第61話 大河の町――セントルビー
馬車は順調に進んでいき、騎手さんの予想通り日が暮れるほどの時間に遠くに大きな街並みが目に入ってきた。この馬車での移動はここまでである。リカーゴでこの馬車を手配してくれたギルドの人やこの騎手さんにもたくさん感謝しないとだ。
「もうそろそろセントルビーに到着いたします。ご支度をお願いいたします」
「分かりました~」
騎手さんからはそんな声がかかり、僕たちは馬車の降りる準備を始めた。ちなみに、凱旋でもらった食べ物はほとんどが野菜だったうえに、膨大だったので馬の協力のもと消費しきった。そして、それ以外の肉類や魚類は自分たちで調理して食べきった。
「この馬車乗れるの今日までなのか~?長いようで短い感じがしたのだ~」
「そうだよね、実際乗っていたのは4日間だから何とも言えない期間だけどやっぱり終わりが近づくと短かったように感じるよね」
「この馬車とても乗り心地が良かったからまた機会があったら乗りたいのだ!」
「この馬車はその内VIP用の馬車になるだろうから多分乗れる機会は減ると思うな、その人たちの予約で埋まっちゃって…」
「確かにこの馬車なら…ってVIPって何なのだ?」
ここにきて唐突に現れる世界の言語の壁である。結構いろんな言葉があるからここ最近は心配していなかったが、やはり油断は禁物のようだ。
「VIPはお金持ちの人のことを言うんだ。この馬車揺れや騒音が少ないから高級馬車になると思う。今回はそれを試験段階として乗らせてもらえたのは幸運だったね」
「ふ~んそういうことだったのか~にしてもそれどこの言葉なのだ?」
「僕の地元だよ」
「それってどこなのだ?」
「んまあまあまあ」
「へえ~?そこで誤魔化されると余計に詮索したくなるのだ~どうして話さないのだ?」
「これを話すと今はややこしいことになるからまた他の人の耳に入らないところで話すよ」
「なんかやましいことがありそうな予感なのだ…絶対だぞ!」
「もちろん」
そうこうしている間に、馬車はセントルビーの町に入った。この町は縦と横に道が敷かれ、とてもきれいに区画整理がされている都市のようだ。建物こそ西洋の木造建築その物だが、建物の並びは京都を彷彿とさせる。僕はその街並みを味わっていたところ、騎手さんからの説明があった。
「あともう少しでセントルビーの停車場に到着します。ここセントルビーは町の中心を流れるミヒ川の物流で栄えた都市です。ちょうど北部北部の都市ミネアスとミヒ川の河口に位置するオリアンズのちょうど中間に位置しているというのも特徴です。ミヒ川は水量も多いことから、セントルビーから先に行った西部の乾燥地域ではここから引っ張られた水を使って灌漑を行い、農作物を育てております。なので、別名『水と物の都』などと言われてますね」
「水の都は聞いたことあるんですが、水と都がセットになってるんですね」
「それくらいこの都市の物流は欠けがえの無いものですから、ああそろそろそのミヒ川を渡りますよ」
と言われて前を見るとレンガで作られた豪華な橋が掛けられていた。もちろん、物流の都市ということで橋の幅は普通乗用車が5台は通れるほどの幅であった。もちろんそれなりに大きな都市ということもあり、往来はそこそこあった。橋に差し掛かり、ミヒ川の覗いてみると、すでに日が沈んでいるためか水面は全く見えなかった。明日にでも観察するとしよう。
「やっぱりこの時間は見えませんね」
「そうですね、今日はこの後ここに止まって翌朝にでもご覧いただければと思います。なぜここの水が遠くの地域まで灌漑で用いられるのかがよくわかると思いますよ」
「そこの水って飲めるのか?」
「この町の水道は基本ミヒ川からとられているものですので飲めますよ」
「我楽しみになってきたのだ!」
「へ~僕もその水飲んでみたいかも」
「それはお楽しみということで」
「さあ、停車場が見えてきましたよ、短い間でしたがご乗車いただきありがとうございました。」
「いえいえ、僕たちもあんな大渋滞に巻き込まれながらも僕たちをここまで乗せれ暮れてありがとうございました!一応この馬車を作った人全員にとても乗り心地が良かったですとお伝えください」
