第82話 音楽と運ぶ町――ナビ
翌朝、目が覚めるとヴァルキーはすでに横に寝ていなかった。疑問に思った僕はテントの外を確認しに行った。しかし、近くにはおらず、昨日消したたき火が付いているだけである。
「ヴァルキー?どこ~?」
そう呼びかけても反応のは無かった。ここで無理に探そうとするとすれ違う可能性があったので待機することにした。待つこと数十分頭や服に葉っぱをくっ付け、小柄なヴァイゾを1頭担いだヴァルキーが帰ってきた。
「おお~リオ起きたのだな?おはよう~我は朝からご飯の準備をしていたのだ」
そういって彼女が持っているバッグから…って僕のを使ったのね…それはさておき、バッグの中から色々なものを取り出した。赤くて丸い果実が4つ、青紫の果実が2つ、黄色の小さいみがたくさんついたブドウのようなのが2房、山菜が2束である。
「随分とたくさん取ってきたんだね…これどうしたの?」
「なんか朝起きたらお腹減っちゃったしリオも起きてなかったから我が準備しに行ったのだ!このヴァイゾは目の前で木から落ちて死んじゃったがその家族らしきやつから見捨てられたから持って帰ってきたのだ」
「なるほどね、それなら安心」
「リオもたくさん食べるのだ!」
僕はヴァルキーに促されるまま朝食を頂いた。
「えっ!?うまっ!全部違う味だけどちゃんとおいしいし、肉の方も全然味付けしてないのにしっかりとした味してる!」
「ふっふ~ん、我がちゃんと味見して取ってきたから味は間違いないのだ!この肉は別なのだがな」
「舌が肥えてるね~いいと思う」
「リオに褒められたのだ♡~また我どんどんご飯取ってくるのだ!」
「まあ…いい心がけだけど僕の仕事無くなっちゃうから」
「リオの仕事はクエストしてギルドの人と話すことなのだ!我はご飯と戦う役~リオはゆっくりしててほしいのだ!」
「腕が鈍るからご勘弁を…」
彼女は献身的に僕を支えようとする意識が芽生え始めたようだ。正妻力だろうか?恋する乙女の変化をまじまじと感じる僕である。僕たちは朝食をすぐに食べ尽くし、テントを畳んで出発した。出発してすぐ、ヴァルキーがこんなことを聞いてきた。
「リオ~次のナビってどんな街なのだ?」
「ごめん、今回あんまり聞いてないんだ。だから到着するまでのお楽しみということで」
「え~なんで今回は聞かなかったのだ?」
「普通に忘れた」
「リオのドジっ子!」
少し怒られている感じもするが、そんな言葉とは裏腹に彼女は笑顔になっていた。僕もそれにつられて幸せな気分になる。そうして他愛のない会話を続けること数時間、遠くに大きな街並みが見えてきた。
「おお~あれ何なのだ?あまり高くない建物がいっぱい建ってるのだ!」
「なんか繁華街って雰囲気がするな~」
「はんかがい?何のことなのだ?」
「娯楽施設が多い町のことだよ、バー、スナックのお酒を飲むお店とかカジノ、パチンコみたいな賭博施設とか色々遊べたりする場所が集まってる感じ」
「ふ~ん、リオってお酒飲むのか?」
「まだ飲めない年齢だし未成年飲酒もしたことないよ」
「リオって意外と真面目なのだな、龍人は200歳で飲むことができるようになるのだ!」
「龍の寿命って何年?」
「確か…5000年?」
つまり龍は人間でいう4歳でお酒が飲めるようになるということだ。恐ろしい種族である。
「あれ?ヴァルキーって今は?」
「乙女に年齢聞くのはダメなのだぞ~?リオ~」
「前に神様がいたって言ってたから軽く1000歳は越えてそうだな」
「うっ…!なんで覚えてるのだ!忘れろ~!」
つまり僕と彼女は大体同い年ということになる。そうこうしている内に町の中に入った。すると、イメージと違う風景が広がっていた。
「リオ、なんかみんな紙が入った馬車を運んでいるのだ、リオが言ってたのと全然違うのだ!」
「ええ?あれ何?」
僕はその荷物を凝視すると、手紙であることが分かった。
「あれ手紙かも。ヴァルキーはさ、遠くにいる人に連絡する方法知ってる?」
「全く知らないのだ?」
「基本的にはあの紙に文字書いて送るんだよ、それを運んでるのがあの馬車だろうね」
