第54話 時代の進歩は偉大
実は前回の凱旋モドキの間にいろんなものが投げ込まれ、馬車の中は割といい量の物資がたまっていた。
「いや、声援以外にもこんなに食べ物や衣服、その他生活必需品をもらえるなんて…すごいなリカーゴの町は」
「これでここでしばらく暮らせるのだ!そしたらここはリオとの愛の巣に…」
「なりませんね、これ以外と外から見えるんだよ、あんまり変なことすると怪奇的な目で見られるよ?」
「へ~ということはやっと我とそういうことをする気になってきたということなのだな~?」
「うん?僕はしないよ、そっちの話」
「!?なんだと!我がいつそういうことをしたのだ!……ま、さ、か…気づいてたのか……?」
「あ、いっけね、黙っておくべきだったわこれ」
「…!?まさかあれがバレているとは…リオ!」
「ハイなんでしょう?」
「我に恥をかかせたということは覚悟できているのだな?ここは馬車の中…逃げ場はないのだ、ふっふっふ~そして、外から見えるという問題…この馬車ちゃんとカーテンがついてて外から見えないようにできるのだぞ~?さあ、覚悟するのだ!」
「あ~れ~~(棒)」
僕は昼過ぎから夜寝るまでずっと頭をナデナデし続けることを強制されるのであった。危うく手が痛くなって剣が握れなくなる一歩手前まで行ったのはここだけの話…
翌朝、目を覚ますと肌が普段よりつやつやしたヴァルキーが眠っていた。そういえば、昨日撫でているとだんだん肌の調子がよくなっているような…そんな違和感を感じたのを覚えている。その効果が続いているのだろう。それはさておき、現在位置を騎手の人に尋ねようとしたところ――昨夜はお楽しみでしたね――などと冷やかされてしまった。とりあえず、そのことは一旦置いておいて話を続けることにした。
「それで現在地はどのあたりですか?」
「今は大体インディンとリカーゴのちょうど中間あたりを走行しています。インディンまでは途中馬の休憩や抗体があるので、あと二日ほどかかります。」
「ということは昨日今日でまあまあ進んでるっていう認識で間違いないですか?」
「そうですね、昨日はなぜか一晩中この馬たちが体力を維持しながら動けたのでかなり異例のスピードですね」
「へえ~でもあんまり馬に無理させなくていいですよ。僕たちも先を急いでいるわけではないので…」
「はい、心得ております。なので次の宿場町であるラファによって馬たちの休憩を行ってからインディンへ向かいます。なので今日はラファから先には動けませんね」
「分かりました、僕たちも一回外の空気を吸いたかったのでちょうどいいです、ちなみにそのラファまではどのくらいかかりそうですか?」
「あと半日ほどはかかります」
「分かりました、また到着近くなったら教えてください」
「承知いたしました」
どうやら馬車としては異例の一晩中ノンストップで動いていたようだ。おかげで移動時間が短縮されているから降りたら馬には感謝しないとね。それはさておき、さっき到着まで半日ということを聞いたので、ひとまずは起こさないようにした。にしても、この馬車…最新鋭ということもあって、宿でぐっすり寝ているかのような心地のよさだった。通常馬車に乗ると発生する揺れによって目が覚めることもあるが、この馬車は今朝まで一回も目を覚ますことなく移動できた。やはり、技術の進歩は素晴らしいものだとつくづく感じる。と、感慨にふけっていると、何やらヴァルキーが寝言をしゃべり始めた。
「んんっ~…あ~父上と母上なのだ~。久しぶりなのだ~。ん?今までどうしてたかって?我は洞窟にこもって過ごしていたのだ。え?次期水龍の王としてもっと世間に出ろって~?あの爆発の後水龍我一人しかいなかったから王になれないのだ~。次は今いい相手がいないのかって~?いるのだ、リオっていうのだが~…あれ~?いつもなら一緒にいるのに、今日はいないのだ~どこに行ったのだ~?リオ~出てくるのだ~」
夢の中で僕を呼ぶなんて可愛いな。自分が夢の中で出てきてるのを寝言で来たのはこれが初めてだったけど嬉しいものだな。ヴァルキーの寝言はまだ続いた。
