第53話 次にめざすはなんなん?
2週間弱に及ぶ入院生活の末、ついに全回復することができた。ということで、次の目的地を決めるための会議を始めた。
「ヴァルキー、次どこ行こうか?」
「え?覚えていないのか?」
「え、ということは目的地は話し合ってたのか…何なんだっけ?」
「…」
どうやら、僕のド忘れでヴァルキーは不機嫌になってしまったようだ。仕方がないので、いつもの恒例行事であるギルドに訪れることにした。もちろん、目的は次の冒険する場所である。ということで、早速ギルドに到着したら職員の人に話を聞くことにした。
「あっ!リオさん!この度は危険な任務に命がけで対応してくださりありがとうございました。リカーゴギルドの一同を代表して感謝申し上げます。ということで、堅苦しいご挨拶はこの辺にして、本日はどんな御用でいらっしゃいましたか?」
「せっかく退院したということで、今日からまた路銀稼ぎのために冒険しようかと思って」
「治ったばかりなのにもう出発するんですか?あんまり無理して欲しくないです。リカーゴのヒーローですので…」
「僕のおかげじゃないと前に病院でも行ったような気がするんですが、あれはみんなの協力あっての討伐です。それにリカーゴの皆様もその後の火事の処理はやってくれたんですよね?なら僕だけじゃないです。みんなヒーローなんです!」
「まさかそんなお言葉が頂けるなんて…ありがとうございます!とと、話が脱線してしまいましたね。それで、もし冒険に行かれるのでしたら、南が良いと思いますよ」
「その理由は?」
「北にはミネアスしかないんですよ。その先はずっと町や村、集落が存在しないんです。そうなると、一回遭難すると救助を呼ぶのも救助に行くのも大変になってしまいます。一応ミス湖に沿ってずっと北に行くと、マクエットという比較的大きな町がありますが、その先の町までは1か月の道のりになります。道中道も悪いので実際にはもっとかかるかもしれません。そして、あと数か月もするとマクエットより北は氷と雪に閉ざされて全く身動きが取れなくなるんです。通常なら雪が解け始めたタイミングで出発するのですが、今から出発すると帰ってくる最中で氷漬けになります。なので、南なんです。ご理解いただけましたか?」
「あ、なるほどヴァルキーでさえもきつくなるのか…」
「我も冬の北には行くなってさんざん忠告されていたのだ!前に言った仲間が冬明けに探しに行って凍った状態で見つかったそうなのだ。だから我行きたいくないのだ」
「そういうことなら南に向かおう。それで、南にいい町がありますか?」
「それなら、道中インディンを経由してセントルビーに向かうのはいかがでしょうか?この二つの町はその周辺では比較的クエストの数も安定してますので路銀稼ぎにはうってつけだと思いますよ」
「いいですね、じゃあそちらに向かおうかと思います。」
「分かりました、一応追加でお教えしておきますが、その先に進む場合は、ずっと南下が良いと思います。その先も、等間隔で大きな町が続いていて冒険しやすいんですよ、訪れるならセントルビーから先はナビ、アドリー、オリアンズと続きます。」
「なるほど。じゃあ尚のこと南に向かうのが得策みたいですね。分かりました。ありがとうございます!」
「ということは、前に言ってたセントルビーに行くってことでいいのだな?」
「そういえば、そんなこと言ってたね。この間の気絶でちょっと記憶が吹っ飛んでた」
「え~?しっかりするのだ!そもそもリカーゴからセントルビーに移動しようとしたときに馬車が通行止めになってあいつと戦ったのだ!」
「あ、そういうことでしたら、こちらでインディン経由の馬車を無料で手配しましょうか?」
「え、いいんですか?でも、さすがに無料で移動するのは気が引けるというか」
「むしろお安い御用ですね!そういうのも私たちギルドの役目ですから」
「そういうことなら…お言葉に甘えます」
「はい!それでは少々お待ちください」
そういって、ギルドで馬車の予約を待つことになった。そして数十分後、ギルドの人から手配が終わり今すぐにでも出発できる旨を伝えられた。そこで、僕たちはすぐさま馬車の停車場まで向かうことにした。そして、停車場についてこの前乗ろうとした馬車に乗ろうとすると――
「リオ様ですよね?本日ご乗車いただくのはそちらではありません、こちらになります」
と、少し離れたところに立っていた初老のすらっとしたおじさんに言われた方を見ると、なんと今までに見たことのない豪華な馬車がそこにあった。
