第84話 不調なパートナーと農家の厄介者
その2人の男性の噴火に関する会話はそこで終わってしまい、僕の中には疑問だけが残った。個人的には再びインディンに戻って色々調べたいくらいだが、ここはそこから2週間ほどかかるナビである。ヴァルキーに負担をかけるわけにいかなかったので諦めることにした。
僕は、そのまま朝食をのんびり平らげ、追加でコーヒーのような飲み物を頼み、充実した朝を過ごしていた。ちなみに、この世界のお店のメニューは大半が絵で描かれており、どんなものなのかが一目でわかりやすい。なぜなのだろう?色々推測して地方ごとの文化の違いを考慮したもので落ち着いた。そうして、コーヒーを飲み終えた僕は道中でヴァルキーの朝食も購入して宿に戻った。すると、未だにヴァルキーはぐっすり寝ており、体勢もだいぶ変わっていた。僕が出かけてる間にも寝返りを打ったのだろう。にしてはベッドの反対まで動くのは動きすぎだと思う。この世界に時計はないが、自分たちが宿泊している部屋にも朝日が差し込んできたので僕は彼女を起こすことにした。
「ヴァルキー起きて~朝だよ~」
声をかけるが反応はなく、ぐっすり寝ている。ちょうどその時、ヴァルキーが寝返りを打った際、運悪く僕のみぞおちに直撃し、大ダメージを覆ってしまった。
「痛ってぇ…食べたもの出ちゃう…」
若干気持ち悪いのをこらえながら僕は体も揺らしつつ呼びかけた。
「起きて~」
「んんっ…ん゛ん゛…」
僕の声が聞こえたのかヴァルキーはかすり声を上げながら目を覚ました。
「リオ~おはようなのだ~今の太陽の位置は…結構寝たのだな」
「まあ無理もないよ、ヴァルキーって基本夜遅くまで起きてないでしょ?僕も最近は規則正しい生活になってたから若干目覚めが悪かったくらいだし」
「夜になってお月様が大体てっぺんの半分くらいになったら寝るのだ…」
「え?こっちの世界でも空の大きなあの天体月なの?」
「そうだが…その口ぶりだとリオの世界の方も月なのだな…ん~まだ眠いのだ~」
この感じだと相当きつそうだ。今日も余裕をもって1日ここでゆっくりすることにしよう。ということで、僕は買ってきた朝食をヴァルキーに食べてもらい、身支度を済ませてからギルドに向かうことにした。道中ずっと心ここにあらずというかぼーっとした様子だった。今度からは夜更かしは気を付ける必要がありそうだ…ギルドで路銀稼ぎも兼ねて薬草採取でもやろうとしたが、このままだと採取中に寝てしまいそうだったので、この世界では割と珍しい討伐依頼のクエストを受注した。今回は害獣駆除とのこと。害獣と聞くとあちらの世界ではネズミ、ハクビシン、イノシシ、アライグマなど色んな種類の動物がいたが一体ここには何がいるのだろう。そう思いながら眠そうにする彼女を引っ張って以来場所に向かった。今回のクエストはさらに珍しいことに、その発注した人と合流することになっている。そうして、依頼書に書かれている場所に向かうと、動きやすい農家の格好をした男性がいた。僕はその人に話しかけることにした。
「すみません、あなたがこのクエストの依頼者ですか?」
「ああ~害獣駆除のクエストですか?ありがとうございます…」
僕に挨拶したときのその表情はなんだか暗いものだった。同じものを感じ取ったヴァルキーが眠いながらもそれを聞いた。
「おじさん~なんでそんなに暗い顔してるのだ~?」
「あ、ああ…実はこのクエスト過去に何度も依頼を出してるのですが、その度にクエスト失敗になってしまって、長い間苦しんでるんです…」
「今日討伐するのってどういう動物なんですか?」
「それはこういう動物なんですが…」
そういって動物が書かれた絵を見せてきた。その姿は――イタチに似ていた。あれ?イタチって肉食じゃなかったっけ?そうして農家さんから説明が追加された。
「この絵に描かれているのはヴィーセルという動物です。この動物は、私が育てているフロースという作物を食べ尽くすんです。この作物はいろんな料理の主食として使われる料理で、このあたりではたくさん栽培されているのですが、年々ヴィーセルは数を増やしていて、他の農家の間でもかなり深刻な被害を受けています。そして、その討伐依頼をすると毎回冒険者がボロボロになって帰ってきて、収穫はゼロ。何か嫌な予感すらしますが、私たちもこの農業が生命線ですから…なんとかお願いします…」
