第40話 忙しさの中の暇
ギルドでこってり絞られた後、また暴走してしまわないように、オーガンはギルドでお預かり、明日以降スフィールド村に送還とのこと。カボディアはラードンとニトリードに任せ、僕はとりあえず昨日まで泊まっていたホテルヴァルキーを連れて戻った。
ホテルに戻ってからも、ヴァルキーはしんみりとしたままだった。それは当然と言っていいだろう、自分の勝手で人に迷惑をかけたのだから。さっき3人に圧をかけたときですらそんなに怒っていなかったが、どうも僕が未だに怒っていると思っているかのような行動が見られた。
「リオ、ごめんなさいなのだ。我の身勝手でリオまで怒られ、この町の人にいっぱい迷惑かけたのだ。これじゃあリオに嫌われても仕方ないのだ。さっきの言葉もそういうことなのであろう?」
「いや、そんなことないよ、ああでもしないと君たち泊まらないと思ったからね、ラードンと作戦会議の上でやったことだから。僕はそんなに怒ってないよ。」
「”そんなに”ということはちょっとは起こっているのだ!やっぱり我はリオに嫌われたのだ…」
「強いて言うなら起こっているのはオーガンの方かな、だって僕が誰か別の女性に取られるとわかると目の色変えて僕に迫ってくるわけだから、それでいてヴァルキーとかカボディアとかに刺激を与えたわけだから、正直なら性格補正でもしてあげたいことだけど、僕の負担が大きくなるし、彼女はスフィールド村の村長だからどうにもできないな~だから今後はスフィールド村に立ち寄らないとかしか対策方法がないかな」
「なんだ…と言いたいところだったが、その刺激で反応してしまった我も悪いのだ。繰り返しにはなるが、本当に申し訳ないのだ…」
「反省したならよし、あ、ちなみに許可なしで出かけるの禁止はさすがしないよ。あの場面では脅しと言ったら悪いけど、戒めも含めての発言だったから。でも、戦闘でボンボンビームなり、ビーム玉なりを打つのはさすがにやめてほしいな。危ない」
「分かったのだ…さすがに、もういきなりあの技は使わないのだ。あと、あの場面で我たちを止めてくれてありがとうなのだ。我はあの時、このままライバルを倒してしまえばいいなどと考えていたからの。さすがに愚か過ぎたのだ。あの蹴りは痛かったが、目を覚ますにはいい薬だったのだ。」
「いや、その後邪魔するなとか言ってたからそこまで影響なさそうだったけど…」
「うっ…それは…リオだと分からなかったのだ。にしても、リオはよくあの混沌とした戦いを一瞬で終わらせたのだ。」
「やっぱり人でもドラゴンでも感情で動いてるときは動きが単調になるから、僕の動体視力なら全然余裕だった。むしろこの間のゴーレムとかマグマドラゴンとかの方が何倍も厳しいよ」
「あれは比べちゃダメなのだ」
「まあね、で次どうしようか?どっか行きたいところある?とりあえず遺跡探索は終わっちゃったし。にしても結構いい収穫だったな~いろんな情報が得られて」
「特にないのだ、リオと一緒ならどこにでも行くのだ~♪」
「じゃあ散々迷惑かけたギルドだけど、明日色々聞いてみるかな」
「そうするのだ!」
こうして、明日以降のプランをギルドに聞きに行く方向で決まった。一応ギルドにはオーガンがいるみたいだが、そこはあっちが管理しているから大丈夫だと思いたい。気付くと外は薄暗くなっており、今日の事件で疲れたので、少し街に繰り出し夕飯をいただいた。その際には町の人に事件のことや遺跡探索のことで色々絡まれて楽しかった。しかし、やっぱり疲れがたまり、最後の方はやつれていただろう。ホテルに戻り、そろそろ夢の世界に向かおうとしたときのことだった。
「リオ、今日の出来事でリオがやっぱり大好きなことが再確認できたのだ。今日は甘えたい気分だから抱きついて寝たいのだ。いい?」
「暑くならない程度なら構わないよ」
「ありがとうなのだ♡」
今日はいつもよりヴァルキーが甘えん坊になっていた。もちろん動じず寝ようとし、眠りについた。その直前、布団がもぞもぞと動き、ちょっと息が荒くなっているのが聞こえたように感じたがそのまま志向も巡らせる暇もなく眠りに落ちた。
