第46話 兄弟弟子対決
今週は、私の多忙により、投稿が日曜日になり、エピソード更新は1話のみとなります。ご了承ください。
その後も、ヘンリーさんからのジルさん絶賛のお話を小一時間ほど聞いた後、ついに訓練が始まった。初めに習ったのはクルーランド流守身術(ここからはク守と呼ぶことにする)の最も基本的な技である、盾で受けを取る技だ。ヘンリーさん曰く、この技から他のすべての技が始まるとのこと。そのため、この技を習得しないと次に進めないのだ。僕も普段から剣を用いた受け身をやっているので余裕だと思っていた。だが、一筋縄ではいかなかった。
「ぐっ…!?」
「それじゃだめだ!もっと衝撃を吸収する感じだ!それだとただ弾いてるだけで手が痺れるぞ!」
「はい!」
今までの剣の感覚で受け流すようにやると、吹き飛ばされてしまう。この技はどうしても正面から受ける必要があることから、受け流すことも難しい。かといって、強めに抑えると今度はその衝撃が全身に響き体にダメージが入ってしまう。低反発枕のように受け流しつつその場で耐えるというバランスが本当に大変なのだ。ちなみに、このク守を習っている人はゴルドナ中でフ流の半分程度しかいないが、それはこれが原因だったりする。この一つの技で諦めてしまう人が多いんだそう。
結局、今日はこの練習だけで費やしてしまった。終わった後、教室併設の寮に戻ったところ、部屋にはヴァルキーがベットの上にちょこんと座って待っていた。
「お帰りなのだ、リオ!ずっと待っていたのだ!」
「おお、ただいま、ヴァルキー。今日は1人でクエスト行ってみてどうだった?」
「ふふん、聞きたいのか~?いいだろう、教えてあげるのだ!これを見るのだ!」
と言って見せてきたのは麻袋らしき袋に入っていたゴールド7枚であった。1日に稼ぐ額としてはそこそこ多いほうである。しかし、これは初クエストである。一体何をしたというのだろう…?
「初日しては多いんじゃない?すごいじゃん!」
「クエスト1日で3つ受けたのだ!体力も余ってたし、速攻で終わらせて午後はここでグータラしていたのだ~」
「いっぱい働くのもいいけど、張り切り過ぎないようにね、あと他の人のクエストまでやっちゃうと他の冒険者がクエスト出来なくなっちゃうから多くても1日2つまでね。いい?」
「え~もっとリオに貢献できると思ったのだが~仕方ない、リオが言うなら従うのだ!で、このお金で何か一緒に食べるのだ!」
「あ、そのことなんだけどここ、教室に通う人とその同伴者は三食無料なんだよね。だから食費に関しては考えなくてよくなったんだ。だから、そのお金はまた別の機会にヴァルキーが使いたいように使えるようにためておきな?」
「え、そうだったのか~ならリオのプレゼントにでも使うのだ!楽しみにしておくのだ!」
「そういうのサプライズでやるもんじゃのかな?」
「サプライズ?なんなのだ?それ」
「あ、サプライズ知らないのか、サプライズは何か贈り物をとかを何の拍子もなく渡すことを言うんだ。これやるとされた側は驚きながらも、そのプレゼントがより嬉しくなるんだ。僕も何度か経験したけどあれは嬉しかったね」
「へ~じゃあ今度サプライズやってみるのだ!て、これいったらダメな奴なのだ…」
「うん、じゃあ今のは聞かなかったということで…」
ということで、どうやら僕に何かプレゼントをくれるようだ。楽しみなだな、実際男友達と家族しかプレゼント然りサプライズ然りされたことないからな~そんなこんなで一旦訓練で流し汗を流し、この教室の2階にある食堂まで向かった。今日のお昼はここで頂いている。
「おや、リオ君ですね。本日の訓練どうでしたか?」
「ああ、どうもジルさん、いや~全くできる気がしません。なんというか、柔と剛のバランスって言うんですかね?そのバランスを完璧にしないと全く受けが取れませんね」
「そうなんです、ク守最大の難所は最初のこの受け身です。しかし、これができるとある程度大型のモンスターまで技を受けて耐えることができますよ、ちなみにフ流習っているんでしたっけ?」
「そうです、確か前に進められたのかな?ちょっと記憶が曖昧ですけど…」
「それなら、私も同じなんですよ。少しだけフ流の技が使えるんです。とはいっても、1週間の短期で習得可能なコースで学べる剣術にさらに中級が1つ使えるだけですが」
「僕が言うのもなんですが、その中級が2つ覚えられているだけでも十分すごいと思いますよ。ましてやク守の達人。それは強いですね」
