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第74話 パートナーズ・セカンドスキル

今回のお話は極力不適切な表現が無いよう細心の注意を払っていますが、完全ではございません。このことを留意したうえで閲覧いただきますようお願いします。

――チュン、チュンチュン…………ガツッ!ガツッ!ガツッ!ガツッ!――


僕は朝から騒々しい音で目を覚ました。その音の方向を見ると、窓をくちばしで叩いている鳥が2羽いた。もちろん、2羽とも目を真っ赤にしており、溶岩流の影響で暴走しているのだろう。僕は昨夜衣服を1つも身に着けずに寝てしまったので、窓を叩く大きな音を我慢しながら地面に落ちていた衣服に腕を通し、入り口近くの黒剣を手に取り、突かれていた窓を開けた。すると、勢いよく僕に2羽が飛んできたのでその場で切り落とし、朝の平穏で静寂な時間が再び舞い戻った。僕は少し意気消沈してしまった。


「な~んで、朝の定番イベントを邪魔するかな~?やっぱり現実はうまくいかないもんだな…」


朝からこの間の暴走イベントを彷彿とさせる出来事だったので、僕は隣で寝ていたパーティーの相棒…いや彼女であるヴァルキーを見ることにした。ちなみに、ヴァルキーも衣服は身に着けていない。


「やっぱり、なんで僕こんなきれいな子に好かれたんだか、やっぱりよく分からないんだよね…まあ、彼女になってくれた以上大事にしないとね!」


ヴァルキーを見ていると無限に活力が湧いてくる感じがした。これが愛ってやつか…恐ろしくも頼もしいものである。そうして顔を眺めていると、彼女はついに目を覚ました。


「んんんん~~~…おはよう~なのだ~ふふ、これでリオは完全に我の物だな~♡にしてもリオって…」

「それ以上は言わないで…こっちが恥ずかしい…あと服着てくれ」

「は~い、あ、でもリオはいいのか?我昨日の続きしても…」

「だからそういうこと言わないの、今日はセントルビー最終日なんだから皆にお礼参りと最後のお手伝いあるんだって、ほら準備しよ」

「は~い、愛しのリオ♡」


くっ…そんな笑顔向けられたら頭真っ白になるわ!という感じで付き合い始めてから遠慮が無くなったのか、破壊力が出会った当初の10万倍はくだらないほどになっている。ペットとして認識していた頃とは大違いである。

 その後ヴァルキーも身支度を終え、部屋を出る前に一回キスをしてからギルドの受付所がある大広間に向かった。ただ――僕たちから溢れ出る甘い、ピンクの雰囲気は隠せないようで――


「お、その様子だとついに付き合ったんだな!おめでとう~!!!」

「やっとか~いつになるんだろうと気が気でなかったんだよ~」

「ヴァルキーちゃん別嬪さんなんだから大切にしろよ~!」


などと祝福の言葉をたくさんもらった。そのまま、受付所に向かい今日の手伝い内容を聞いた。今日は…なんと渡されたのは秘に丸が書かれた書類であった。見るからに機密事項である。そして、下の方には、ギルドマスター室を訪れるようにとの指示が書かれていた。何か嫌な予感がしたが気にしないふりをし、いつも通りギルドマスターの部屋を訪れた。


「おはようリオ君……朝からべったりだねヴァルキーちゃん、もしかして!あなたたち付き合い始めたのかな!?」

「あー…はい、昨夜から…」

「まずは、おめでとう、もう私の付け入る隙はないみたいだね」


それは前にも言ったと思うが気にしないでおこう。


「それで、今日あなたたちを呼んだのはほかでもないヴァルキーちゃんのチェックの話」

そういうとヴァルキーは顔を青ざめた。


「え!い、いや、いやなのだ!また体が乗っ取られるのはごめんなのだ!」

「ああ、ごめんね、言葉足らずだった、最後は臨床試験をしてほしいの、あなたドラゴンになれる女の子でしょ?そしてこの間溶岩流で暴走もした。そこで、今この動物たちの暴走を抑える薬を作っているの、それの最終試験としてヴァルキーちゃんにやって欲しいんだ」


正直これは僕も倫理的に問題があると感じた。当然だ、この間それによってヴァルキーは死にかけている。


「もちろん、無理にとは言わない。でも、今リオ君たちが次に行こうとしてるオリアンズは溶岩流の流れるミヒ川の河口にある町。ということは溶岩流は避けては通れないよ?と言って東に行くとフィランデルとかそっちの方の町でリオ君はもう行ったことがあるし、西の方は乾燥地帯に入って町という町がなくなるうえに、道もないから冒険できないと思う。だから、ここで克服しておいてほしいんだ…念のため郊外でやるつもりだし、それをもう一回抑えてもらうためにリオ君にも来てもらったんだ、どうかな?これで溶岩流を克服できれば冒険にも自由が出ると思うんだけど…」


