第78話 つがいはお取り扱い注意
僕が到着時間を言ってからヴァルキーの歩くペースが上がった感じがする。早く村についてご飯が食べたいのかもしれない。本当なら龍の上に乗って移動すれば素早く到着することが可能だが、このあたりも数十分に1回程度他の冒険者や商人とすれ違うため、その姿を見せて混乱を招きかねないので控えている。
「リオ~もう我の存在この世界中に広げたら楽に移動できそうな気がするのだ~どうにかできないのか?」
「そうだな…ドラゴンとか龍いう存在自体がこの世界に空想上でも存在しないみたいだからどうしようもないんだよな…あとモンスターだと思われて討伐されるよ?」
「そこは、リオが全部説明すればいいのだ、前だって人前であっちの姿になったことあるし…」
「あれはあの土地がヴァルキーの事知ってたから良かったものの、こっちの方では土地の守り神の伝説なんか伝わってないだろうし、難しいと思うよ。まあいつか冒険終わったら…かもしくは冒険の際に必要になったらやろうかな、今は我慢我慢」
「ええ~面倒なのだ~まあでもリオと一緒に居られる時間が長くなると考えれば悪くない…いやむしろ好都合…!リオ、やっぱり龍の姿になれる必要なさそうなのだ」
「心変わりがお早いこと…」
ヴァルキーにとって龍の姿になれること<僕らしい。まあ無理に申請する必要もないと思うからおいおいやっていくことにしよう。そんなこんなで時間は進み、結局夜が深くなってもパドゥルスに到着することは出来なかった。
「到着できなかったのだ~今日は何食べるのだ?」
「今日は次の村での物資交換も含めてセントルビーで補充した食料食べるよ」
「いつの間に?」
「ヴァルキーが気を失ってる間に買い足してたやつそろそろ食べないとおいしくなくなりそうだから」
「というかそんなに長い間保存できるご飯があるのだな…おいしいのか?それは」
本日頂くのは乾パンと干物である。この干物は例のミヒ川で取れる新鮮な魚をそのまま乾して作られるセントルビーの特産の一つである。乾パンはどこにでも売っている普通のやつである。今日は乾パンだけをお湯でふやかして食べる予定である。
「うっ…なんか臭いのだ…これ本当においしいのか?」
「まあ食べてみれば分かるよ」
「まずかったら許さないのだ…」
「怖い怖い…」
そればっかりは口に合う合わないがあるのでどうも言えないが、元々水龍なヴァルキーなら気に入ると思っている。ちなみに、僕も干物を食べるのは初めてである。
――パクッ
ヴァルキーはその小さい口に干物を放り込んだ。すると――
「んっ!おいしいのだ!匂いこそ結構癖があるのだが、これが旨味になってるから白米と合いそうなのだ!」
「そういっていただけて何より…」
この子、もしかしたら舌感覚は日本人に近いのかもしれない。というか、この世界の大半の料理が日本人の好む味付けがなされている。そうして、あっという間に食べつくし、満足げな表情を浮かべていた。僕も食べ終わり、二人でテントに泊まり、休息をとった。
翌朝、いつも通りの支度を終え、再び出発した。しかし、今日は朝食が無かったので、すこし危機的な状況になっている。
「リオ~お腹減ったのだ~」
「僕もだよ…やっぱり昨日何か狩っておくべきだったな~どうする?今からサクッと狩る?」
「なんかそんなことをする元気もなさそうなのだ…」
僕は元の世界では1日2食ということも普通にあったので慣れているが、よりエネルギー消費がでかいドラゴンの体には堪えるのだろう。ということで、ヴァルキーが完全にノックアウトする前に僕が狩りに出かけることにした。僕はせっかく片づけたテントを再び展開し、その中でヴァルキーを待機させ、街道から外れて狩りに出かけた。少し森の奥を進んでいくと、やはり動物がちらほら朝食を食べていた。いたのはヴァイゾ2頭である。つがいだろうか。ヴァイゾはジムリックより体が大きいため、複数頭だと多すぎてしまう。ということで、僕は片方を初級横切りで討伐し、すぐにテントの場所へ引き返そうとした。しかし、仲間がやられたことで怒ったもう片方のヴァイゾがこちらを睨んでいる。そして――
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー!!!!!!
