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第73話 一人の冒険者としての責任

僕は胸がときめくのを感じながら眠りについた。翌朝、思いのほか深く眠ることができ、すっきりと目を覚ました。まずはルーティーンとしてヴァルキーの部屋を訪れることにした。ヴァルキーはまだ寝ていたので僕はそのまま今日の手伝いをすることにした。今日は、昨日に引き続き溶岩流の調査である。どうやら、ミネアスの方から続報があったらしく、噴火場所はミネアス内の遺跡ということを聞いた。その時、僕はカボディアと一緒に探索した『トレン遺跡』のことを思い出した。僕は一緒に調査に向かうリカーゴから訪れた研究員とセントルビーに常駐していたボスティールの研究員の人に情報を伝えた。


「あの…僕その遺跡からの噴火に覚えがあるんですが…」


そういうと二人の研究員は目をキラキラさせてこちらに興味を示してきた。


「「もっと詳しく!!!」」


僕は二人に圧倒されながら、トレン遺跡で遭遇した火砕流のことについて話した。その時、壁にはここから先に立ち入るなという警告文が書かれていたこと、その警告を無視すると奥の方で何かしらの仕掛けが発動し、火砕流が発動したことなどを全て伝えた。壁面の文章を除いて。その結果ミネアスの方とボスティールの方にその情報が送られ、ミネアスでは遺跡内の研究の準備、ボスティールではトレン遺跡の準備が始まるとのことだった。研究職の仕事の速さと言ったら恐ろしいものである。僕は今日も溶岩流の観察と、採取、周りの動物の様子と場合によっては討伐を行い、1日の仕事を終えた。そして、帰りにもしっかりヴァルキーの病室を訪れた。


「ただいま~疲れた~」

「お帰りなのだ~ご飯にする?お風呂にする?それとも~わ・た・し?」

「まずは何からツッコめばいいんだ…?」


僕はそんなヴァルキーに冷ややかな目線を送った。


「そんな目をしなくてもいいじゃん!それで、今日は何をしてきたのだ~?」

「今日は前に訪れた遺跡の話して、その後に今日も溶岩流の調査したよ」

「それって我と最初に行ったあの遺跡?」

「それじゃなくてそれより前に訪れた遺跡」

「ん?リオってあれより前に遺跡行ってんだな~誰と?」


急に空気が凍り付いた気がした。だんだんとヤンデレが強まってきてるのかもしれない。だがしかし、ここで恐れることなく僕は正直に話した。


「カボディア」

「あ、あいつと!?先に一緒に探索行ってたのはあいつが先だったのか…リオ!」

「はい、なんでしょう?」

「我と一緒に初めていっっっぱい作るのだ!」

「そうだね、一緒にいっぱい初めて経験しようか」


そう直球に言うとヴァルキーは照れてしまい、顔を真っ赤にしていた。押しに弱いのはやはりヤンデレの特徴である。え?困るぞ?ちょうどそのタイミングで看護師が入ってきた。


「どうも、今日も来てます」

「こんばんは、毎日欠かさず来ててリオさんからも愛をかじますね~ふふ」


僕はそういわれて少し照れてしまった。


「お~リオも照れてる~へえ~我のことそんなに好きなのか~我はもうリオの物だぞ~?」


にしても、こんなに自分を好いてくれる相手がいるというのも幸せ者だとつくづく感じる。


「リオさん、ヴァルキーさんは明日にも退院できますのでそれまでお待ちください、でも羽目を外しすぎるのは…ね?」

「大丈夫です、その辺りは弁えているつもりなので」

「そういう人に限ってダメなんですよね~」


これは自分にも経験があるような含みのある言い方である。気を付けよう…


「じゃあ、僕はこれで失礼しますね」

「また明日ですね」


今日もやっぱりここにいてほしいとヴァルキーが駄々をこねてきたが、何とか説得して部屋に戻った。今日は――ねえ~~~~!!!!!なんで昨日に引き続きこんなに早く帰っちゃうのだ~!?――とかなり大声でしゃべられたことで頭がキンキンしている。明日からはここで寝る…と考えたが僕はここで一つ問題に気が付いた。そう――


「これ毎日溶岩流見えるのどうしたらいいんだ?」


この客人宿泊室はミヒ川のきれいな清流を楽しんでもらうためにミヒ川の方に窓が設けられている上に、ギルドはミヒ川のほとりにあるのだ。これでは再び光を浴びてヴァルキーが暴走しかねないということで宿泊する場所をずらしてもらう相談をしに行くことにした。僕は、ギルドマスターの部屋をノックした。するとあちらの方から出迎えてくれた。


