第66話 ついに現る…
ニオさんが急に僕たちの部屋に入ってきてから数分、僕とニオさんの物理的距離はとんでもなく近づいていた…暗かったから薄着っぽいということしか分からなかったが、暗闇に僕の目が慣れてくるとその姿が目に入ってきた。顔だちは整っており、目は欧米人並みに大きい気がする。それでいて、毎日手入れに時間をかけていそうな長い黒髪を後ろで結ばすそのままおろしている。今日のお昼見たときと同じである。総評としてはあっちの世界の有名女優さんの誰かに近いといった印象である。ここで誰かに似ていると言うと僕の好みがミスリードされかねないのでここでは差し控えさせてもらう。
「さあ、もういいよね?」
ニオさんは僕の唇に自身の唇を近づけてきた。もちろん、黙って受け入れることはなく――僕はニオさんの肩を持ち、そのままニオさんを押し倒した。
「あら、意外と積極的なんだね、私そういうのも好き」
やはりこういう場面でこの行動をとると当然この反応になるだろう。だが、僕はここから黙ってベットから起き上がり、ニオさんをお姫様抱っこで持ち上げた。
「やっぱりヴァルキーちゃんの近くでやるのは気が引ける?私は気にしなんだけどな~でもリオ君がそうしたいというなら…いいよギルドマスター室でしようか、あそこは私用のベッドも置かれてるし…」
僕は据え膳を無視し、そのまま部屋を飛びだし、僕はそこに丁寧に置いた。そして、すぐに室内に入り、ドアを閉めて僕の銘入りの黒剣をうまいこと引っかかるように置き、鍵を閉めた。ごめんなさい、鍛冶屋さん…まさか剣をこんな使い方をするなんて…すると、しっかり思惑通りニオさんは鍵を開けた。だが、その扉が開くことはなく、ドアノブを回し、ドアをガチャガチャと動かしている。
「え?何で開かないの?リオ君内側から何かした?」
僕はこれだけ発した。
「はい、剣を引っ掛けました。僕はあなたと一夜を共に過ごすことも男女の関係になることもありません。万が一人口が増えることになったら僕の冒険の妨げになるのでお断りさせていただきます。一応念押ししておきますけど、冒険が終わってもあなたとの跡継ぎは作りません。ご理解ください。」
するとニオさんからこんな質問が飛んできた
「ちなみに、リオ君はいくつ?」
質問に答えないのはさすがに失礼と思った僕は
「19です」
とだけ答え眠りについた。その後、ニオさんは抵抗するわけでもなく物音立てずに立ち去ったようだ。
翌朝、ヴァルキーはいい目覚めだったのか、元気よく僕を起こしてきた。
「リオ~!おはよう~!なんか今日いい夢見たのだ!」
「へえ~どんな夢?」
「我以外のリオを狙うライバルが全員去っていった夢なのだ!我がリオを独占できて幸せだったのだ~ということで、リオ、我だけのものになるのだ、我の夢を正夢にしてほしいのだ、な?」
ヴァルキーから圧を感じる。勘弁してほしい、昨日の夜も一人に襲われかけたのだから…などと思っていると
「すんっ、すんっ、ん!なんかリオからいつもと違う匂いするのだ!」
「え?僕って匂いするの?」
「好きな人の匂いなんて当然覚えるのだ!」
僕は何度か人を好きになったことはあるものの、匂いまでは分かったことがない。
「で?この匂いは何なのだ?」
「ヴァルキーあなたの予感の通りニオさん僕のこと狙ってた…で、昨日の夜ヴァルキーが寝ている間に襲われた。ちなみに追い返した。その証拠としてあの剣。」
と言って扉に立て掛けられている剣を指さした。
「ふ~ん、ちゃんと変なことはしてないのだな~?」
「もちろん、するわけない」
「なら安心したのだ~にしてもやっぱりもうちょって牽制掛けとくべきだったのだ…もうあいつの好きにはさせないのだ…!」
ヴァルキーからニオさんに対するとんでもない殺気を感じる。ごめんなさい、ニオさん…というか昨日の今日で気まずくないか心配だ…そんな心配をしながら、僕たちは朝食が出されていると推測される食堂に向かうため、身支度をし、剣を取り外してから部屋の外に向かった。食堂に向かうと、ニオさんの姿はなく、すでに今日の任務に向かっているとのこと。鉢合わせのリスクがこれで回避できたのは助かった。ひとまずは朝食をいただくことにした。今朝もしっかりバイキング形式の朝食で、これはほぼあっちの世界のホテルと同じである。僕は昨日のようにたくさん取り過ぎないように気を付けながら、自身の皿に取り分けた。ヴァルキーは昨日とんでもない量を平らげたのに今朝もそれと同等の量を食べていた。龍は割と燃費が悪いのかもしれない。その後、食事を終え、部屋に戻るとそこまで時間もかからずニオさんがドアをノックしてきた。
