第64話 第2回戦
僕たちは持ち歩いていた替えの服に着替え、すこしゆっくりすることにした。応接室についていた窓からはミヒ川が見えた。こんな時でも透明度が衰えないミヒ川には驚かされる。
「にしても、我たちこんなにゆっくりしていていいのか?」
「今しっかりゆっくりしてこの後思いっきりまた戦おう!今は休むとき」
「それもそうなのだ、じゃあ頭撫でて~なのだ~」
ヴァルキーはここぞとばかりに甘えん坊になった。こうして頭をわしゃわしゃしているときは自分も癒されるから全然良し。そんなこんなで1時間ほどゆっくりした後、応接室がノックされた。
「リオ君は居るかな?」
「は~い、いますよ~」
「それでは失礼するね」
といってやはり血で汚れたニオさんが入ってきた。
「休憩中申し訳ないのだが、少し人手が足りなくなったんだよ。すこし手を貸してくれると助かるな」
と、救援要請があったので僕とヴァルキーは目を合わせて
「ええ、ちょうど休憩が終わったところですし、行けますよ。それでどこに向かえばいいですか?」
「話が早くて助かる。それで、先ほど前線と言っていた場所は分かるよね?」
「そこが何かあったんですか?」
「実はヴァイゾの数は大幅に減少したんだが、別の動物やモンスターが次々とこちらにおしよせてきてるんだよ。さらには大型のモンスターまで現れ始めたから今の人数だと手に追いきれなくなっているんだ。君たちにはその討伐をお願いしたい。引き受けてくれるかな?」
「大丈夫ですよ、ヴァルキーも平気だよね?」
「もちろんなのだ!」
「現場には私も同行する。それでは早速向かおうか」
と言って先ほど向かった場所にとんぼ返りをした。その場所についてみると、先ほどとは状況が大幅に異なることが分かった。ニオさんの言う通り、大型の動物、モンスターが増えており、先ほどよりもずっと劣勢になっているように見受けられた。見たところ、前にボスティール南部の方で見た大型のクマモンスターが2体、ブルーフートが4体、羊っぽいやつが10頭、イノシシみたいなのが20頭という感じになっていた。奇妙なことに、この動物たちは全て目が赤色に染まっており、先ほどのヴァイゾと同じような雰囲気をしていた。
「私はまずイノシシに囲まれているあの2人の冒険者を救出しに行く!君たちはそれ以外の冒険者の援護、救出をお願いする!」
「了解です!」
といってニオさん1人と僕たち2人で別れて討伐を始めた。僕は真っ先に近くにいたブルーフートの群れを初級の横切りで仕留めた。同時にヴァルキーの方も腕に装備していた武器で殴って倒していた。にしても、ジルさんが苦戦していたブルーフートをこんなに簡単に討伐できるようになったのは改めて感慨深さを感じる。それはさておき、まだまだモンスターたちで溢れかえってるので、次々と倒していった。わずか一分の間に僕たちでブルールート4体と羊8頭を片付けることに成功した。残りはクマとその後方にいる羊2頭である。クマは僕とヴァルキーがそれぞれ一体ずつ対峙することにした。
「ヴァルキー!そっちのクマお願い!」
「オッケーなのだ!」
とりあえずこれでこの目の前のクマに集中できる。ということで、試しにクマに対して初級の横切り技を打ち込んでみた。すると、皮膚が硬く全く刃が通らない。威力が足りないのだ。そこでこれまで体力温存のために使っていなかった、中級と上級、そしてク守も混ぜながら戦うことにした。まずは、あいさつ代わりに中級の突進縦切りをお見舞いすることにした。しかし、タイミングよく相手も自身の持つ爪を武器に攻撃を仕掛けてきたので、何とか躱しながら技を発動させたため、きれいに刃が入らず、腕を一本傷つけるだけとなってしまった。それでもクマは痛みにもだえている様子だった。
グアアアアァァァ~~~!!!!!
