第62話 おや?みんなの様子が…?
翌朝、僕たちは宿の人が出してくれた朝食をいただいた。その際にパン、ハム、スクランブルエッグ、チキンスープの他に、ミヒ川の水も出された。ということで早速その水をいただくと――
「リオ!この水おいしいのだ!」
「本当においしいね、なんか飲みやすい」
とこの水に感動しているとこの宿を運営しているおばさんが話しかけてきた。
「そうだろう?ここの水はゴルドナ位置なのさ!ここの水の特徴は何といってもその上流からの栄養を節妙なバランスで吸収して流していることによるこの清らかな飲み心地なんだよ~?」
「へ、へえ~そうなんですね~」
僕はその距離間の近さに少し困惑してしまった。でもかなり気さくでいい人なのはなんとなく感じた。
「ここの水はタダだからいくらでもお代わりしな!あとパンとかも欲しければどんどん持ってくるから遠慮なく食べるんだよ?」
「ありがとうございます…」
「おばさん!水お代わり!」
ヴァルキーはすでに一杯を飲み干しており、相当この水が気に入ったようだ。やはり水龍はそれだけ水にもこだわりがあるのだろうと思った。そして、僕たちは食事を終えついに、ミヒ川を見に行くことにした。今日の天気は快晴だが、夏ということもあり若干暑く感じた。それでも湿気がないのであっちの世界の日本よりはずっとましである。
「そういえば、今って夏だったねちょっと暑いかも」
「我も今初めて暑さを感じたのだ、我の住む地域はこの時期でもそこまで気温が上がらないから暑さを体感したことが無かったのだ…」
「ずっとあの遺跡の中と湖の中に居たらそりゃ涼しいよね」
「なんかこの暑さに余裕そうに見えるが…」
「まあ言うほどそんなに暑くないかも。まだ耐えられる感じ」
「我はもう限界迎えそうなのだ~」
ヴァルキーは今にも溶けだしそうな感じである。ということでミヒ川を見れる畔で日陰の場所を探し、そこでミヒ川を眺めることにした。
「この川、我が住んでいた湖よりも水がきれいかもしれないのだ!我ここで水浴びしたいのだ!」
「服どうするのさ」
「あ、思わず脱ごうとしてしまったのだ…」
行動には表れていなかったが、早めに止めておかなければ周りの人の醜態をさらすことになり兼ねかなったということか…危ない危ない。それにしても、このミヒ川の水はあまりに透明度が高い。その高さは川の底が遠くまではっきり見えるほどである。周りを見渡すと、夏ということもあり、水着を着て川遊びをしている人たちがいた。どうやらこの世界にも水着というものの概念は存在するようで安心した。などと考えていると、ヴァルキーが――
「あの人たち、なんか着て水浴びしているのだ…あれ何なのだ?あの服は濡れないのか?」
「あれ水着っていうんだよ、こういうお風呂以外での水浴びの時に他の人に裸見せないようにするための洋服とでも思ってもらえればいいかな」
「ということはあれを切れば我もここで水浴びできるのだな!?買いに行きたいのだ!」
「ああ、そうするかな、じゃあ水着探しに行こう」
「やった~!嬉しいのだ~!」
ヴァルキーは子供のように大はしゃぎしていた。なんだか子供に欲しいものをねだられ、買いに行く気持ちが分かった気がする。僕はなぜ水着を買うことに決めたのかというと、この先向かう南のオリアンズは河口がある、つまり海があるということである。だから今の内から水着を買っておくたほうがいいかもしれないと考えたからである。一旦ミヒ川を離れ、僕たちはセントルビーの水着を売るお店を探した。すると、半分以上のアパレルショップで期間限定と称して水着が販売されており、ヴァルキーは全て見てから決めたいと言いだした。このままでは泳ぐのは日が暮れるギリギリになるなと僕は思った。
その予想とは裏腹に、ヴァルキーは水着を即決した。ちなみに2店舗目で。その決め手は僕がふと口にした小声での『めっちゃ可愛い』だというらしい。龍も地獄耳だったのを忘れていた。今度からは心の声はあまり発さないように気を配る必要がありそうだ。今回はいい方向に向いたから良かったものの、いつか失礼なことを言いかねないからである。その後ヴァルキーは僕の着る水着まで選んでくれたのだった。そうして買った水着を持って再びミヒ川の遊泳区域に向かった。すると、先ほどよりも人が増えており、この川での遊泳はかなり人気のアクティビティになっているようだ。ということで先に宿に戻り、それぞれ水着に着替えてから向かった。しかし、同時ではなくヴァルキーからの要望により先に僕だけ場所を確保することとなった。その後数分するとヴァルキーが水着を着てやってきた。
