も紫から赤に近いオレンジ色へと変化していった。この間のレッドドラゴンへの変化とそっくりである。
「これまずいかも、炎系の攻撃仕掛けてくるようになるよ!」
「なら我が水の攻撃でどうにかするのだ!」
「でもここ小さいでしょ?仕方ない、この木を切っていったん外に出よう!」
そういって僕は上級技の斬撃飛ばしを最大火力で飛ばし、あっという間に木の幹に穴を開け、そこから外に避難した。そうしているとそのヴィーセルはどんどんと巨大化し、少し木を突き破るほどにまで成長した。半径20mほどの木だ、その大きさは計り知れない。そうして変身を終えると当然のことながら目が真っ赤に染まっており…って最近こういう敵多すぎじゃない?まあ一旦置いといて、僕はヴァルキーに水龍になるよう指示し、久々のレイドバトルを開始した。
「おそらくこの間のレッドドラゴンと同じで中にいる個体とこのパワーを繋いでる核があるはず…それを探さないと」
僕は最初に上級の回転突進切りを使った。弱点の場所とこの後の技の威力を上げる作戦である。すぐに見つかると思っていた予想とは裏腹にこの間のように核が見当たらない。僕はそこであること気にが付いた。そう、ブリデール草の存在である。今日はブリデール草を持ってきていないのでこの間のように直接ダメージを与える方法が無い。これ割と絶体絶命じゃね?結局弱点となる場所は見つからず、立て直しと作戦の練り直しのために引くことにした。この間に幾度となく斬撃を食わることができたが、もちろん回復されてしまった。そうして、しっかりレッドヴィーセルはブレスの準備を始めるような動作を始めた。ちなみに、他のヴィーセルは上級技発動中にほとんど倒し切っている。
「さあ、今日は受けられるか試してみよう!」
そうして黒盾を取り出し、こちらも受ける準備をした。そうして発射準備が整いこちらに向かって放つまで3秒、僕めがけてオレンジ色に光ったブレスが飛んできた。と同時に僕の斜め後ろの方角から水色に光る太い光線が放たれ、そのブレスと衝突した。ヴァルキーである。
「ヴァルキーありがとう!」
そう声をかけるとこちらを見てニコッとした。そして再びきりっとした表情に変わり、相手のブレスに合わせて彼女もブレスを吐き続けていた。しかし、水と炎が衝突しているというのもあり、ある程度すると両者を巻き込む水蒸気爆発が起き互いに水蒸気で視界不良になってしまった。それでも僕たちはキリの中のレッドヴィーセルに対して攻撃の手を緩めなかったのだった。
どうも、winger86です。今回も本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、このエピソードでは森の奥にいた巨大なヴィーセルに連れられ、そしてヴィーセルと対決するお話でしたが、いかがだったでしょうか?この間のヴァルキーと同じような形態に進化したヴィーセルそもそもなぜ理鳳達に花を抜かせたのでしょうか?少し疑問が残りますね。ということで、次回はヴィーセルとの決着が付き、ナビでの冒険がひと段落します。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