「リオ君、入ってもいいかい?」
「平気ですよ~」
「失礼するね、寝心地はどうだったかい?」
「文句なしの…」
寝心地でした。と言おうとしたところでヴァルキーが割って入ってきた。
「ニオ!お前昨日の夜リオを誘惑したらしいのだな!我の許可も得ずイチャイチャしようとしたとは…ちょっとリオ、こいつやっちゃってもいいよね?我ちょっと本当に許せないのだ、我でさえガードめっちゃ硬いのに…」
「へえ~あなたもリオ君のこと狙ってたんだね~ならライバルだ、そうだよ、私は昨日部屋に入ってリオ君をもらおうとしたよ。結果は惨敗だったけどね。でもリオ君、私諦めてないから、リオ君に言い伴侶と思ってもらえるまでアタックするつもりだし、もう気持ちもバレちゃたからこの際全力で行かせてもらうね」
ニオさんは諦めが悪い人のようだ。昨日の夜、割と言い過ぎたかと気にしてたのに…ヴァルキーはそれに対して文字通りガルガルしていた。犬ですかあなたは?さすがに脱線しそうだったので僕は戻すことにした。
「ちょっと、二人ともストップ!で、本題は何ですか?ニオさん」
「これが本題なのにな~それは置いといて、昨日の事件で今セントルビー中に動物の死骸が転がってるんだよね。それを回収、処分するのを手伝って欲しい。もちろん、他の冒険者にも手伝ってもらってるよ。あとついでに逃げ遅れた人やまだ探索しきっていない暴走した動物なども探してもらえると助かる、お願いできるかな?」
「分かりました、お手伝いします。場所は昨日のあたりですか?」
「それは私たちの方でやっておくから、君たちは昨日ヴァイゾを討伐した場所まで向かってもらおうっかな、それでいい?」
「了解しました。ヴァルキーも手伝ってくれる?」
そういうと、ヴァルキーは不機嫌ながらも国利と頷いてくれた。そして、ニオさんに対して
「これは、お前のためじゃなくてリオにお願いされたからやるのだぞ!勘違いしないで欲しいのだ」
「もちろん、分かってるよ。じゃあリオ君たちお願いするね」
これは基本である。なにせ、死体を放置すると感染症が広がりかねないからである。ということで、僕たちは冒険の服に着替えて早速昨日の場所に向かった。その場所はセントルビーの東西を結ぶ橋の近くである。そこに昨日ぶりに向かうと、そこにはハエが集ったヴァイゾの死体でまみれていた。本当にこのまま放置するとパンデミックまっしぐらである。ちなみに、処分方法は火葬である。実はこの世界、マッチのような火をつける道具があり、それを1箱もらった。僕たちはなるべく死体には触らないように上級の斬撃飛ばしやヴァルキーのパンチの時に出る衝撃波を弱くして使い、一か所に集めた。これで一気に燃やそうという作戦である。ちなみに、他の建物に燃え移りそうになったらヴァルキーの魔法を使うつもりである。こうして、他の建物に燃え移ることもなく順調に燃え終わり、処理が完了した。
そのままニオさんの方へ報告しに行こうとしたその時である。ヴァルキーが何かを感じ取った様子だった。
「リオ、なんか聞こえる気がするのだが…?」
と言われたので耳を澄ませてみると…
ポコッポコッ、ザーーー、カシャカシャ、グツッ、グツッ
というような奇妙な音がかすかに聞こえており、ヴァルキーの言う通りだった。とりあえず、原因究明は後にして一旦ニオさんに報告してからにしよう。そう思って僕たちは走ってニオさんの方に向かい、報告をした。その後あの奇妙な音のしていた橋の所に向かうと先ほどの音は数段と大きくなっており、何かが来る感じがした。その直後、この音のする方向が分かった。それは川の上流である。
「リオ、川の上流から何か来るのだ…!」
リオもそれに感づいたらしく、戦闘体制に入っている。そして、音の大きさはピークに達するとなんと上流から現れたのは――
「え…?何でこんなところに来てるんだよ…?」
それは真っ赤な溶岩流だった…
どうも、winger86です。いつも本作品をお読みいただきありがとうございます。さて、今回はニオさんの戦闘と、新たなトラブルの幕開けでしたがいかがだったでしょうか?見事にニオさんからの猛攻を乗り切った理鳳は翌日、そこまで気まずくなることもなくニオさんと接していましたね。そして、再びセントルビーでトラブルが発生してしまいました。一体リオ達はこれに対してどのように立ち向かうのでしょうか?お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




