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第55話 小さな宿場町――ラファ

騎手の方にいろんな話を聞かれて少しきまりが悪い思いをしたが、その後は特に何もなく、ヴァルキーと穏やかに談笑して到着までの時間を過ごした。


「リオ様~もうすぐラファに到着いたします。降車の準備の程をお願いいたします」

「ありがとうございます!」

「え?インディンに向かうはずじゃないのか?」

「騎手さんと馬の休憩だってさ。ヴァルキーが寝ている間に色々話聞いたんだよね、だから今日はラファで一泊だ」

「なるほどなのだ。ということは、今日はリオとデートということで決定なのだ!」

「マジか…勝手に決められたよ…まあいいけど」

「そちらの方とかなり仲が良いようで…昨日も…」

「それは勘違いですよ騎手さん…僕と彼女はそんな関係じゃないです」

「そうなのだ~”今は”全然そんな関係じゃないのだ」


そう含みを持たせたような発言をすると、再び騎手の方の口角が少し上がった。勘弁してくれ。などと考えていると、僕の目に賑やかな町が目に入ってきた。これがラファなのだろう。ぱっと見た感じはのどかな西洋の村といった感じだが、中心部は途中で休憩していく人が多いのだろう、人が集まっていた。僕たちは、停車場に止まった馬車から降りた。すると――


「おお?誰だ?あんな見た目の馬車見たことないぞ?もしかして貴族の人か?」

「いや、このあたりに貴族なんて聞いたことないぞ?」

「外遊なんじゃね?」


などと囁かれるのが聞こえた。もちろん、僕たちは貴族でも何でもない。しかし、この最新鋭馬車は乗って移動するだけでも目立つようだ。そして、周りのざわつきはこれに関した内容だけではなかった。


「あの男性の人…この間リカーゴの方で現れたモンスターを退治した人じゃないか?」

「リオ…だっけか?あいつ、ちょっと町一つ救ったからっていい気なってるんだろ?」

「それにとなりにあんな美人の女の子を連れている…羨ましいぞ」

「今日の夜裏路地に呼び出してぼこぼこにして、あの女の子を頂いちゃおうぜ?」

「いいね~俺も協力するわ」


などとあまりよく思わない声や、何やら企んでいるような会話まで聞こえてきた。最近は黄色い声援ばっかりだったので、こういう感覚はあっちの世界以来である。というか、僕の地獄耳を舐めないで欲しいな…すると、僕は何かを察知し、とっさにヴァルキーの腕を引っ張った。そして、その予感は的中していた。


「リオ!離すのだ!あいつら…リオが命懸けで戦っていたっていうのに…それもつゆ知らずリオのことを侮辱した上に路地裏でボコボコ?我が許さないのだ…!我から直接ボコボコにしに行く!」


そう、僕の侮辱に対してヴァルキーが耐えきれないと思ったのだ。ヴァルキーはここ最近どんどんと僕に対する気持ちを強くして来ている。龍は普通の異世界のドラゴンならいろんな身体的機能も高いから聞こえているだろうとは思ってたけど…やっぱり目を離すのは危険だな…ということで怒りをあらわにしているヴァルキーの矛を収めるために僕はこんなことを言った。


「ヴァルキーさんあなた僕とデートするんでしょ?彼らに構うのはデートの時間の無駄になっちゃうよ?」

「あっ、そうだったのだ~♡ 我はリオとデートしに来たのだ~あんなやつ放っといて行くのだ!」


一瞬で機嫌も治り、いつものヴァルキーに戻った。もしかしたら、彼氏彼女になるのもこういう意味では便利かもしれない。だがしかし、ギルドの女性職員と話しただけで嫉妬でギルドを破壊する可能性もあるのでちょっと無しか…


「我のこと、馬鹿にしたような気がしたのだ。今何を考えたのだ?」

「ん?気にしないでいいよ。個人的なことだし」

「ふ~ん?そんなようには見えなかったのだが~?話してくれないというならこっちにも手があるのだ」


ん?なんだか嫌な予感がと思った矢先――


「これからリオとのデート楽しみなのだーーー!!!なのにリオったら他の女の子のこと考えるなんてーーー最低な男なのだーーー!!!!」


ヴァルキーがこういう手を使ったのは初めてだった上に、僕もこういうのをされたことが無かったことで同様で固まってしまった。そう、まずい。これは盛大に勘違いされる奴だ…よし、逃げよう。そう思ってヴァルキーの腕を引っ張り、とりあえず町の中心部からは離れることにした。


