第79話 水田と川の村――パドゥルス
グランドヴァイゾの討伐すると、そいつは力を失ったかのようにしぼんでいき、元のヴァイゾに戻ってしまった。
「何だったのだ?さっきまであんなにデカかったのに元に戻っちゃったのだ…」
「結局分からずじまいのまま倒しちゃったもんね」
結局あまり深くは考えず、討伐した2頭をそのまま焼き、食べることにした。すると――
「ん?なんかもとグランドヴァイゾの方が肉汁がすごくておいしいぞ?」
「んん!本当なのだ!どういうことなのだ!?」
後々になってやっぱり研究所に持っていくべきだと思ってしまった僕である。その後も、順調に食べ進め、元々グランドヴァイゾだった肉の一部だけを意図的に残してすべて平らげたのだった。朝から戦闘して疲弊した体には沁みる味わいだった。満足した僕たちは火の処理をし、パドゥルスに向けて出発した。出発してからは特にトラブルも起きることなく、太陽が半分を回ってすぐのころくらいに休憩場所であるパドゥルス村に到着した。その風景は、日本の農村部を想起させるような黄金の田園風景が広がっていた。
「リオ~この周りにある水が貼ってる場所は何なのだ?この村の人たちはお金を地面に置いてるのか?」
「これはね、田んぼだな」
「田んぼ?」
「前にさ白米食べたことない?」
「あの白いちっちゃい粒の事か?」
「そうそう、あれが植えてあるんだよ。ほら、ちょっと先の方見てみて」
そういって近くにあった田んぼの一本の稲を手のひらで少し持ち上げ、穂の部分をヴァルキーに見せた。
「この中にあの米が入ってるのか?全然色違うのだ!」
「これはまだ籾殻って言われる状態で、この後川向いて磨くとあの白いご飯の元が出てくるんだ!ちなみに、籾殻を取ったのが玄米、それをさらに削って出てくるのが白米または精米って言われるね」
「へえ~どれもおいしそうなのだ!でも…なんでそんなにコメに詳しいのだ?」
「僕の住んでいた場所では米がたくさん作られてたし、主食はコメだったからだね。昔からそういうの勉強するんだ」
「もしかしてここか?」
「い~や全然違うね」
「もったいぶらないでさっさと教えるのだ!」
「あ、そういえばセントルビーで教える予定だったのに忘れてた、ごめん」
「え?何を教える気だったのだ?まさか…他にも秘密で女がいるとか!?リオ!そんな奴だったのか!?」
「違うよ、邪推で勝手に話進めないでね~まあそれはここの宿で話すよ」
「絶対だからな!忘れないで欲しいのだ!」
「もちろん!」
ついうっかり僕が転移者であることを告白するのを忘れて別の告白をしてしまった、失敬。到着したのがちょうど昼だったが、僕たちは朝のボリューミーご飯の影響で全くお腹が減っていなかったので、一先ずはパドゥルス村を散策することにした。とはいってもそこまで規模の大きい村ではないのでそんなに時間はつぶせない。
「ふとこの村の風景を見ていて思ったのは本当に僕の地元の所から田舎に行ったところの風景にそっくりなんだよね、冒険終わったらこういうところに住んだほうが良いのかな?」
「我は、いいと思うぞ?ここのどかで落ち着くのだ~」
この村はさらに特徴を備えていて、この世界では初めて見る木造藁ぶきの家であり、あの白川郷や五箇山のような住宅が広がっている。ただ、夕何時違う点を挙げるならかなり屋根の傾斜が緩やかなことである。あまり雪は降らないのだろう。僕たちは小一時間ほどパドゥルス村を見て回り心を和ませていた。
「まだ時間余ってるしギルド行く?」
「あ~そうするのだ。ちょっと体動かしてお腹を空かすのだ!あとさっきの焼肉っ…も届けるのだ…ふふ」
「そうだよな、普通焼いた後の肉をギルドに届けるのっておかしいよな…あはっ!」
2人ともこのシュールな光景に対してツボに入ってしまったようだ…この世界に来てからは初めてである。僕たちは笑いが収まった後ギルドを訪れ、クエストの受注と焼肉の提出をした。すると、ギルドの職員はかなり怒った様子であり、やっぱり現存での保存が良かったようだ。一応受け取ってくれはした。
「いや~やっぱり怒られたのだ~ふふ、あの突然変異種なんか絶対焼肉にしちゃいけなかったのに~」
「それはもうすでに後悔してる。まあ気を取り直してクエストに行こうか」
「今日は何をやるのだ?」
「このパドゥルスの近くにあるオーハランド川で魚釣りだけだったんだけど…」
「だけど?」
「ヴァイゾの調査も追加されました…」
「ええ!?二つなのか!?」
「なので先につり終わらせてさっさと森林に向かいます。本当に申し訳ないです」
