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第43話 下剋上

その後もカボディア達の先頭を少し観察していたが、二体とも体の外骨格が強靭らしく、ラードンもカボディアも攻撃が通っていなかった。このままでは体力を削られ、不利になることが僕には予想された。すると、偵察をしていたニトリードが帰ってきた。


「ティア!周りには他の個体はいなかったです!存分にやっちゃいましょう!」

「オッケー!それを待ってたわ!じゃあラードンもここからギア上げていくわよ!」

「了解っす!」


その掛け声の後、3人の雰囲気が変わった。さっきまでとは別人のスピードをしており、目つきも鋭くなっていた。まるで猛獣を狩るハイエナのようだ…ここで加勢したニトリードは、攻撃手段を持たない代わりに、なんと今まで1人ずつで引き付けていたウォータースタグとブロードリノセロをたった1人で引き付けている。その隙に2人は、カウンターではなく、攻撃に全ぶりをした動きをして高威力の技を叩きこみ始めた。


「ハアァァー!!!!」

「どりゃあ!!!」

「はっ、はっ、はあっ…!!!」


すると、先ほどまでとは異なり、あの二体の外骨格に傷がついたのだ。しかし、体を傷つけられた2体は怒りを表すかのように、背中にしまってあった羽を大きく羽ばたき始めた。その羽の大きさは両翼合わせると体長よりも長く、羽ばたく回数も多い。そのため、近くにヘリコプターでもいるかのような暴風が吹き荒れ始めた。


「リオっ…風が強いのだ…あっ!目にゴミが入ったのだ!痛いのだ!」

「下向け、下!前は見ないように!」


攻撃対象が飛んでしまったため、簡単には攻撃が入りずらくなってしまった。状況が一瞬好転したと思っていたので、僕は少し不安が募った。手を貸すべきか?そんなことを考えていると3人は一か所に集まり、ラードンの盾で風をしのぎ始めた。戦士の盾は、大型のモンスターの攻撃も防ぐ必要があるため、人より1回り大きいサイズをしている。そのため、身を寄せれば3人は余裕で入る。すると、2体の虫たちは3人めがけて突進攻撃を仕掛けてきた。重力による加速と羽ばたきの加速でその速度は地上での数倍に達しているように見えた。これを受け止められるのは龍状態のヴァルキーくらいだろう。というか小さい人間3人に対して過剰な攻撃な気もするが、それだけあの2体の逆鱗に触れたということだろう。

 同然、3人はそれを受けることはなく、羽ばたく音の変化からその行動を予測し、上手いこと3人とも避けた。どうやら、この暴風に慣れてきたのか、すでにバラバラになって行動しようとしていた。

 突進攻撃を避けられた2体は再び上空に上がり、突進のタイミングをうかがっている。これでは長期戦でやはりどちらかの体力が尽きるまで終わらなそうだ。しかし、その状況とは裏腹に3人の表情には楽しささえ感じられた。久々の強敵出ワクワクしているのだろう…相手したくはないな…そして先ほどと同様に一人が引き付け、2人が攻撃に回る体制に入った。先ほどとは異なり、暴風が吹き荒れているが、その風の流れをうまくとらえ、攻撃の体制につなげているようだ。そして、引き付けて地上に降りてくるタイミングで攻撃を続け、ダメージをちょっとずつ負わせていった。するとティアがラードンに目配せをし、2人の動きが少しだけ変わった。今まで1人で1体ずつに攻撃していたが、今度は2人でタイミングを合わせて攻撃するようだ。ちょうどブロードリノセロが地上に降りてきたタイミングで、反対側からティアとラードンの2人で胴体と頭の間に斬撃を打ち込んだ。


「はぁぁぁーー!!!!」

「どうりゃー!!!!」


声は聞こえなかったものの、口がこう言っているように見えた。すると――見事にリノセロから頭が転げ落ち、羽ばたきが止まった。2人は喜びを分かち合おうとしたが、その暇も無く、すぐさまスタグが突進ハサミ攻撃を仕掛けてきた。どうやらスタグは戦いの中で学習したのか、引き寄せの役割のニトリードには目もくれず、ただ一人ティアだけを狙うようになった。その結果、2人でのコンビネーションアタックができなくなってしまった。なんとかニトリードが気を引かせようとするが、無視を貫かれてしまう。虫だけに…ティアが逃げ回っているだけなので、ティアの表情はどんどん厳しくなり、疲れが現れ始めた。もう限界も近いのだろう。すると、少し気が緩んだのかティアの動きが一瞬鈍くなった隙に一気にスタグが距離を縮め、ハサミでちょうど引き裂く体制に入った。