翌朝――
「リオ、昨日のは…聞こえてたのか?」
「ん?何の話?」
「いや、なんでもないのだ」
「なんだか歯切れが悪いね、まあ言いたくないなら無理に言う必要はないけど…」
ヴァルキーがたじたじになっており、僕は不審に感じた。しかし、ヴァルキーには彼女自身の秘密があるだろうということでここは干渉を避けることにした。多分これであってるよな?そんなこんなで、若干気まずい空気が漂いかけたが、すぐに朝食の時間になったので、二人して準備をして下のバイキングへ向かった。
「そういえば、昨日はここ来てなかったよね?」
「そとに変な気配を感じてホテルを飛び出したから個々のことなんか気にも留めてなかったのだ~こんなおいしそうなご飯がいっぱい置いてある所ならあんな奴無視してここでご飯食べればよかったのだ」
「これ見たときヴァルキーいっぱい食べれて幸せになるだろうな、とは思ってたけど、まさかそれを無視するなんてね、いや~必死過ぎだよ。僕どうせあの場面では結論を出そうとは思ってなかったし」
「え?そうだったのか?我としては今すぐにでも結論、いや我と一緒になって欲しいのだ。他の女のところに行くなんて考えられないのだ!」
「多分3人ともそんなこと言うに違いない、まあとにかくオーガンはどうにかあっちで処理してもらうことになったけど、カボディア含むあの三人は一体どうするつもりなのかね?だって彼女らの本拠地フィランデルでしょ?ここから2週間はかかると思うけど…」
「へ~?リオ、我の前で他の女の子と考えるのだな~?いい度胸してるの~?」
「あれ、ヴァルキーさん?オーガンにでも影響受けましたか?」
「ちょっと独占したい気持ちが抑えられなくなり始めたのだ」
「重度なヤンデレとメンヘラはお断りしてるからよろしく」
「そんなことは分かっているのだが…今こうしてる間にも…」
「よし、一旦ご飯に移ろう」
何だかヴァルキーが暴走しかねない予感がしたのでとりあえずご飯に気をそらせることにした。僕は昨日はこの世界に来てから初めての和食を食べた。どうやら、この食べ物はエンゲルの北部から中部にかけての郷土料理らしい。いつか行ってみたいな~それはさておき、今日は洋食メインで食べた。パンに、スクランブルエッグ、ベーコンにエトセトラ…とまあかなり優雅な朝食を済ませた。ちなみに、ヴァルキーはこのバイキングのメニューを1人前片っ端から平らげていった。食事後はまるで漫画家のようにお腹を膨らませて満足げな表情をしていた。ここに宿取って正解だったと思う。その後バイキングを後にし、
「どのメニューもおいしかったのだ!また明日も食べるのか?」
「多分明日最後だろうね」
「ええええー?もっと個々の宿に居たいのだ、毎日この朝ごはん食べるのだ~」
「一応この宿僕は無料で泊まれるんだけど、さすがに毎日あの量のご飯はね…宿に申し訳ないって思う。でも大きな理由は今回の探索では魔法使いと多少の魔法、”神”については分かったんだけど、それはあくまで魔法使い視点の話。今度は”神”視点の情報が欲しいかなってね」
「なるほど~それなら我も同行するのだ、もちろんあいつらは一緒に来ないで欲しいのだ」
「僕の負担デカくなるからそれはしないから安心して」
「ふ~んさっきはその女の話してたのだが?」
「ご飯では変わらんかったか…」
結局、若干の重い感情が残った状態になってしまった。今度からは気を付けようと心に決める僕であった。
どうも、winger86です。今回もお読みいただきありがとうございます。さて、このお話は前回の事件の処理がメインのお話でした。いかがでしたか?最近、物語がだんだんと広がりつつあり、小説を書くことの大変さを実感しています…次回以降からだんだんと次のフェーズへ移行していきます。お楽しみに。それでは、次回のエピソードでお会いしましょう。
※この回を書くのなんでかとても大変でした…どうも納得がいかず…