「ふ~ん、分かったのだ。我は手伝うぞ?」
「ありがとう~よし、じゃあ早速そのポイントやらに向かおう!」
僕たちは歩いてオーハランド川の釣りスポットに向かった。オーハランド川は僕が転移してきたピーツ村付近を源流として流れ、そのままミヒ川に流れ着く川である。そのためあの溶岩流の影響も多少あると考えている。そして、スポットに到着して釣りの準備を始めた。
「今回取るのはこの魚だって」
「マソウ?なんか外側がきれいな魚なのだ。」
「おいしそうだね、ギルドでいくつか分けてもらお~よし、じゃあ釣るか」
「どうやって釣るのだ?」
「よし、いい機会だし見てて」
僕はギルドから受け取った釣竿を取り出し、先ほど道中で捕まえて置いた比較的気持ち悪くないバッタのような虫を針に括り付け、ひゅっと放り投げた。この釣り竿にはルアーはない。
「ヴァルキーはそこにある網持っといて、あとはあの釣り針が沈むのを待つだけだよ」
「どんくらいで釣れるのだ?」
「それは僕にもわからない」
「え~夜まで来ないとかなったら嫌だぞ?」
「そうなったらギルドに異常事態と報告だよ」
「あ、確かに」
などと話している間に釣竿の先についている浮きが沈んだ。
「あ!ヴァルキー網構えといて!」
「分かったのだ!」
ルアー無しの釣竿のため、僕は後ろに下がって岸まで上げようとした。幸いにもそこまで重い魚出なかったのであっという間に引っ張ることができた。
「今だヴァルキー!その意図の先にいるやつを網に入れて!」
「オッケーなのだ!」
そういうとヴァルキーは素早い動きで魚を網に入れてこちらに走ってきた。
「取ったのだ!見て!」
「お~初釣り成功だ~それもちゃんとマソウだね」
「やったのだ!この調子で…って、え?初めてだったのか…?」
「うん、そうだよ?」
「もしかしてリオって何でもできる人なのか?」
「僕はスポーツは何もできなかったよ?」
「あのリオが?」
「うん」
「にわかに信じがたいのだ…」
ヴァルキーは話を信じていないようだが色々落ち着いたらサッカーとか野球を教えよう…とはいってもできないんだけどね。ルールなら…
僕たちはその後も順調に釣りを続け、目標の20匹を釣ることができた。初めてにしては上出来だろう。その後、収納用ケースに魚20匹を入れた後、森林に入ることにした。そうすると、再びつがいのヴァイゾにあっという間に遭遇した。この間と同じ状況である
「さっきリオが言ってた2頭のヴァイゾなのだ!あれを片方倒したら暴走したのだな?」
「そうそう、確かメスの方だったかな先に倒したのちょっと見てみるか…」
僕は資料をもとにさっきの記憶と照らし合わせてみるとメスを討伐した時であることが確認できた。
「よし!じゃああっちの方のヴァイゾ倒すよ!」
「我はどうしてたらいい?」
「うまく成功したら暴走するから龍の姿になれる準備だけしといて」
「了解なのだ!」
僕は今朝と同じような状況を作り出し、見事に残ったオスのヴァイゾは再びグランドヴァイゾになり、その討伐にも成功してクエストを完遂することができた。これは、後にヴァイゾの新たな習性としてゴルドナ中に注意喚起で語られることになるのだった。
どうも、winger86です。いつも本作品をありがとうございます。さて、今回はついにパドゥルスに到着しパドゥルスを満喫するお話でしたがいかがだったでしょうか?このパドゥルスはとても私たちの住む日本に近い様子をしているようですね。訪れてみたいです。そして、今回でヴァイゾの恐るべき習性が判明しました。どうして今まで判明していなかったのでしょうか?ということで、次回はパドゥルスでもう少しだけイベントが発生します。理鳳のことも大きく関係します。お楽しみに。それではまた次回のエピソードでお会いしましょう。
メモ
ヴァイゾ:
プレール地方一体に生息する草食動物。その生息範囲と飼育のしやすさから、農作物が育てづらいプレール西部で放牧して買われることが多い。ヴァイゾは牛乳も牛肉も良質なため、この地域の特産品はこの二つな都市が多い。性格は基本温厚で人に襲い掛かることはないが、赤いものを目にすると時々暴れだす個体が現れ、それに呼応するようにその群れ集団で暴れだすことがある。
追記
オスとメスの1頭ずつの時、メスの方を先に討伐するとオスの方はヴァイゾの上位種であるグランドヴァイゾに進化を遂げる。グランドヴァイゾは突進のスピードが音速を上回るとされており、討伐は困難を極める。その代わりに肉の品質が上がるという噂もある。




