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第69話 第3形態

少し前、再びレドヴァルはエネルギーを高めるしぐさを始めた。レドヴァルの身に起こった最初の変化は体の膨張である。やはり小型の形態には大型の形態もつきものだと思う。そんなことを考えていた時、僕はふとバッグの中身を思い出した。実は、処理に使うマッチなどやその他不測の事態に備えた道具を色々積んでいたのだ。そのバッグは先ほど身軽にするために、黒い鱗装備の近くにおいてある。変身の妨害は無理なことが分かったので、変身している間にこちらも回復を行うことにした。僕はバッグの中を漁り、なかからマリースの花の回復薬を取り出し、がぶ飲みした。以前、マリースの花は意図せずボスティールの方で摂取したことがあるが、この薬草はかなりの回復作用があるものである。すると、その効果は時間を置かずに現れ、先ほどまで激痛が走っていた右腕は痛みがすっと引いたほか、筋が繋がり、何不自由なく動かせるようになった。さらに、疲弊していた体力も戻った。むしろ飲む前より力が満ち溢れるほどである。恐るべしマリースの花である。そして、バッグを漁っていた時に不思議な薬草を見つけた。


「これ何だったっけ…?思い出せん…」


中から出てきたのは長さ20cmほどの緑の薬草である。僕はあまり悠長にはしてられないので図鑑はあったものの、何とか頭をひねって思い出そうとした。すると突然、ジルさんが頭に浮かんできた。ブルーフートの時の戦闘を思い出す…その時ある一つの植物を思い出した――


「あっ!ブリデール草だ!でも効用はクエストですら聞かされてなかったはず…」


ブリーデ草は名前の通りアパランティア地方ブリーデにのみ自生している植物である。僕の初クエストだったというのにすっかり忘れていた。このクエストは初めてなのに特殊だったのを覚えている。それは、依頼書にもブリデール草の効用が書かれていないということだ。クエストで採取したときに各自で回収してそこから集めた記憶があるからその時に渡し忘れたのだろう…だが、驚くべきことに、あのクエストを受注したのは今から大体5が月ほど前…普通なら枯れてしまうが、この薬草は枯れずに残っている。何なら、採取したときと同じ姿を保っている。それに気が付いた僕はこのブリデール草の効用を確かめるべく、ブリデール草から何か力を得ようと考えた。試しに、一番根元に近いほうのぱっぱを少しかじってみると、無味ではあるものの、少し酸味がありながらも爽やかな香りが広がる。もはやこれが味と言うべきかもしれない。


「う~ん、あんまりおいしくないね、これもしかしたら天ぷらとかにしたらおいしいかも」


天ぷらにするという発想に至った理由は、自分の地元では緑茶の茶葉をてんぷらにして食べるという文化があったからである。とはいっても、最後に食べたのは十数年前だけどね。そして、さきほどのマリースの花の回復薬のように効果が表れるということもなかった。すぐに効果が出ないという可能性もあるが、そんなことを検証している暇はないので、とりあえず今度はより吸収しやすいように刻んでみることにした。こんな使い方をするものじゃないシリーズ第2弾である。今度はハイドさんからもらった剣を包丁代わりにして近くにあった切り株にブリデール草を置き、前後にスライドさせたり、千切りのようにトントンと叩いてみたりした。すると、ちょっとずつ汁が湧き出てきた。それを1滴なめてみるがやっぱり体に変化はない。この調理(?)の関係でブリデール草の汁が刀身にたっぷりついてしまった。正直取るのも面倒だったので、このまま戦うことにした。

 ここで、レドヴァルの変身について実況していこうと思う。実はこの回復薬の下りからブリデール草までの間何が起きてもいいようにというのと、変化に途轍もない興味があったので、チラ見しながら作業を行っていた。最初の変化である巨大化の際、ヴァルキーが元々来ていた1枚布のポンチョ・ワンピースはその体の肥大化に耐えきれず破けてしまった。思わず――