「リオ君からこちらに来るなんて、もしかして私の魅力に気が付いた?な~んて冗談冗談、で相談事は何かな?」

「あの客人宿泊室から別の部屋に宿泊場所を移動させたいんです」


そう相談するとニオさんは快く承諾してくれた。実は、客人宿泊室はその客人の好みに合わせて3か所用意されているらしく、僕の泊まる場所は川とは反対の場所なった。普段はここの人気はないので、来客が多いときにのみ使用される客室とのこと。僕は早速部屋に戻り、片づけと移動準備を済ませた。客室に入ると、使用頻度が低い客室だったために、どこの設備も先ほどまでの宿泊室に比べると新品のようであり、とても心地が良かった。さらに、この客室は入浴設備までセットになっており、もうホテルそのものである。


「うわ~懐かし~ビジホだ」


思わず声が漏れてしまう。僕は今日の疲れをいやすためにすぐお風呂に入り、食堂でご飯を食べて、ふかふかベッドで思いっきり睡眠をとった。翌朝、起きてヴァルキーの病室の扉を開けると、いつもの恰好をしたヴァルキーが抱き着いてきた。


「リオ~!我ついに退院なのだ~!やっとリオにべたべたできる~ふふ」


ヴァルキーはとても嬉しいようだ、それを祝ってか、後ろからニオさんもやってきた。


「退院おめでとうヴァルキーちゃん、これでいつでもリオ君とイチャイチャできるね~にしても…私の付け入るスキはなさそうだね…はは」


そういっているのも無理はない、ヴァルキーは僕に抱き着いた後、僕の右腕に引っ付き、離れないのである。やはりまだニオさんを警戒している様子だ。


「もちろんなのだ!我はリオの物だし、リオは我の物なのだ!ギルドマスターだとしても絶対に渡さないのだ!」


ぐぐぐっ…どんどんと腕にしがみつく力を強くしており、血が止まりそうになっていた。痛い…


「ヴァルキーちょっと痛い」

「あ、ごめんなのだ~まだ力の加減がそこまで治ってないのだ」


そういうと、ニオさんは真剣な表情に変わった。


「ニオ君、約束の件何度も口酸っぱく言うようで申し訳ないんだけど、しっかり守ったうえで冒険してね?ヴァルキーちゃんのこと頼むよ?」

「もちろん、ひと時も忘れたことはないです、ご心配なく」

「おお~頼もしいね。もしかしてそろそろこの町を離れる感じかな?」

「そうですね、また南の方に行くと思います」

「前にも聞いたと思うけど、溶岩流気を付けてね」

「はい!」


そういうとにこやかにニオさんは部屋を立ち去った。ヴァルキーの方をみると、何やら不審な顔をしていた。


「リオ…約束って?もしかして我が関係しているのか…?」


ヴァルキーが不安な表情をしていたので、これまで彼女に話していなかったことをすべて話すために、今の宿泊室に案内することにした。幸い、今日は手伝いがお休みなのでゆっくり話し込むことができる。


「それで…約束って…?」

「この間の暴走の件と勝手な行動の関係で冒険を続けるために僕に課されたもの」


そういうと、彼女は引きつった顔になり、顔も青ざめていた。


「!…もしかして我が暴走したからリオに…?うっ…ごめんなのだ…我の…我のせいで冒険が…」


ヴァルキーは泣き始めたが、話を続ける。


「僕に課されたのは2つ、一つはヴァルキーの監視をすること、もう一つはヴァルキーが再び暴走したときにヴァルキーを僕の手で討伐すること」

「ということはリオはずっと我を見守っていないと冒険者を…ん?あれ?これってむしろ嬉しいことじゃ…」


見る見るうちに表情が明るくなり、普段の彼女に戻ってしまった。


「へえ~ということは我はずっとリオと一緒に居られるんだ~それも約束なんて~へへへ…な~んだもっと厳しいことかと思ったのだ」

「これ僕の荷が結構重いんだよ、暴走状態のヴァルキー前より強かったし」

「でも、リオなら大丈夫でしょ?今回もちゃんと我のこと救ってくれたし!」

「まあね、それで一応ずっとに一緒にいるということで冒険者だけじゃなくて一人の男としても責任を取ろうかと思って、僕と付き合わない?」


僕は意を決して告白した。すると、再びヴァルキーは泣き始めた。しかし、今度は嬉し涙である。


「はい…!これからよろしくなのだ…!」


僕たちは長い時間ハグをして互いの気持ちを確かめ合ったのだった。

どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はヴァルキーがついに退院し、理鳳が男を見せるお話でしたがいかがだったでしょうか?出会ってから今回で51話、ついに結ばれました。おめでとうございます!これから二人はどんな生活を送っていくのでしょうか?ということで、次回はセントルビー滞在最終日となります。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。

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