僕は倫理観、理系としての実験の大切さ、そしてなにより愛する彼女に再び身を危険にさらすという考えが巡り、深く頭を悩ませていた。ここで簡単に断ることもできるが、それで再び暴走することになったら今度こそ冒険は二度と出来なくなる。などと考えているとニオさんから付随の条件が提案された。


「今回の試験で万が一暴走したとしてもリオ君の討伐の義務と冒険者証の剥奪はしない。こっちが意図的に誘発させるのと同じだから責任は当然こちら側にも発生する。そして討伐は一緒に行う。何より、今後のゴルドナにもかかってるんだ、お願い!」


僕はここで一つの考えが浮かんだ。それは、今後も溶岩流に偶然遭遇するというリスクだ。今は、ミヒ川のみ流れているという状況があるからそれを避ければいいが、今後遺跡調査を行った際、前の火砕流のように溶岩流が発生して暴走してしまったら?そこが僕にとって不利なところで討伐できず、暴走したヴァルキーを世に放ってしまったら?そう考えると今実験するべきなようにも感じてきた。と考えていると、ヴァルキーが口を開いた。


「その薬って効果はあるのか?それが保証できないなら我は絶対にやらないのだ!もう我はあんな苦しい思いはしたくないし、リオにも傷づいて欲しくない!」

「すでに、ヴァイゾやヒュージ・ビア、ブルーフート、ジムリックには試してすべて効果が確認されてるよ。ちなみに、その薬の材料はリオ君が教えてくれて、そして研究してくれたブリデール草の薬」


そう聞くと僕は今までの研究がそれに使われており、暴走を止めるときにもブリデール草を用いたことから、一気に信用度が増した。


「ヴァルキー、本当に大変な思いをさせることは重々承知の上で僕の意見を伝える。ブリデール草はヴァルキーを助けるときに使った薬草なんだ。正直これが無かったら助けられなかった…それくらい効果のある薬草ということは僕が保証する。今後の冒険の安全ためにも一緒に実験して欲しい…身勝手でごめん…」


そういうとヴァルキーは険しい顔になり、考える仕草をした。相当ヴァルキーの中で葛藤が生じているように見える。恐らくニオさんだけなら断ったが、僕が賛成するのは想定外と言っても過言じゃない…これはヴァルキーに敵(・)対(・)す(・)る(・)、(・)暴(・)走(・)を(・)歓(・)迎(・)す(・)る(・)のと同等の行為なのだから…そうしてる内にヴァルキーの中で考えがまとまったような真剣な表情に変わり、僕とニオさんを見て話し始めた。


「分かった…本当にやりたくないが、リオの頼みならやるのだ…でも!リオ!もう1回我をしっかり止めるのだ!そして終わったら!我ともっとイチャイチャするのだ!約束だぞ!」

「もちろん、何度でも止める。あと、僕もニオさんにお願いがあります。ブリデール草のエキスを抽出したソードオイルとマリースの花の回復薬を5本下さい。それがこの試験をやる条件です。」

「物資の方についてはこちらの方でしっかり手厚くするから安心してね。よし!じゃあ実験に向かいましょう!ヴァルキーちゃんもこんなに嫌だと思うことを引き受けてくれて本当にありがとう。感謝してる。」

「別にお前のためじゃないのだ、リオのためなのだ!」


そういってニオさんを睨むヴァルキーであった。そうしてニオさんを含めた3人でで道中で溶岩流を目に入れないようにしつつ実験場に向かった。しかし、思わぬ事件が起きた。それは実験場に到着し、万全の準備を整えてからヴァルキーに溶岩流を眺めてもらった。すると――


「リオ!…我もう…暴走しないかもなのだ!」


そういうとヴァルキーは自我を保ったまま暴走した時の最初の段階の髪色と光彩を赤色に染めてニコニコしながらこちらに歩いてきたのだった。

どうも、winger86です。今回も最後までご覧いただきありがとうございます。さて、このエピソードはヴァルキーと一夜を共に過ごし、カップル1日目にしていきなり大きなトラブルが舞い込んでくるお話でしたがいかがだったでしょうか?最後の描写で暴走した時と同じ姿に変化したという描写がありましたが、一体ヴァルキーの身に何の変化があったのでしょうか?お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。

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