「ちょっ!これ戦闘終わったどうするんだ…!」


と呟いてしまった。まあ現段階ではこの魔法の解除方法が見つかっていない以上、僕がここで生命活動を終えてしまう可能性すらあるわけで、そこはあまり深く考えずに行こう。そして、肥大化する中で、背中からは巨大な二枚の翼が生え始めた。僕は、あっちの世界のアニメで存在する羽が生えるシーンはやはり細胞が気になってしまうのと、生えた瞬間に切り落としたくなってしまう。それを実現しようとしたが、まだこの時は回復薬の効果が発動している最中でまだ動けなかったため、不可能であった。また別の機会にそのモンスターで発生したらやることにしよう。そして、人型の時の直立二足歩行から前のめりの姿勢に変化し、口は伸びていき、最終的にレットドラゴンそのものになってしまった。その間大体3分ほどである。やはり、ここまで細胞分裂するのには時間がかかるようだ。傷も先ほど体の真ん中を切りつけたもの以外全回復していた。さすが中級技最高峰の威力を誇るだけある。そして、変身を終えたら行う約束事と言えば――


ゴオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーー!!!!!!!


その声は正真正銘の龍の咆哮である。僕はそれに全く動じることなく、全回復した状態で立ち向かうことになった。レドヴァルは一羽ばたきで20mほど上空に上がり、そこから思いっきり炎ブレスを放ってきた。


ガアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!


もちろん、自身の装備や道具がダメにならないように誘導しながらブレスを避けた。先ほどの人型でのブレスよりも温度が上がっているのを肌で感じた。悪いことに、ここは周りに草木しかないため、ブレスによって周りの草木にまで引火し始めたのだ。僕は一旦この場所を離れ、草木が少ない場所まで走って逃げた。その間、レドヴァルは様々な攻撃を仕掛けてきたことで、大まかな行動パターンがつかめた。そのパターンは、ブレス→エアスラッシュみたいな攻撃→巨体での降下しながら体当たり→上昇してブレスである。僕にチャンスがあるとすれば、体当たりの時である。これは水龍のヴァルキーの時の戦い方とほぼ同じである。僕は持ち物が被害を受けないように離れた場所に置き、再びレドヴァルと対峙した。やはり行動パターンは変化せず、体当たりの時に合わせてここで初めての上級技である回転しながらの突進攻撃を繰り出した。もちろん、あの時と同じようにレドヴァルとの距離が大きくなるまでの間、永遠と切り刻み続けた。すると――


ゴアアアーーーー!!!!


レドヴァルは悲鳴に近い声を上げた。そして、切り刻んだ場所からは何やら村紗kに怪しく光ったもやが現れていた。そういえば、先ほどまではこんなものは出ていなかった。しかし、先ほどブリデール草の汁を付けっぱなしでいたのを思い出し、僕は一つの仮説を立てた。ブリデール草の汁はこの現象の解除に効果があると。僕はそれを信じるしか勝ち筋が無かったので、それに賭けて攻撃を続けることにした。そして、先ほどの攻撃ではあまりダメージが入っているような感覚がなかった。恐らく、スピードの不足である。そこで、よけるときの移動エネルギーを蓄え、体当たりが来るとわかったタイミングで中級の突き技の踏み込みを使い、さらに加速してレドヴァルが降下してきた時に合わせて回転切りを構え、全身の力を込めて斬撃を加えた。すると、今度は以前の戦いよりも深い傷が入り、龍の体からは紫色の靄と、赤~黒の血液が出てきていた。赤色の方は光を放っているが、黒の方は冷え固まった溶岩のような見た目をしていた。効いてきているようだ。僕は戦いの中で見つけたこの一筋の光を頼りに、戦いを続けるのだった。

どうもwinger86です。いつも本作品を最後までご覧いただきありがとうございます。さて、今回は再びヴァルキーが変身してしまい、それと対峙するお話でしたがいかがだったでしょうか?とうとうレッドドラゴンのヴァルキーは本当にレッドドラゴンへと変貌してしまいました。しかし、何かの偶然が重なり、理鳳は解決策らしき方法を見つけ出し始めていますね。果たして、理鳳は無事ヴァルキーを救い出すことができるのでしょうか?お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。

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