という鳴き声を上げ、その体を大きくし、角を伸ばした。その姿に驚きつつ、僕は戦闘態勢に入った。
「え、そんな変身するヴァイゾ初めて知ったんだけど…!これも溶岩流の影響か?」
そう思って目を見ても元々の白い瞳孔に黒い虹彩の普通の目が大きくなっただけで溶岩流の影響は受けていない様子。突然変異だと推測した。僕はさっさと戻るために、上級で仕留めようとしたときである。なんとグランドヴァイゾとも言うべきその大きなヴァイゾは目にもとまらぬ速さでこちらに突進してきた。僕は当たる直前で反応し、間一髪角は避けることができたが、体に当たって思いっきり遠くに飛ばされてしまった。
「どわっ!何今の速さ!反応できなかった…それで~これからどうしよう…」
僕は上方向に思いっきり飛ばされてしまったため、上空空高く飛ばされてしまった。下を見ると、こちらを凝視したグランドヴァイゾがその下を超高速で走り抜けている。そして、なんと街道を横切ってこちらに追いかけてきた。幸いにもそこを走行している人はいなかったものの、最悪人的被害が出ていたと考えるとぞっとした。そして、街道のある場所から一筋の光が見えた直後、碧緑のいつも見慣れた水龍がこちらに向かって飛んできていた。
「リオ~!今助けるのだ~~~!」
ヴァルキーがこちらの異変に気が付いて助けに来てくれたようだ。そして、見る見るうちに距離が縮まり、僕は何とかその背中に乗ることができた。
「助かったよ…めっちゃ飛ばされた…」
「なんか空を見ていたらリオが飛んでて何事かと思ったのだ!で、その飛ばした奴は誰なのだ…?」
ヴァルキーの目からハイライトが消えている。ブチギレのようだ。そんなにガチにならなくてもと思ったが、ここは甘えさせてもらうことにしよう。僕は下にいる例の存在を説明した。
「下のあれ」
「え?あ、あの爆速のウシか!?いや…にしては様子がおかしいような…」
「2頭でいるところを片方倒したらああなった」
「リオ…それは…」
「ヴァイゾ2頭は多いでしょ?」
「我ならそのくらい余裕で食べられるのだ!遠慮するなのだ!」
「いつもは抑えていると?」
「だってたくさん食べる女の子ってあまり可愛くないと我は思うから抑えてるのだ…!」
「僕いっぱい食べる女の子好きだけど、まあ食費を圧迫しない程度なら全然食べてもらって構わないからね」
「っ…!分かったのだ!嬉しい…!」
普段からあまり満足に食べられていなかったのかもしれない。もう少し彼女のことを知る必要はありそうだ。だが、お金は有限。そのバランスは考える必要がある。そうこうしていると、なんとグランドヴァイゾはこちらに向かってジャンプして角を向けてきた。そこで僕は高高度からの初級重力切りを使って応戦した。この技は当然のことながら重力を使って下に振り下ろす技だが、ハイドさんによるとその重力での加速度が最大になるとなんと上級にも匹敵する程度の威力が出るらしい。しかし、その高度だと受け身が難しいため、やはり上級を習得している必要はあるようだ。僕は角の間をすり抜け、頭のてっぺんから思いっきり刀身を当てた。そのまま両者地面にたたきつけられたが、僕は受け身をったことと、ヴァイゾのボディーがクッションになったことでほぼ無傷で着地することに成功した。そのすぐ後にヴァルキーも地面近くで人の姿になりながら降りてきた。僕たちは少し喜びを分かち合い、そのまま火をくべて豪華な肉料理をいただくのであった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回は道中でヴァイゾが進化してしまい、それと対峙するお話でしたがいかがだったでしょうか?セントルビーで散々討伐してきたヴァイゾですが、なんと今回は体を巨大化させ、リオ達に襲い掛かってくるモンスターでした。むやみやたらに動物を刺激するのは危険なことが分かりますね。ということで次回は、ついに次の休憩する村、パドゥルスに到着します。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




