第44話 戦士の町――クルーランド
リノセロ・スタグ討伐から5人でのんびりクルーランドに向かった。途中、動けなくなったのにもかかわらず、口だけは回るティアとヴァルキーで喧嘩になり、背中に乗っていた3人が落ちかけた。さすがに危なかったので説教した。せっかくこの期間にちょっとは仲良くなったと思ったのに~。二人は、この前の時のようにしょぼんとした表情をしており、それを見たニトリードとラードンは苦笑いをしていた。正直、自分もこのまま血管が破裂しないか危惧していたりする。
「リオさん、あんまり根詰めるとぶっ壊れるっすよ?まあ、俺たちの安全を考えての行動はありがたいっすけどね」
「そうです、私たちのことなら気にしなくていいですよ、リオさん?ちゃんと鍛えてるからこの高さなら落ちてもケガしないですから~」
「一応あなたたち結構体力削られてるんで一応ね?」
「こりゃ~異性じゃなくて同性も落とされるっすね…」
「同感です、一瞬ぐらつきました…」
「これで、落ちてもらっちゃ困るんだけど…」
どうも優しいだけで魔性の魅力を得てしまう世界のようだ。あっちの世界ではこんなことなかったのに…そんなこんなで、会話している内に町が見えてきた。クルーランドは町の規模に対して建物の高さが高いので、遠くからでも見やすい。さすがに、龍が町に入ってくると住民がパニックになってしまうので、3人には申し訳ないが、ここで降りてもらい、ヴァルキーには人の姿で町に入ってもらうことにした。ちなみに、ここまでは道なき道を進み、なるべく見つからないように向かっていたので問題ない。
「いや~お二人方のおかげで大分体力が回復しましたっす。ありがとうございますっす。にしても、俺たちもまだまだ実量不足っすね。あの硬い皮膚を俺たちは2人がかりでやっと切断できたというのに、リオさんはそれをたった一人で、それも横ではなく盾に真っ二つなんて…」
「褒めても何も出ないよ?まあ、訓練すればあのくらいなら余裕で倒せるようになるよ」
「それは無いと思うわよ?リオ、私だってフ流習ってるけど、私も知らない技だったし」
「ん?あれ中級技だけど…」
「私中級技って突き技しか知らないんだけど…他にもあるの?」
「え?中級技って5個あるよ?さっきのあれもその一つ」
「あんた、それ異常って知ってる?」
「え、あ~確かに『お前さんには素質があるから追加でやってくれない?』みたいなこと言われたような…」
「私が知ってるの初級の9つと、中級1つよ?多分名前からして上級技もあるわよね?」
「うん、その通り上級技は3つあるよ、まあざっくり言うと回転突進切り、高威力一発のため切り、斬撃飛ばしかな?」
「あれ上級技だったんすか?てっきりカボディアさんも使えるけど普段は使っていないのだと…」
「え?いつ使ってた?ラードン?」
「この間の三つ巴の時っす」
「ん~あ、そういえば戦っているときにこっちに向かって強い風のようなものが迫ってきてるから剣で受け流した覚えはあるけど…それ?」
「そうそれ。まさか受けが流されるとは思ってなかったけどね」
「我は邪魔するなって思いながら飛ばしたのだ!」
「だろうね」
「私がいない間にそんなことが…私もその場に居たかったです~」
「あ、じゃあ今ちょっと見せようか?」
「いいんですか?ぜひ見てみたいです~」
「私も丁度見てみたかったところだからお願いするわ」
「了解、じゃあちょっと離れてて、あの木をこれで切ってみるね」
そういって、黒剣ではなく、ハイドさんからもらったほうの剣を取り出し、10m先の木へ向けて斬撃を放った。すると、斬撃を放ったところからきれいに切れた。
「それどうやってるのよ…どうも私にはできそうもないわよ…」
「いざ見てみると不思議ですね~空気が木を切り倒すなんて」
「剣に思いっきり力込めて振れば、できるよ」
「その力ってどのくらいよ…まあリオが知らない間に強くなったことはよく分かったわ、もうそろそろ私たちの旅も終わりね、リオとはもうちょっと一緒に居たかったけど…仕方ないわ…私たちには仕事があるのだもの…」