「リオ、この水着似合うか…?」
ヴァルキーは少し顔を赤らめ、照れた様子で僕に感想を求めてきた。ヴァルキーの選んだ水着は、青色の髪と目と組み合わせが個人的にいいと思っている白色を基調としたものであり、ビキニでスカート部分にのみフリルがついていて、いわゆるフリルスカートと呼ばれるタイプだった。
「うん、さっきのお店で合わせてた時にも思ったけどそういう感じがヴァルキーは似合うんだね、大胆過ぎないというかなんというか…あ、もちろん可愛いよ」
「っ…!ありがとうなのだ!リオって大胆な水着好きじゃないのだなあのお店にも割と布面積小さいのあったのに~覚えておこう…」
こうして僕の好みが少しバレてしまったようだ。その後僕は水ではしゃいでいる美少女を見て絵になるな~と眺めていたが、ヴァルキーに水をかけられてしまった。
「何ぼぉーっとしているのだ!ほらほら、我がどんどん水掛けちゃうぞ?」
「そっちがその気ならこっちも!」
僕はやり返しにヴァルキーに水をかけ返していた。この絵面を客観視したとき、僕は高校生時代に取り逃した青春を今取り戻していることをはっきりと自覚した。その瞬間、僕の目には大粒の涙が現れていたようだ
「えっ!?リオ?何で泣いてるのだ?そんなに水掛けられるの嫌だったのか…?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと昔こういう水辺で異性とはしゃいだことなかったから感動してつい…」
「ということは我との水浴びがそんなに嬉しかったのか~?ふ~ん?我が初めてね~ふっふっふ…」
ヴァルキーは自分が初めてというのを聞いて不審な笑みを浮かべた。その後もしばらく二人で水浴びを楽しんでいた。しかし――
「うわあーーー!!!!」
「逃げろ~~!!!!」
「モンスターの大群だ~~~!!!」
「きゃ~~~!!!!」
という人々パニックになる声が聞こえた。僕たちは急いでその声が聞こえた町の方まで歩いて行った。僕たちの居た水浴び場は町の道路から階段を下った場所にあったのでその全容を把握できていなかったが、いざ上に上ると逃げ惑う人で道がいっぱいになっており、相当パニックに陥っている。
「みんなどうしたのだ?どうしてみんな逃げてるのだ?」
「さっき聞いた感じだとモンスターの大群だとか聞いたよ」
「なら我たちの出番なのだ!」
「と、言いたいところなんだけど一旦着替えようか」
「あ、我たち装備なんも付けてなかったのだ…」
僕たちは人込みをかき分けながら宿に戻り、戦闘態勢を整えてから再び出ると、川の上流の方角から昨日食べたヴァイゾが大量にこちらに向かって走ってきているのが確認できた。ほとんどの個体が目を真っ赤にして走ってきている。なにやら様子がおかしいのは事実だろう。本来のヴァイゾの目は白い目に黒色の虹彩がある動物だ。一体何があったのだろうか…そんな警戒をして暴走したヴァイゾに向かう僕たちなのであった。
どうも、winger86です。今回も読んでいただきありがとうございます。さて、今回はセントルビーでの散策がメインのお話でしたがいかがだったでしょうか。物語の終盤、突如としてヴァイゾの大群が押し寄せてくるというトラブルが発生しました。いったいどのように危機を乗り越えていくのでしょうか。おたのしみに。また次回のエピソードでお会いしましょう。
メモ
ヴァイゾ:
プレール地方一体に生息する草食動物。その生息範囲と飼育のしやすさから、農作物が育てづらいプレール西部で放牧して買われることが多い。ヴァイゾは牛乳も牛肉も良質なため、この地域の特産品はこの二つな都市が多い。性格は基本温厚で人に襲い掛かることはないが、赤いものを目にすると時々暴れだす個体が現れ、それに呼応するようにその群れ集団で暴れだすことがある。




