第71話 業と枷
僕はまず、ニオさんに報告をしてから立ち去った後の話から始めた。
「まずは、こちらの独断の行動で今回のようなご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした…」
「それは本当に反省してね。こちらも人数把握とかが大変になっちゃうからさ。それは一旦置いておいて、その後何があったの?」
「僕はあの場所から移動するとき、奇妙な音がすると言ったと思いますけど、あの原因が川の上流から来ていることを特定したんです。そこで、少し待ってみると…ニオさんもこちらに向かうときに見たと思いますけど、溶岩流が流れてきたんです。」
「ということは、奇妙な音の正体は溶岩流だったわけだ、でその後どうして報告せずにあの場所にいたのかな?何か理由でも?ヴァルキーちゃんが関係していると私は睨んでるけど」
僕は、全て言い当てられた気分になりながらも言葉をつづけた。
「ご察しの通りヴァルキーが関係してます。溶岩流を見かけて、すぐに報告に戻ろうとしたら…ヴァルキーの様子がおかしくなったんです。」
「それでもしかしてあの煤まみれのヴァルキーちゃんはその結果ってわけか…それであのモンスターはどうしたの?」
「あのモンスター名前がありまして、あれドラゴンっていうんです。なのでここからはそう呼びますね。」
「へえ~そうなんだね。私もそう呼ぶことにするよ」
どうやら、この世界にはドラゴンという言葉は存在しないらしい。まあ日本語しかない世界だ、それはそうだろう…なにやら怪しいときもあるが…
僕はその後、ニオさんに対して頭痛がしてその後僕の勘であそこまで運んだこと、その後のヴァルキーの変身とあのレッドドラゴンの関係などなどをニオさんが僕たちの所へ戻ってくるまでを事細かに説明した。
「なるほど、状況は把握できた。ということはあのドラゴンの正体はヴァルキーちゃんだったということでいいんだね?ということは…諸々の行動や今回の出来事は通常一定量の処分が必要なことなんだ。なにせ、緊急時のギルドマスターの命令違反、他の冒険者をパニックに陥らせたドラゴンの件、そして最も大きいのはそのドラゴンがいつ再び暴走するかが分からないという点なんだよ。ここまでは把握できた?」
「まさしくその通りだと思います。またいつヴァルキーが暴走するかは僕にも分かりません。もちろん、自分が判断してやってきたことです。どんな処分でも受け入れる覚悟です。」
僕ははっきりとニオさんに告げた。すると、ニオさんは少し悩むそぶりを見せ、少しして話がまとまったなような表情になってから話し始めた。
「そう…なら処分をと言いたいところなんだけどね。リオ君のこの度の貢献はそれ以外での貢献が大きいんだこれまでの罰則事項と比べると大きいんだ。それが悩みどころなんだよね…このヴァルキーが暴走したということが外に知られたらリオ君はタダでは冒険者をできなくなる。そういった意味でも慎重に決める必要があるんだ。それで、リオ君はどんな処分でも覚悟するといったよね?その言葉に応じて私から一つ今後も活動をしていく条件を提示しようと思うんだ。」
「一体どのような条件で?」
「それは2つ。1つは、暴走しないようにリオ君が責任をもって監視を行うこと。もう1つは、暴走した場合、リオ君が討伐を自らの手で討伐を行うこと。例えその後暴走が収まったとしても。今回は目撃者が私しかいなかったからこうやって秘密にすることができるけど、次暴走したのがトゥーロンだったら?ボスティールだったら?ニュークだったら?そういう大都市の真ん中で暴走されたら今度は庇いきれない。だから、今後ともヴァルキーちゃんと冒険を続けるというならこの条件は飲んでもらわないと、冒険者証を停止せざるを得ない。いいかな?」
僕は少し考えてからはっきりとニオさんに伝えた。
「もちろん、その条件をのませていただきます。今後ともヴァルキーとは冒険したいので」
「そういうと思ったよ。リオ君は1回暴走を止めた経験があるし、そういう点では信頼してるよ。これで今回の件についてのお話は終わりにするね、実はこの後もまた別の件で聞きたいこととか手伝って欲しいことがあって…」