「我もこの馬車気に入ったのだ!」
「騎手冥利に尽きます、ありがとうございます…」
そういうと騎手さんは穏やかな笑顔でこちらに顔を向けた。その顔は騎手というだけでなく、この馬車の開発者という感情も含まれているような気がした。そうしてついに豪華な馬車は停車場に到着し、僕たちは騎手さんとお別れした。そういえば名前聞くの忘れたな…ちなみに、騎手さんはすぐに停車場の方に到着したという申請やその他もろもろの手続きで忙しいということで足早にいなくなってしまった。そして、僕は一つ懸念をしていた。それは、この豪華な馬車が目立つのではないかと…しかし、実際は他にもそれぞれ専属らしき豪華な馬車が止まっており、リカーゴの時のように目立つことはなかった。僕たちは到着してからすぐに川沿いの宿を探しに行った。すると案外すぐに部屋が見つかり、ちょうど橋が少しだけ見えるとてもいい場所に部屋を取ることができた。そして、部屋について窓を見ると――
「おお~~!!ってなんも見えないのだ…」
「そりゃ夜だししかないね明日しっかり見ようか」
「なら早く寝るのだ!」
「まだご飯食べてないでしょ?ご飯食べに行こ、お腹減ったよ…」
「あ、そういえばご飯食べていないの忘れていたのだ、久々にご飯屋で食べるのだ!」
久々とは2日のことなのだが、実際馬車の道中ご飯屋に寄ったのはラファ到着時の1回のみで、それ以外は倉庫のご飯を食べていた。だから久々と言っても過言ではないだろう。その後はヴァルキーとどこに行くかを会議し、決まったお店を探すためと町の探索を兼ねて夜のセントルビーの街を練り歩くことにした。
「この町なんだかきれいなのだ、余計にデートを意識させられるのだ~♡」
「一応ご飯食べに行くだけなんだけど、まあご飯食べたらセントルビーぶらぶらしようか」
「さんせ~い!」
ヴァルキーは意外にもロマンチストのようだ。そしてその綺麗さにテンションが上がっているのが見て取れる。僕もなんだか一大観光地にやってきたような気分で心地が良い。そして歩くこと10分ほどで今日の夕飯であるステーキのお店にやってきた。外見内装ともに上品な装飾が施されており、おそらくお金が無かったら入るのでさえ若干憚られるのではというほどである。しかし、その見た目とは裏腹に、料金は3~5ゴールドであり、客層も上品な人もいれば僕たちのような傍から見たら一般的な冒険者までいた。僕たちはこのお店の一番人気のメニューである『ヴァイゾステーキ300g』をいただいた。ヴァイゾとはあっちの世界で言うところの牛に近い動物である。リカーゴから移動してくる間にも何回か見かけたことがある。ということで、この料理は実質、牛肉ステーキである。
「早く食べたいのだ~!お肉見てたらお腹ペコペコなのだ…」
「まあまあそう焦らずに…僕もお腹超減ってるし」
そして待つこと15分、熱々に加熱されたヴァイゾステーキが運ばれてきた。見た目から推測すると部位はミスジ。一般的な部位だ。僕たちはテーブルに置かれていた食器たちを取り出して、ステーキをいただいた。
「んん~!!油がないのにめっちゃジューシーなのだ!」
「そうだね、見た感じ赤みなのに食べると肉汁があふれ出てくる、あと意外と脂身がさっぱりしてる」
一言でいうと食べやすすぎる牛肉である。もはやお代わりが欲しくなるほどには…
こうして、僕たちはペロリとステーキたちを平らげ、満足して宿に戻り、あっという間に二人とも眠りについてしまったのであった。
どうも、winger86です。今回も本作品をありがとうございます。さて、今回はついにセントルビーに到着し早速セントルビーを堪能するお話でしたがいかがだったでしょうか?理鳳達はここまで運転してくれた騎手さんにお別れを告げ、久々の2人行動に戻りました。そして町に到着してからの初食事がステーキなのは私たちからすると贅沢のようにも感じますね。次回は、さらにセントルビーでの冒険が進んでいきます。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




