第81話 ルーツが近い村?
結局僕はあの後様子がおかしくなったヴァルキーと自分たちの声を抑えるために何とか長い夜の間守り切ることに時間を費やした。翌朝――
「結局昨日あんまり眠れなかったな…ヴァルキー…はまだ寝てるな…」
とあまり頭の回らない状態で思考を巡らそうとしていると、障子の外から声が聞こえてきた。
「リオさん、そろそろ朝食の時間なんですが食べる?」
「あ、お願いします!もう一人の方も起こしますね」
「あ、別に急いで用意する必要はないよ~もっとゆっくりしていていいからね」
と気を使われてしまった。起きてしまってからもう空腹で寝れる感じがしなかったので僕だけ先に朝食を頂くことにした。そして、食卓らしき場所に向かうと、女将さんの他にその旦那さんとお子さんがいた。ん?いつもの食卓に客人が並んでいいのか?
「あ~ごめんね、びっくりさせちゃったかしら?夫と息子よ。どのお客さんも大体ばったり鉢合わせるから気にしないでね~」
いや、気にするだろ!そう考えていると旦那さんの方が口を開いた。
「今回はこの民泊を利用してくれてありがとう、私たちがいることに驚いたと思うけどあんまり気にせずゆっくりしていってほしい。あ、急いでここからどいたほうが食べやすいかな?」
「あ~いや大丈夫です、食べれますよ」
「おじさんも一緒に食べるんだ~ママのご飯おいしいよ~」
「へえ~じゃあ早速頂きますね」
そうして配膳されていたのは、ザ・和食そのものだった。みそ汁、白米、卵焼き、野菜の漬物、焼き魚の切り身と栄養バランスも考えられており、なんか元の世界に帰った気分がして感慨深い気持ちになった。
「このご飯おいしいですね。なんか懐かしい気分になりました」
「懐かしい?リオさんこれどこかで食べたことあるの?」
「僕の地元もこういうご飯だったので…」
「なら地元の味をここで食べさせてあげられてうれしいわ~じゃんじゃんおかわりしていいからね~」
「ねえママ~僕の分は~?」
「もちろんあるから遠慮なく言ってちょうだい!」
「やったー!」
卵焼きは味付けは僕好みの塩味を中心とした味付けであった。それ以外もしっかりとした味であり、とても満足できる朝食になった。すると僕がすべて完食し終えたところでヴァルキーが目をこすりながら部屋に入ってきた。
「リオ~ここか~?あ、いたのだ~我を置いて先にご飯を食べるとは意地悪な奴なのだ~」
「そうよ、リオさん、彼女さんは大切にしなきゃ!そう思うわよね?あなた?」
そういうとちょうど食器を洗って片づけようとしていた旦那さんの手が止まり、
「は、はい…」
と親に叱られた子供のように返事をしていた。
「それにこの彼女さん超かわいいでしょ?うかうかしてると他の男の子にとられるわよ?しっかり独占欲見せておかないと」
「わ、分かりました」
「リオの独占欲ってどんなもんなんだ~?楽しみなのだ~」
僕にもあまりわからないが、とりあえずあとで部屋で甘やかすことにした。まあ昨日はめっちゃ拒絶したちゃったし…
そうして家族団らんの中に混じって朝を過ごして数十分、ヴァルキーが朝食を終え、僕たちは部屋に戻って少しゆっくりすることにした。ヴァルキーは寝起きのふにゃふにゃした様子から一転してとても元気なのに不機嫌な様子だった。
「リオ!なんで昨日はあんなに我とイチャイチャするの嫌がったのだ!」
「気まずい、個人的に、女将さんの家族に聞こえたらちょっと嫌だったんだよ」
「我何度も大丈夫って言ったよな!?」
「その大丈夫はたとえ誰でも信用ならんのよ…」
「ふ~ん、我の事信用してないのだな~我は傷ついた!リオ嫌い!」
「一時的な感情に身をゆだねて言葉を発するのは控えたほうが良いよ?」
「つーん」
「つーんって口で言う人初めて見たわ…じゃあお詫びに言うこと聞こうか?1つ」
「つーん」
「つーん、つんつんつん?つつつんつつん…」
「何言ってるのだ…?」
「つん語」
「ええ…?」
「つーんしか言わなくなったから僕も「つ」と「ん」しか言葉がないつん語でしゃべったんだよ。使えるんでしょ?」
「はぁぁぁぁ…もうリオには勝てないのだ…ちなみに何て言ってたのだ?」
「うーん、どうしよっかな?ちょっと話聞いてよ…ですね」
「…」
ヴァルキーはこの僕の不可解な行動で完全に頭が冷えたようで、話ができるようになった。その後、僕は女将さんにお願いしてここの音が聞こえない場所から移動しないようにお願いした。すると