「ごめんなのだ~父上~母上~今日はどこにもリオがいないのだ。種族はって?人間なのだ~我を打ち負かすほどには強い人間なのだ!我は戦ってから一目惚れだったのだ。やっぱり強いオスに惹かれるみたいなのだ~。え…?人間はダメ?なんでなのだ!今すぐに別れろって…”今は”まだ付き合ってないのだ!これから付き合って、中を深めて、そしてからつがいになるのだ!」
人間的表現をするなら、やっぱりこの子、僕のこと一人の男として意識してるな、というかもうそこまで考えてたのかこの子。オーガンさんは論外として…カボディアもいるからな…どっちか選ぶか、もしくは両方選ぶかしないとお先真っ暗BADENDになりかねないぞ…などと考えていると、寝言の声量とともに顔も険しくなり、汗も流すようになってきた。悪夢に切り替わりつつあるようだ
「なんでなのだ!人間とつがいになったって別に構わないと思うのだ!だって我たちの先祖は人間と龍のハーフだと聞いたぞ!なのになんで…竜の力が弱まるから?そんなの関係ないのだ!なんでそっちに行くのだ!人間と仲良くしようとしただけでどうして我を捨てるのだ!理不尽なのだ!待ってなのだ!父上!母上!待って…」
ということで、かなり感情が高ぶってきて、涙を流し始めたところでヴァルキーは目を覚ました。
「あ、あれ?父上と母上は…?ってリオ!我久々に父上と母上に会えたと思ったら、リオと一緒になろうとしただけで置いてかれたのだ…ぐすっ…リオは我から離れないよな?」
「もちろん、というかおはよう。あんまりいい夢見てなかったみたいだね。寝言もすごかったし」
「もしかして、さっきの父上と母上の話…しゃべっていたのか?我…」
「結構大きい声でしっかりと…あとつがいだなんだとかまで…」
「ああ、そんなことまで聞かれていたのだな…ちょっと恥ずかしいけど…リオは我がそういう感情を抱いているのは気付いていた?」
「なんとなく、というか今ので確信に変わったね」
「ならこの気持ちも隠す必要ないのだ…リオ、最近我ちょっと我慢できなくなってきたのだ…前まではナデナデでも十分満足できたのだが…もっと深くつながりたいのだ、我とリオとの愛の結晶を作りたいのだ…だからお願い!今夜だけでも我と一緒になって欲しいの…」
ヴァルキーは吹っ切れるとここまでストレートにそして積極的な女の子になるのか…にしても、ちゃんとした告白は多分2回目?だよね…嬉しいのは山々だが、僕の答えは決まっている。
「ごめんね、今は出来ない。それで万が一のことがあって冒険に支障が出るってなったら困るから。だから、冒険が終わるまでは…もしくは万が一の可能性を無くすことができるなら…ってところかな」
「万が一っていうのは我たちの愛の結晶のことなのか?う~ん…確かに冒険しているとその子供が何かトラブルに巻き込まれかねないのは理解できるのだ。分かった!無理言ってごめんなのだ。」
「つらいと思うけどもうちょっと我慢してくれると助かる…」
「我はドラゴンなのだ~それくらいどうってことないのだ!ましてやリオにお願いされたら余裕なのだ!でも…そんなこと言っておいて…他の女と…なんてことがあったら我は容赦しないのはリオも覚えておくのだぞ?我、多分そうなったら怒りで自我が無くなっちゃうから…ふふ…」
「そんなクズの所業はしないと誓うよ、もちろん!せっかくの気持ちを我慢してもらってるんだ責任はしっかりとるさ」
などとかっこつけていると、ふと騎手の方が気になり目をやると…口角が上がりきっていた。どうやら今までの会話全部筒抜けだったというのをそこで察した僕なのであった。
どうも、winger86です。いつもも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回は理鳳とヴァルキーが乗る豪華な馬車の性能についてのお話でしたがいかがだったでしょうか?物語中で何やらヴァルキーの過去を垣間見るシーンがありました。一体過去に何があったのでしょうか?お楽しみに。それでは、また次のエピソードでお会いしましょう。