「え?あれが遠くの人と連絡できるのか?龍人なら自分で飛んで直接伝えに行くのに…って人間は飛べないんだった」
「そう、だから一纏めにして運ぶんだ、郵便っていうんだけど」
「ゆうびん、なのだな。覚えたのだ!あ、リオあそこにギルドあるのだ!」
そういって彼女が指さす方向には馬車が多く出入りする場所なのにギルドと書かれた建物であった。僕たちは往来を飲隙を見て中に入った。すると――
「この手紙フィランデルに送ってください!」
「この手紙は切手が貼られてないので送り返してください!」
「この荷物は重いのであっちの便に変更します!」
ギルド職員らしき人の隣で多くの人があくせくしていた。するとギルドの受付らしき人がこちらに声をかけてきた。
「こんにちは~冒険者の方ですか?」
「はい、そうですよ」
「もしかして、この隣のバタバタ具合に驚いてますか?大体の冒険者の方ははじめはびっくりするので当然の反応だと思いますよ」
「なるほど、それでこの隣って何の施設何ですか?」
「これはプレール最大の郵便拠点です!プレール中の郵便物は一旦ここを経由してから各地に運ばれます。また、アパランティアからグレープレーズ、エンゲルのようにまたぐ地方の間の中継も行うため、このゴルドナで最大規模の郵便物量を誇ります」
「だからここはこんなに忙しそうなんですね」
「今は特に夏が終わるということもあり、ゴルドナで毎年行われる熱さを乗り越えるための贈り物の影響で量が増加してます。」
「なんか本当に大変そうですね…」
「それで本日はどういったご用事で?」
「あ~ここにクエストを受けに来ました」
「承知しました、ちなみに今日はどちらから?」
「セントルビーからパドゥルスを経由してですね」
「ということはかなり長旅だったのではないでしょうか?この町のギルドはギルドマスターの方針によって外の町からやってきた人のクエスト受注を断っております。」
「そうだったんですか?知らなかったです…」
「このルールを採用しているのはゴルドナでもここ含めて3か所しかないですから…さあ、今日はしっかり休息をとって明日以降こちらにいらしてください。この町はご飯もおいしいし、夜には面白い光景が広がっていますから是非是非楽しんでください!」
「はい、ありがとうございます」
そうして僕たちはギルドを後にした。
「もしかして、今日個々の宿に泊まったって嘘ついたらクエスト出来たのか?」
「そうなったらさすがに止まったことを証明するもの必要になりそうだから多分無理だと思う」
「ふ~ん、じゃあ今日はイチャイチャデーなのだ!でも~ちょっとお腹が減ったから先にご飯食べたいのだ…」
そういうとヴァルキーの腹の虫が鳴り出した。僕たちはこのナビを探索するついでに昼食を頂くことにした。そうして、食事を終え、夜になるまでナビの町を練り歩き、デートをした。そして、僕たちは道中で確保した宿に足を運び、外の風景を眺めることにした。ここはナビのメインストリートに面しており、ここを訪れる人の間で人気の宿ということだ。そうして少し経つとメインストリートにギターやマイクスタンド、ドラムなどを持った人たちがぞろぞろと現れたのである。
「リオ~あれ誰なのだ?」
「なんか前の世界で見たことあるんだよね、多分路上ライブやるバンドってやつだと思う」
「バンド?ライブ?それって何なのだ?」
彼女からの質問に答えようとしたその時だった――先ほどまで郵便馬車で忙しなかったメインストリートから大音量の音楽が聞こえてきたのだ。僕たちはその音楽に圧倒されつつ、風景に没頭するのであった。
どうも、winger86です。いつも本作品をありがとうございます。さて、今回はついにナビを訪れるお話でしたがいかがだったでしょうか?この世界にあるナビという町はゴルドナで重要な郵便拠点として機能しているようです。日本で言ったらどこになるでしょうか?そして、この町の最大の特徴は路上ライブ群です!早速2人も圧倒されて熱狂していますね。ということで次回は、ナビでの冒険が続きます。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