もちろん、クマは怒り出し、叫び声を出してクマは反撃のために連続引っ掻きをしてきた。僕はそれを他の冒険者がいない場所に誘導するように移動し、技を放ちすぎて疲れているタイミングでク守オリジナル技の軽い振り下ろしを繰り出した。今度はきれいに技を発動できたので、太刀筋が胴体の真ん中に入った。それでも、真っ二つにはならず、深く刃が入っただけとなった。それでもクマにとっては致命傷だったらしく、すぐに動きを止めた。とちょうど同じタイミングでヴァルキーがタコ殴りでクマを仕留めていた。ついでに、後ろにいた羊2頭もすぐに頭を切りつけて討伐した。
「リオ~!倒したのだ~!」
「結構人戦闘スタイルも身に染みてきたんじゃない~?」
「そうかもしれないのだ!それでこっちの方に倒れている人が2人ぐらいいるのだが、これはどうしたらいいのだ~?」
「分かった~今そっち向かう~」
と救助者がいたのでそちらに向かおうとしたが、こちらにも冒険者がいたので少し話すことにした。人数は3人で全員の体に引っかかれた傷や突進のときに受けた打撲による内出血が至る所に見られた。
「大丈夫でしたか?今体動かせますか?」
「まあ何とかギルドまでは歩いて行けそうです…助けてくださりありがとうございました…」
「同じ冒険者ですから、お互い様ですよ、ここまで持ちこたえてくださりありがとうございました!あっと、それであちらの方に倒れている人がいるらしいので申し訳ないのです先にギルドに戻ってもらうってことは出来ますか?救助者を連れてきたら合流しますので」
「分かりました…それじゃあ先に向かわせてもらいます…お気をつけて…」
「すぐに追いつきます!」
そうしてこっちの冒険者には自分たちで一旦戻ってもらうことにした。そして、ヴァルキーのいた所に向かうとそこまで出血量は多くないものの、気を失っている人がいた。僕とヴァルキーはそれぞれ一人ずつ担いで先にギルドに向かった冒険者に合流した。それとほぼ同時にニオさんの方も救助を終えて複数の冒険者を束ねてこちらにやってくるのが見えた。
「君たち、もしかしてあの量のモンスターを相手取って倒し切ったのかい?噂には聞いていたが、ここまでとは…この度は本当に感謝している。君たちだけで大勢の命が救われたんだよ。これは報酬もきっちり支払わないとね」
「冒険者たるものこれくらい当然ですよ、でも気持ちの分だけお支払いしたいというのならそれはしっかり受け止めされていただきます。」
「そうしてくれると助かるよ」
ということでセントルビーに襲い掛かってきたモンスターたちの事件はこれにて一件落着となった。その後ギルドの到着し、複数の冒険者を運んでくるとギルド内から大きな拍手が上がった。
「ありがとう~!!」
「お兄さんたちが助けてくれなきゃ俺たち生きていたかどうか分からなかったよ~!」
「そっちの緑髪のお嬢ちゃんも見かけによらず強いんだね!かっこよかったよ!」
ヴァルキーも一緒に褒められた影響か照れくさそうなしぐさをしていた。そのまま僕たちは拍手を送る冒険者を横目に、ギルドマスターの部屋の隣、応接室に入った。
「やっと終わった~でもヴァイゾよりは大変じゃなかったかもあっちは限がなかったから…」
「我もそれに賛成するのだ~とりあえず今日はこれで休めそうなのだ」
「そうだね、と言いたいところだけどここにベッドないんだよね、さすがに応接室だとあるわけないよな…」
「その心配ならいらない」
突然話しかけてきたのはニオさんだった。
「あれいつの間に?で、寝る場所はどこにあるんですか?」
「実はこの隣の部屋、この応接室に来た人が長期滞在とかになった時に使えるようになっている客人宿泊室になんだ」
「なるほどです。そこ使わせてもらえるということですか?」
「そう、そういうこと、だから今日の寝床は心配しなくていいから」
「何から何までありがとうございます」
お礼を言うとニオさんは初めてにこやか表情をしていた。しかし――
「あの女、今リオに惚れた匂いがしたのだ…」
と小声でニオさんを警戒し、少し不機嫌になるヴァルキーがいたのであった。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はセントルビーでの事件を解決するお話でしたがいかがだったでしょうか?今回の事件では最初期に理鳳が襲われたブルーフートをたった一人で討伐していましたね。それだけ理鳳は成長していたのが分かりますね。ということで次回は、今回の勝利を祝うお話がメインとなります。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。
メモ
クマ→正式名称:ヒュージ・ビア
アパランティア地方からプレール地方の森林に生息する大型の四足歩行の肉食動物。その大きさは最大で10mに達する個体も確認されている。理鳳がカボンド岩の採取の時に遭遇したのはこの動物である。特徴は厚い体毛とその奥にある分厚い皮膚である。この皮膚は波の冒険者では切り口を入れることができない。性格は獰猛であり、満腹時を除いてはどの動物でも襲ってくる。冬場は木の実を食べる草食動物になる。冬眠はしない。
羊→正式名称:ジムリック
グレーとプレールの東部からアパランティアまでの森林に幅広く生息する中型の四足歩行の草食動物。平均的な大きさは成獣で高さ1.5m、体長は1mほどになる。性格は基本温厚であるが、気分を害するようなことをすると狂暴になる。一部の地域では体に生えている毛を刈り取り、洋服にしている地域もある。