「ごめんごめんて、他の女性のことなんて一ミリも考えてないんだけど」

「じゃあ何を考えていたのだ?」

「どうしても言わないとダメ?」

「何か言いにくい事情でも?」

「あ~了解。そういう感じね、じゃあ言うけど、もしヴァルキー付き合ったらギルドでクエスト受注するのも大変になりそうだなって考えてたんだよ。ほら嫉妬でギルド破壊してしまわないかな~?とか」

「なるほど…そういうことなのか…確かにあまりなれなれしくしている女がいたら多分ブチ切れる…けど、普通のクエストなら怒らないのだ~だって我も一応冒険者なわけだし?そんなに非常識にはならないのだ!な~んだもっと深刻なこととか思ったのに~でも、今回のやつは今後も使えそうなのだ~へっへっへ~」


ヴァルキーは悪だくみをするような顔をしていた。これからはどんどんヴァルキーのペースに巻き込まれるだろうな…そんな苦労を感じた僕であった。その後は、何事もなく町を散策し、洋服を見たり、ご飯を食べたりしてラファを満喫した。そして夜になり、宿を取り、ヴァルキーをお留守番にしてから騎手の方の所へ明日の予定について色々聞こうと停車場に向かった。すると、本当に到着したときの話を有言実行したのか、5人が僕の所に駆け寄ってきた。全員僕よりが体格が上である。


「よう~お兄ちゃんもしかしてリオっていうやつか?」

「人違いじゃないですか?」

「いや、お昼見たときと顔が一緒だから間違いねえな、でこれから俺たちと遊びに行かねえか?夜遊びは楽しいぞ?」

「すみません、用事があるのでお断りします、あと人違いです」

「なんでそんな頑なに否定するんだ?何かやましいことでもあるのか?それがお前の弱みか…いいねえ、それを知って俺たちはお前を手駒にしてやる…ああ、考えただけでワクワクしてきた!あの青緑の女の子もどうやってやろうか…ぐへへ」


はっきり言って気持ち悪い集団である。ちなみに、ここまで話しているのは全部リーダー格の人間である。それ以外は何もしゃべらずニヤニヤしている。これがより一層気持ち悪さを掻き立てるのだ。なんか前のファルキーズとは異なった面倒さを感じる。僕は仕方がないので、ちょっとだけ付き合ってもらうことにした。しかし、相手の要求道理にとはいかず、ギルドの前でやることにした。


「お兄ちゃん意外とノリがいいねえ。とはいってもこんな場所で良いのか?大衆にみじめをさらすことになるぞ、お兄ちゃん」

「…」

「なんだここまで来てビビってるのか?大したことないなあ~リカーゴを救った男も!」

「…」


一体どこからそんな自信が出てくるのかと呆れているため、言葉が出てこなくなってしまった。


「一応、俺はこのラファの中じゃ一番の実力だぜ?今まで喧嘩で負けたことがねえ。嘘じゃねえぞ?だから先に降参しておいたほうが良いぞ?」

「…(あかん、唖然としてしまって言葉が出てこない)」

「はっは~ビビっちゃって降参もできないか~じゃあ早めに楽にしてやるよ!」


ラファのチンピラは僕に対して気色悪い笑みを浮かべながらこちらに向かって突進してきた。僕はニューク以来の悪い輩との対決に挑むこととなり、どの程度手加減するかを悩む僕なのであった。

どうも、winger86です。いつも本作品をお読みいただきありがとうございます。今回は、ラファでイチャコラと、チンピラとの喧嘩のお話でしたがいかがだったでしょうか?過去に理鳳がそういう人と戦ったのは、スロング、ファルキーズ、に続き3回目となります。やはり、強いやつには変な奴も寄ってきやすいのでしょうか?疑問が残りますね。次回はついにセントルビーに向けて出発してきます。お楽しみに。それでは、また次のエピソードでお会いしましょう。


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