農家さんは神にもすがるような表情でこちらを見てお願いしてきた。もちろんその期待に応えられるように僕はこう答えた。
「はい!任せてください!今回で何とか片づけます!」
「我も頑張るのだ~」
未だにふにゃふにゃの様子のヴァルキーに二人してにこやかな表情を向けた。当の本人はこの状況をあまり気付いてる様子はないが…そうして他の冒険者が向かったという場所まで向かうことにした。農家の方は自分も様子が見たいと言っていたが、安全のためこちらで待機してもらうことにした。そうして進むこと体感30分ほど、早速ヴィーセル4匹が僕たちの前に現れた。何かを守るようにこちらを睨み、後ろ足の身で立ち上がっていた。ミーアキャットかな?目の前にいるヴィーセルたちは体長60cmほど、若干大きいサイズだ。そして僕がそれに臆せず一歩を踏み出すとヴィーセルたちは一揆に襲い掛かってきた
「よし!討伐しよう!」
ヴァルキーはこくっと頷いてふわっと前に進んでいった。何も考えず特攻している様子だったが、的確に攻撃を当てて瞬殺だった…これは目が覚めているのかそうでないのかが分からない…戦闘が終わるとヴァルキーは少し微笑んでおり、どこか恐怖を感じる。その後も僕たちは先へ進み、ヴィーセルが現れてはヴァルキーがすべてなぎ倒し、僕はほぼ体力を温存して進むことができた。そして、段々と現れるヴィーセルが多くなっていき、ついに僕たちはヴィーセルの住処を発見した。そこは、大樹の周りを囲うようにしてヴィーセルたちが暮らしており、ぱっと見た感じ見張りをするヴィーセル、守りのヴィーセルなど人間社会と同じようなシステムを採用しているようだ。そして、大樹の中間くらいに大きな穴が開いており、まるでそこを守るかのようにヴィーセルが集合していた。とりあえず敵意があるかどうかだけを確認することにした。まあ…確かめる必要はないと思うが…そうしてそのテリトリーに足を踏み入れるとおぞましい声を上げ、二本足で立ち上がり威嚇している。てっきりこのままタコ殴りにされるのかと思っていたが、ここで思いもよらぬ事態に遭遇した。
ジィィィィィィィィィィーーー!!!!!
一際大きくて騒々しい声が例の穴から聞こえてきた。そこから現れたのは――一回りも二回りも大きなヴィーセルであった。体毛も普段のヴィーセルなら薄茶色だが、そのヴィーセルは禍々しい紫色をしていた。そして、以前のセントルビーの動物たちのように目が赤く染まっていた。もしかしてこの近くに溶岩流でも流れてるのか…?とにかくあのドデカいヴィーセルをどうにかする必要はありそうだ。紫ビックヴィーセルはこちらを睨み、まるで何しに来たんだという圧のようなものをかけてきた。当然僕たちは幾度となく修羅場を潜り抜けてきているため、全く動じることはない。そして、あちら側もこちらが同族を倒したというのに激しい怒りを感じない。もしかしたらこのヴィーセルたちを道具にしか思っていないのかもしれない。そうこうしていると、ビックヴィーセルはこちらに来いとでも言わんばかりに首を横に振って誘導している。十中八九罠だろう。だが、ここで行かないと問題の解決にも向かわないと思った僕は未だ眠たそうなヴァルキーの手を引き、ビッグヴィーセルの後についていくのだった。
どうも、winger86です。今回も本作品をありがとうございます。さて、今回はナビの郊外で発生しているという害獣被害のクエストと未だ眠気から回復しないヴァルキーのお話でしたがいかがだったでしょうか?この話で理鳳達がヴィーセルの本拠地に着いたのは大体昼前です。大体起きてから数時間経っているので現実世界なら以上と言えますね…一体何が起きているのでしょうか?ということで、次回は、紫のヴィーセルについてのお話になります。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