「そういうことね~いいわよ、私外出してるから~じゃあ彼女さんとごゆっくり~」
気を使わせてしまったようだ。まあその気遣いに甘えて可愛い彼女との時間を過ごすのだった。
1時間くらいたって、満足した様子の彼女を横目に僕は出発の準備を進めていた。
「そろそろナビ向かおうか、あんまり長居もよくないし」
「分かったのだ~ふへへ~」
この姿を見て不安になった僕である。とはいってもヴァルキーはしっかり準備を進めてくれたおかげでちょうどいい時間に出発することができた。そして、そろそろ村を出ようとしたところで女将さんに会った。
「あら~もう出発しちゃうの?もうちょっと長くてもよかったのに~」
「お気遣いありがとうございます、こちらもゆっくり過ぎると今後の旅に影響出るかもしれないので出発します!短い間でしたがありがとうございました!ちなみに家の鍵は郵便物入れに入れてあります…」
「戸締りまでしてくれたの?別にする必要なかったのに~個々の村に盗人なんかいないわよ~」
「僕がちょっと不安になっちゃっただけですのでお気になさらず、それでは!」
「は~いまたいつでも待ってるからね~!」
女将さんは元気にこちらに手を振ってお見送りしてくれた。今は何日も先の町の到着が遅れるのを恐れたのと、隣のヴァルキーがずっと腕にしがみついて熱っぽい目でこちらを凝視していたので一刻も早くこの村から離れたかった。はたから見たら明らかに何かあった表情してるし…僕たちはその後何事もなく村を出ることができた。その頃には彼女の表情は元に戻っていた。
「なんか夢見てたような感覚だったのだ!」
「ちょっと恐ろしい表情してたし」
「え゛?そんなに変な表情してたか…?」
「変ではないけど気を使われる表情」
「あ、ごめんなのだ…」
「いいよ、じゃあ先に向かおう」
「もちろんなのだ!ちなみにその表情は可愛かったか?」
「…」
いつもの表情に戻っており僕は安堵した。その後は2人でのんびり歩きながらナビに向けて歩いて行った。どうやらヴァルキーには大きな地雷のようなスイッチがありそれを踏むと、今回のようなことが起きてしまうらしい。気を付けよう。この日は結局ナビには到着することができなかった。僕たちはすぐさまテントを張り、寝泊りの準備をした。
「久々に徒歩で冒険してみると時間がかかるのだな~馬車って偉大なのだ!」
「この移動の前の徒歩ってリカーゴの前だもんなリカーゴ~インディン~セントルビーは全部馬車だったしリカーゴで1週間、セントルビーでも1週間以上待機してたら感覚忘れるよ…まあでもとても大変ってわけじゃないでしょ?」
「全然あの黄色のやつとか我の意識が乗っ取られる奴に比べたら全然楽なのだ!これからもどんどん進んでいこうな!」
「もちろん!」
「あれ?そういえば冒険の理由って何だったのだ?」
「あ、最近は遺跡調査があんまり出来てなかったから進んでないわ。この世界の不思議の調査だよ」
「あ~!なんか火山噴火するやつだったか?それって今どのくらい進んでるのだ?」
「まあ~あんまり多くはしゃべれないんだけど…そこまで進捗が良いわけじゃないほぼ分からない等しいかな…」
「なんで濁したのだ?何か言えない理由が?」
「あの壁面に他言無用って書かれてたからだね」
「へ~我全く分かんなかったのだ。そういうことなら我は聞かないのだ!でも魔法の事とか知りたいことがあったらもっと我に聞いて欲しいのだ!」
そういうとヴァルキーはにっこりこちらを向いていた。僕はそんな頼りがいがあって可愛いこの子の顔を最後に眠りについたのだった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はパドゥルスが日本の文化と近いことから理鳳が感動するお話でしたがいかがだったでしょうか?前に日本食を食べたのは第6話のブリーデにまで遡ります。皆さんは海外に行ったことがありますか?私はないです。なので日本食が恋しくなるという感覚があまり分かりません…いつか行ってみたいですね。ということで、次回以降はやっとこさナビでの冒険が繰り広げられます。理鳳はナビで何をするのでしょうか?お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。
今週はあともう1話更新予定です。そちらも併せてご覧いただけると嬉しいです。