「くっ…!」

「カボディアさん!」

「ティア!」


 他の2人が助けに行こうとしたが、すでに間に合わない距離だった。僕は気付くと体が動いていた。剣を鞘から引き抜き、放ったのは中級技で最も威力が高い突進縦切りである。その威力は上級技にも匹敵し、上級技よりも早く発動できる。

 ウォータースタグの体は先ほどのブロードリノセロとは異なり、体の半分から真っ二つに切れていた。


「大丈夫でしたか?ティア!」

「大丈夫っすか!?申し訳ないっす…俺が近くにいなかったのが悪かったっす…」

「え、ええ大丈夫よ。またリオに助けられちゃった…」


ティアは呆気にとられ、腰の抜かしたのかそこに座り込んだ。他の2人には安どの表情が溢れていた。戦いの前はおそらく僕には手出しして欲しくなかったのだろうけど、ついうっかり手助けをしてしまった。僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになり


「あ、ごめん手伝いはしないように心がけてたんだけど…やってしまった…ごめんね」

「いや、いいわよ、別に…私もあそこで助けてもらえなかったら多分やられてたわ…ありがと、リオ」

「本当に?悔しかったとはない?」

「「「そんなことはない」」」

「わよ!」

「です!」

「っす!」


と3人から猛抗議されてしまった。そして、


「リオ、一体いつの間にこんなに強くなったのよ…」

「うわさに聞いてはいたっすけどこんなにとは…この間のデントロンといい、やっぱり規格外っすね」

「この間の時は見れなかったですけど、こんなに強い方とは…恐れ入りました…」


それと同時に僕を敬うような、呆れているようなそんなコメントをしてきた。すると、ヴァルキーが


「そうなのだ!我のリオはとっても強いのだ!」


まるで自分のことかのように自慢し始めた。さすがに歯がゆいので


「ヴァルキー、それを本人以外が言ってどうするのさ…僕は自慢しようと思って見せたわけじゃないし…」

「リオはいつも控えめすぎるのだ!リオはもっとたくさんの人に褒められるような実力のある人なのだ!だから我が代表して褒めてるのだ~」

「いや、すでに町の人からそう言った言葉はいただいてるので結構です」

「ええ~?そんな恥ずかしからなくてもいいのだ~」

「そうよ、というか私リオの子と惚れ直したわ…今からでも婚約しない?」

「あ!抜け駆けは禁止なのだ!」

「ごめんなさい、再三申し上げている通り今はお断りします」

「ちっ、つれないわね~」

「そうっすよリオさん!こういうのは勢いでやっちゃうんすよ!」

「私たちのティアならリオさんに差し上げますので~頂いちゃってください、というかこれからティアをよろしくお願いします」

「あなたたち乗り気になったんだね…ごめん、ここは譲れない」

「そうなのだ!リオは我にぞっこんだからそっちに付け入るスキはないのだー!わ―はっはっは!」

「え?違うよ?勝手に話進めないでね?」


こうして、戦いの後は和気あいあいとした空気が流れ、無事討伐は完了したと感じられた。ちなみに、この後ティアたちが体力切れでヴァルキーの背中に運ばれてクルーランドに向かったのはここだけの話。

どうも、winger86です。いつも、本作品をご覧いただきありがとうございます。さて、今回は2パーティー合同での戦闘メインの回でした。いかがだったでしょうか?カボディア率いるパーティーはフィランデルトップのパーティーと比べると、個人としての技量は劣りますが、トップパーティー以上の連携力があるので、総合力としてはそこまで差がないのが特徴です。(リオなら、どのパーティーでも1人で圧勝してしまいます…)次回はついに、クルーランドメインで話が進んでいきます。割と時間がかかってしまいました…それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。

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