「え?本当にこの馬車なんですか?かなりお高そうですけど…」
「はい、ギルドの方からはこちらに乗せるように伺っております。なにがご不満な点でもございましたか?」
「いえ…そういうわけではないのですが…」
と少し遠慮気味になっていると
「リオ!もしかして我たちこれからこの馬車に乗れるのか!?すっごい豪華な見た目をしているのだ!嬉しいのだ!!」
とヴァルキーははしゃいでいた。それもそうである、なんとこの馬車、外装はそれこそ中世の貴族が好んで乗りそうな金の枠組みに白いボディ、花柄の模様を施したものであるが、驚くべきはそこ意外にもある。それは、この世界に来て始めて黒い加硫されたゴムタイヤを見たのだ。そう、あっちの世界では車で普通に使われているあのタイヤである。しかし、こちらの世界では今まで木でできた車輪しか見てこなかった。さらに、馬車の下を見ると他の馬車にはないサスペンションのような機構まで装着されていた。あまりに居住性を重視した馬車であった。
「すいません、この馬車なんか他の物と外装だけでなく車輪の部分まで異なる気がするのですが…」
「おお、よくお気づきで。実はこの馬車はつい最近完成した試作機なのですよ。一応走行チェック離されており、安全は確認できておりますのでご安心を。それで、この試作機の馬車は従来の物より悪路やそれ以外の舗装された場所での居住快適性を向上させるために、衝撃吸収を目的として車輪をメクシー地方南部の島々で取れるゴムという木から採取されるじゅけきを加工したゴムと呼ばれる素材を利用しています。そして、悪路での振動を抑えるために、床下にばねを設置し、衝撃吸収を行って快適性を向上させました。これは当社比になりますが、この馬車は従来の約30分の1程度にまで揺れが軽減されており、馬車で移動する際の疲労感を軽減できます!つい数日前に試験走行が完了したので是非最初にリオ様にご乗車いただきたく今回この仕事を引き受けさせていただきました。」
僕はこれを聞いて感動してしまった。なにせ、3か月ぶりくらいにガタガタ揺れない乗り物に乗れるからである。そして、この姿が本当に車そっくりであちらの世界を思い出せるのも感動を呼び起こす一因となった。そして僕たちは早速その馬車に乗り込み、まずはインディンに向けて出発した。すると、停車場の周りにはリカーゴの人たちが駆けつけていた。どうやら、僕はこの町で英雄になってしまったらしい。
「リオさん!お元気でー!!!!」
「今回の件はありがとうございました!!!!このご恩は一生忘れません!!!!」
「リオ様バンザイ!!!」
などといった黄色い声援が飛び交っており正直僕はとても気分がよくなった。しかし、ここで鼻を高くしてしまうとヴァルキーに何か言われかねないのでなるべく顔に出さないように心がけた。そして、その人の集まりは町のはずれまで続き、セントルビーに抜ける『フィフィ街道』に入ってからやっと静寂の時が流れた。
「リオ~さすがにずっと手を振っているのは疲れたのだ~」
「僕も、同じだよ。まさかあそこまで尊敬されるようになるとは…」
「いや、当然だと思うのだ。なにせ、町が丸ごと火事になる事態を食い止めたわけで…英雄と大差ないのだ!というか英雄よりもずっとかっこいいのだ!さっすが我のリオなのだ♡」
「久々にデレ来たな…にしてもこの馬車乗り心地良すぎじゃない?ここは最高なんだけど…」
「なんなのだ?我と一緒に寝るのが不満なのか?いつも一緒じゃないか!」
そう、今回の旅路は1日で到達できるものではないため、ベットが設けられていたが、普段の宿ではダブルもしくはクイーンで泊まっているが、今回は馬車のスペースの関係でセミダブル…果たして僕はヴァルキーを蹴飛ばさずに寝られるのだろうか?
「そういえば…次の目的地って南なんだね」
「…」
どういう訳か冷ややかな目でヴァルキーに見られた僕であった。
どうも、winger86です。いつも本作品をありがとうございます。さて、今回のお話はリカーゴの町で超優遇措置を受ける2人のお話でしたがいかがだったでしょうか?これから二人は南のセントルビー、ゆくゆくはさらに南のオリアンズまで向かうことになります。果たして2人にはどんな事件が待っているのか?お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




