第69話 第2形態
とうとうヴァルキーは姿を変え、レッドドラゴンのような姿に変わってしまった。その衝撃で忘れていたが、ヴァルキーもといレッドドラゴンは元の体から容姿を変化させている。そのため、遅れて細胞がどうなっているかに興味が湧いてきてしまった。そんなこととふと考えていると、再びレットドラゴン先攻で攻撃を仕掛けてきた。すると先ほどまでとは比べ物にならないほどのスピードに変化しており、その不意打ちに反応が遅れ、僕はレットドラゴンヴァルキーの引っ掻きを食らってしまった。幸い、もろに食らったわけではないが、それでも刀身に二か所と右腕、ひじ辺り、二の腕にひっかき傷を食らってしまった。そして、その時に当たり所が悪く、ひじ辺りにあった筋が切れたようなプツンという音が聞こえた。その直後、僕の右腕には激痛が走り、右腕が自由に動かせなくなってしまった。
「マジか…痛え…そして速い…ちょっととりあえず体制整えるまで逃げ回んないとだな…」
とにかく相手の動きに慣れなければ攻撃を避けることも当てることもできないので、動き回ることにした。すると再び超高速攻撃を仕掛けてきた。やっぱり動きが見えなかったので、僕は見えなくなった瞬間に回転切りを応用させ、斬撃を全方向に飛ばした。すると、やってきている方向のみ斬撃が無くなったのでそこに向けて最速の中級技である突きを放った。
グサッ…!
――グハッ…!ガッ……グウウウ…!――
爪があと一歩で当たるところで刃が体に突き刺さり、二発目のヒットを避けることに成功した。そして刺さった場所からはオレンジ色に光る血が流れ落ちていた。やはり体の中から何か異変が生じている様子である。しかし、片腕のみのフェンシング状態だったため、あまり力が入らず、レッドドラゴンヴァルキーが後ずさりするとあっという間に抜けてしまった。僕はまた傷が回復するのかと思ったが回復せず、先ほどの回復はこちらのダメージ量より変化のエネルギーの方が大きかったことが影響しているようだ。レドヴァルは、僕をけん制するのと怒りをぶつけるのとで咆哮してきた。
ガアアアアアアアアアーーーー!
何度聞いてもとんでもない大きさの声量である。するとレドヴァルは息を思いっきり吸い込みだした。この動作をする攻撃と言えば…僕はすぐに察して激痛に耐えながら両腕で剣を握り、中級突進縦切りをお見舞いした。するとわずかに遅かったらしく、僕が振りかざす直前で炎ブレスを放ってきた。それでも振りかざすのをやめず、なんとかブレスを切断しながら縦切りを当てることに成功した。レドヴァルの体には頭から腹部にかけて中央に深さ5cmほどの切り傷が入り、ようやく攻撃が止まった。僕はそれでも攻撃を止めず、初級の連続切りで一気に畳みかけることにした。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
攻撃を入れるたびに、レドヴァルは苦しそうな声を上げる。正直心が痛むが今は我慢の時である。僕は無心で攻撃を続けた。そうして攻撃を終えた頃にはかなり切り傷が入っておりオレンジ色に光る血液も大量に流れ出ていた。普通ならここで戦闘不能になるが、僕はこれで動きが止まると思っていなかった。そう、ここまで攻撃を続けて感じたのはその手ごたえの無さである。一応切った時の感触はあるものの、いくら攻撃を繰り返しても切断するように攻撃が入らない。いくら僕の片腕が使えないと言ってもここまでの攻撃がすべて切断に至らないのは不審な話である。僕はこの疑問を究明するために、危機的な状況とはいえ、実験することにした。それは、切られても影響がない場所を切断することである。ということで、僕は変身の時に伸びた角を上級の回転突進切り1回で切断するように太刀を入れてみた。すると…
スパンッ!