「いえいえ、とんでもない。前に会ったときには受けを取りつつ、フ流で攻撃を仕掛けましたが中々刃が通らず、そして突進も威力が高かったので受けきれませんでした。修業不足ですね」
「たしかあの場面僕が逃げるまで時間稼ぎしたんでしたよね?それでしたら修業不足ではないですよ、ジルさん、もっと自信持ってください!」
「あはは、どうもありがとう。リオ君、君と出会えたのは運がよかった。でもやはりこのク守の弟子の中でトップ2だけはどうも超えられない壁ですね」
「そんなに…今どこにいるんですか?」
「1人は今西の方、グレープレーズ地方に遠征に行ってます。彼女は本部のあるニューク所属の冒険者パーティーで1番のパーティーに所属しているのでずっと危険な任務で忙しくてほとんど帰ってきません。もう一人の方は…すべての方を覚えた後、道場破りでヘンリーさんに挑んで惨敗した後姿をくらまして未だに所在は分かっていません。」
「やっぱり強い人は大忙しですね。あと、2番の人は無事だといいですね…」
「まあそうなんですけど、その方は訓練の時も言葉が荒く、人を見下すような方だったので無事であってほしいかどうかはちょっと複雑な心境ですね。とまあ、長話もなんですから、ご飯を頂きながらもっと明るい話題で話しましょう。」
1番の人に関してはさすがといったところだが、2番手の方は大体荒くれモノになって人に多大な迷惑をかけるパターンと相場で決まっているのでちょっと不穏な感じがした。しかし、それを今気にしても仕方がないので、とりあえず食べることにした。すると、しばらくジルさんと話し込んでいたせいか
「リオ!そっちの人と話し過ぎなのだ!もっと我とも話すのだ!」
というようにかまってちゃんが発動していた。うん、可愛いな。その後も会話は進み、食べ終わってからジルさんと解散し、この日はそこで就寝した。翌日以降は同じような生活が続いた。そして、2週間後、
「この速さで習得できるのは私が教えてきた中では最速だな!わっはっは!さすがハイドが見込んだだけはある。それも、2週間で1つ目の技だけじゃなくてすべての技を習得してしまうとは…だが、それをしっかりチェックするためにもここで試験をしてもらう。内容は同じ訓練生との一騎打ちだ。相手はジル、頼めるか?」
「大丈夫ですよ、ギルド長の頼みなら」
ということで、恩人との直接対決が実現することとなった。
「審判は私――ヘンリーが執り行う!勝負は3本先取、私が戦闘不能となっていると判断した時点で1本とする。それでは準備を!」
そうして、僕もジルさんも構えを取り、ジルさんに至っては先ほどまでとは異なる目つきをしており、いつになく真剣だ。こんな表情は一度も見たことがない。そんなことを考えていると――
「試合開始!」
ヘンリーさんの掛け声がかかり、それを同時に両者一気にその間合いを縮め、ついには盾同士が衝突した。
ガンッッ!!!
金属の鈍い音と、木材が衝突した軽い音が交じり合った音が決闘場の中に響いた。戦士は、盾の他にハンマーのような斧のような武器を持っており、これで相手を殴打したり切断して戦う。今回は木でできたハンマーで両者対決をしている。力は拮抗しており、これは読み合いによって決着がつきそうである。そもそも、自分も生半可な状態でフ流を習得した訳ではないから、力では負けないと思っていたがそうでもない様子。なにせ、相手はク守の教室の中で最も強いジルさんなのだから、そんなに甘くはなかった。恐らくパワーだけでなく、その受け方にもコツがあるようだ。僕はこの短期間ではつかめなかった。
「2週間でこのレベルまで到達とは素晴らしいですね。でも、ク守の名に懸けても遠慮はしません!」
「望むところです!」
そして、盾通しの衝突の後2手目の攻撃が始まった。
どうも、winger86です。いつも、本作品をご覧いただきありがとうございます。今回は、ついに恩師であるジルさんとのク守試験での対決でしたがいかがだったでしょうか?ク守――クルーランド流守身術の概容が色々判明しましたね。皆さんはこの世界で職業を得るなら、戦士か剣士どちらがいいですか?僕は剣士ですね。でも、どの職業もそれぞれの役割でロマンがあっていいですよね。次回は、ついにクルーランドの滞在も終わり次のイベントに向かっていきます。お楽しみに。それでは、また次のエピソードでお会いしましょう。