という形でニオさんから様々な話があり、結局2時間ほど話し込んでいた。そして、話しが終わりギルドマスターの部屋を出たタイミングでギルドの医療班の人が応急処置は完了させたということを聞いた。今は治療室の隣にある入院する部屋に寝ているとのこと。僕は、そのことを伝えに来た医療班の人に連れられて、ヴァルキーの眠るベッドまで案内してもらった。すると、ヴァルキーは先ほどの黒く汚れた姿からは一変し、鮮やかな青緑の髪に戻っており、すやすやと眠っている。ヴァルキーはしっかり帰ってきてくれたのだろう。僕は思わず、医療班の人に尋ねた。
「手を触れてもいいですか?」
そう言うと医療班の人と先にその場所にいた医者の人も首を縦に振り、承諾してくれた。そして、眠っているヴァルキーの手を握ると先ほどまでとは全く異なる感触だった。いつも触れる温かい手である。思わず、整理がついていた気持ちが再燃し、再び泣き出してしまった。僕ってこんなに涙もろかったっけ?そう思っても僕は涙が止まらず、医療班の人が背中をさすってくれたのだった。その日は客人宿泊室に戻るまでの間ずっとベッドのそばでただヴァルキーを眺めていた。お医者さんの話によると、運ばれてい来た当初は本当に生死を彷徨っていた状態だったそうで、あと数時間遅かったら助かっていなかったとのこと。運ばれてきた時の状態を一言で表現するとエネルギー枯渇、とのこと。何かしらの原因で体の様々なエネルギーが抜け落ち、生命活動を維持するのも精一杯の状態だったらしい。現在は様々な形でエネルギーの元を取り入れさせたことで、容体は安定し、数日の間に目を覚ますということらしい。僕はその言葉に安心したのか、部屋に戻ると肩の荷が下り、そのままベッドで眠ってしまった。
翌朝、部屋のノックの音と共に、目が覚め、ニオさんが入ってきた。そして、昨日のお話で上がった手伝いに向かうことになった。とはいっても先にヴァルキーの寝るベッドに向かい、一目見てから向かった。昨日ニオさんから頼まれたのは、街道のそばの草原の消火作業、現在も止まっていない溶岩流の調査、この溶岩流に伴う新たな動物の暴走の調査や討伐など多岐に渡る。僕は昨日の約束のこともあり、必死になって活動していた。そして、その日の作業が終わると着替えてから必ずヴァルキーの居るベッドを訪れた。いつ目を覚ましてもいいようにである。一応、毎回お医者さんの許可はもらっている。そしてたまに一緒に暴走した動物の討伐をしていた冒険者がやってきて、僕に励ましの言葉、役に立つ知識などをたくさん伝授してもらった。改めて僕はいろんな人に支えられて生きているのだと感じた。
そのような生活を2日ほど続け、今日はミヒ川を流れる溶岩流のサンプル採取を行い、その液体をボスティール研究所に送ったり、こちらで研究したりするお手伝いをしていた。その日の帰りに、いつも通りベッド向かった。その部屋にはすでに看護師の医療班の人が座っており、衣服の交換や体ふきなどを終わらせたところだった。
「いつもお疲れ様です。そしてありがとうございます。」
「これが私たちの役目ですのでお気になさらず。にしても、早く目が覚めるといいですね、医者の話によるともうそろそろ目が覚める頃なのですが…」
などと話していると、ベッドで微動だにしなかったヴァルキーがピクッ!っと動き出したと思ったらついに目を開けたのだ!僕は思わず叫びそうになったが病室だったので我慢した。そして、その我慢は意味のないものになってしまった。こちらに気が付いたヴァルキーが起きて早々大粒の涙を流して僕を見ていたからである。
「リオ…!!!!!!会いたかったのだ~~~!!!!!!」
どうも、winger86です。いつも本作品をありがとうございます。さて、今回は暴走の責任を取ったリオと、ついに目が覚めるヴァルキーのお話でしたがいかがだったでしょうか?リオ達の行った行動は当然何もないという訳はなく、今後の予防策という観点でも処分がなされました。今後はこのことを背負いながら理鳳は生きていきます。ということで、次回はついにヴァルキーとの絡みが復活します!一体両者どんな反応の示すのか、お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