「私もちょっと寂しいですけど、また機会があったら一緒に冒険しましょう?」
「俺ももっと間近で見てたかったっすけど、また今度ということで」
「我は、もうあいつとは懲り懲りなのだ」
「はは、まあ僕も楽しかったよ。今度会ったときはまた冒険しよう?じゃあ、またね~」
「ここまでありがと~リオ~!」
こうして、クルーランドの入り口でカボディア達とお別れをし、ひと段落ついたと思っていた矢先のことだった。突然、後ろからガタイのいい茶髪の中年男性に声をかけられた
「君、なんだかハイドに剣術が似ているね?もしかして、君が1番弟子かい?」
なんと、僕の師匠の名前が挙がった。ということはこの人はハイドさんの知り合い?ちょっと不審がった。
「ああ、自己紹介を忘れていたね、私は元、ゴルドナパーティー1番隊で戦士をしていた、ヘンリーだ。ハイドとは20年くらい前にパーティーを組んで冒険をしていた仲だ。よろしく。」
「なるほど、僕はリオです。1番弟子かどうかは分かりませんが、一応ハイドさんのところで剣術習ってました。」
「そうだと思ったよ、他にもフ流の先生はいるけど、その人たちとは剣筋が全く違うからな~あと、町の外で放っていたあの斬撃飛ばしだけど…あれができるのはハイドだけだったんだよ」
「え?他の上級習得者もてっきりできるものだと…」
「あいつはな~フ流を大きく進化させたやつなんだよ。なにせ、元々1つしかなかった上級技と、2つしかなかった中級技を3つ、5つに増やして、剣術の幅を増やしたんだからな、斬撃もその一つだ。」
「え、そうだったんですか?」
「もちろん、ああそうだここで立ち話もなんだし、私の教室まで案内するするよ」
教室?この人も何かの戦闘スキルの先生なのだろう。戦士って言ってたから戦士系の戦闘スキルかな?こうして連れら他教室の看板を見ると『クルーランド流守身術』と書かれていた。どうやら、戦士スキルの教室で正解のようだ。
「さて、ちょうど2週間ほど前にね、こんな手紙が届いたんだよ。まあ大雑把に内容説明すると、今までで一番出来のいい弟子が誕生したと。それも、今後自分を超えるだろうってね」
「そんなこと考えていたんだ、ハイドさん…」
「書いてあったぞ?テストであいつから一本取ったんだってな?それはもうあいつを超え始めていると言っても過言じゃない。」
「そんなにすごいことなんですか?あれは偶然一本取れただけで…」
「通常の上級の習得条件は知っているか?」
「師匠から一本とるんじゃ?」
「違う、技の動きのチェックだけだ、普通は師匠と対決なんかしない、そんなことしたら誰も勝てなくなるだろう?相手はとんでもなく実力のある上級習得者」
「確かに、あれ?じゃあなんで1対1になったんだ?」
「それだけ、リオ君に見込みを感じたんだろう。あいつ、未だに強くなっているぞ?さすがに全盛期よりパワーは落ちているけど、その分技術力が上がってパーティー組んでいた頃よりも断然強いぞ?」
「それ僕やっちゃった間すごいっすね…」
「いや?誇っていいと思うぞ?それでだ、この手紙には最後にこんなことも書かれていたんだ――彼にクルーランド流守身術も習得させてくれないか?――と」
「えええええええ!?」
こうして、クルーランドに到着して早々、新たな戦闘スキルの習得を勧められることになった。果たして僕は2つ目のスキルを習得できるのだろうか?僕は不安でいっぱいになりながらそんなことを考えていた。
どうも、winger86です。いつも本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回はクルーランドでの出会いと別れのお話でしたがいかがだったでしょうか?前回のお話でカボディア達を救い、しっかり感謝された理鳳。彼女たちは名残惜しくも別行動を始めました。そして、理鳳には平穏が訪れると思ったら、理鳳の師匠の旧友との出会いでバタバタですね。次回は、クルーランドで守身術を習いながらクルーランドでの人探しをしていきます。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