という音と共に切断された音がしたが、驚くべきことに、その角から飛び出した光る血液がグチュグチュ音を立てながらその二つを繋いだのである。そしてすぐに二つをくっつけて、切り傷のような状態にしてしまった。この血液の正体は暴走を引き起こすだけでなく、体同士の接着剤の役割も果たしているようだ。そうこうしている間に怯んでいたレドヴァルが再び行動を始めた。これまででかなりのダメージを与えたことで、先ほどの超高速移動は無くなったが、依然として動くスピードは速い。しかし、目で追えるようになったことで対処がしやすくなった。僕はしっかりレドヴァルの動きを目で追い、しっかり攻めてきたタイミングでしっかりカウンターを当てて、少しずつダメージを蓄積させていった。そこから数分間の膠着状態の末、再びレドヴァルは先ほどの変身と同様のポージングになり、エネルギーを増加させていった。すると、というかやはり、先ほどのまでの傷は全て完治し、再びレドヴァルの体には変化が訪れ始めた。
*
私――ニオはリオ君とヴァルキーちゃんの二人の報告を受けて、こちらの死骸作業の進捗も含めた指示を二人に出そうとしたが、リオ君が――
「橋の方で奇妙な音がするので調査してきます」
といって焦った様子で戻ってしまった。通常ならこういう時は引き留めて話を聞いてもらうところだが、普段割と冷静なリオ君と敵意むき出しのヴァルキーちゃんが珍しく大人しかったのもあり、無理に引き留めることはしなかった。とはいえ、2人だけで単独行動されてしまうとこちらとしても人員把握が大変になってしまうので、ある程度こちらの作業が片付いてから私も橋の方に向かうことを決めた。そうとなればこっちでゆっくり作業しているわけにもいかない。しかし、焦らせるわけにもいかなかったので、何とか焦る気持ちを抑えながら、他の冒険者に指示を出し、自身も黙々と作業をこなしていた。
そうして、20分が経とうとし、やっと死骸の処分が大方終わろうとしたその時である。一人の冒険者が何かに驚いた表情をしていた。そして、彼はこう言った――
「ギルドマスター!あそこに赤色の飛ぶトカゲのようなモンスターがいます!」
彼はそのいる方向に指をさし、私もその方向に目をやると、本当にそこ言葉の通り、赤色の空飛ぶトカゲのモンスターがいた。それに気がついた他の冒険者の中にはパニックに陥るものもいた。そこで私は――
「冒険者の皆さん!落ち着いて!あれは私が様子を見てくるから!皆さんはここの死骸処理の最終確認が終わり次第、安全に気を付けながらギルドの方へ戻ってギルドで待機をして!」
そう指示を出すと、みんなある程度平常を取り戻し、再び作業を始めた。こんなに怖い思いをしながら作業してもらうのに申し訳なく感じたが、それも冒険者の役目。みんなには少しの間耐えてもらうことにする。そうして、私は全速力でそのモンスターがいる方向へ向かった。その方向は橋のある方向からは少しずれており、橋の咆哮を12時とすると、そのモンスターは大体2時の方向にいる。だが、その方向にはミヒ川を渡る橋が掛けられていないため、まずはこの道をまっすぐ行ったところにあるセントラル・セントルビー橋を目指すことにした。私は冒険者時代を思い出すかのような全速力で向かった。リオ君は大丈夫なのだろうかという不安が頭をよぎる。そして、橋に近づくにつれ、何やら聞いたことのない音がした。
ポコッポコツ、パチパチ、ゴボゴボ…、ゴーーーーー
何かが流れたり弾けたりするような音である。そして橋が目の前に差し掛かったあたりで、急に周りの温度が上昇し始めた。さすがにこれはおかしいと思った私だが、そんなことを気にしていられなかったので、無視しようとした。しかし、橋の上に差し掛かった時私はそんなことと思ってしまった私を責めることとなった。
「何なの?これ…?」
ミヒ川を流れていたのは清流ではなく、熱を発する赤い謎の流体だった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はレッドドラゴンヴァルキー、略してレドヴァルが第二形態へと変身し、リオと戦うお話でしたがいかがだったでしょうか?ロールプレイングゲームに出てきそうなモンスターと言えば、やっぱり複数段階の変身が特徴ですよね。今回は例のボールのお話とそういうゲーム要素を少し意識しながらお話を作成しました。ということで、次回は理鳳とヴァルキーのタイマンに大きな局面が訪れます。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




