第39話 喧嘩両々々成敗
僕は、現在目の前で行われている喧嘩をどうにか収めるべく、ラードンと作戦を立てた。それが、この鞘に入れた剣で均衡を崩すというものだ。これでこちらの世界に帰ってきてもらう。なにせ、彼女らは嫉妬で目の前しか見えなくなっている。このままでは被害がどんどん拡大しかねない。
「よし、行くぞ! せいや!」
鞘にしまってある剣を思いっきり振り、斬撃を発生させた。3人とも割と固まって戦闘していたので、複数人に当てるのは簡単だった。しかし、驚いたのはここからだ。なんと、3人とも戦闘の流れで斬撃を受け流しており、全員ノーダメージだったからである。
「ありゃ、弾かれちゃった、これは作戦立て直しだな」
そういって、ラードンのところへ一旦戻った。
「全く聞いている様子無かったっすね~もうこうなったら実力行使しか無いっすよ、リオさん」
「正直これをするのは気が引けるけどまあ、このまま続けてもらうのも迷惑なんでね、でも一回声掛けしてみてからでも遅くないよね?」
「まあ、でも早めにしてくださいよ、どんどん周りの草木が刈り取られて行ってるっすから、俺もどこまで持つか…」
「さっきから衝撃波発生しすぎだよね、おけ、じゃあ聞こえてなかったら速攻実力行使するってことで」
「了解っすお願いするっす、モテ男は大変っすね」
「からかうなって」
きついと言っているのは、先ほどからとんでもない威力で金属なり硬い物質同士がぶつかり合ってる。そのぶつかりにより発生した音が衝撃波になっているのだ。どんだけ僕と結ばれたいんだ…そして僕はもう一回近くに寄って声をかけた。
「3人ともストーーーーップ!!!!!話し合いで解決しようーーーーーー!!!」
あっちの世界でも出したことのないほどのでかい声量で話しかけたが、定番の「邪魔しないで!」もなく戦いは継続している。集中力高すぎるだろ…ということで、作戦通り実力行使に出ることにした。
まずは、僕から見て手前側で戦っていたカボディアである。ちょうどヴァルキーに切りかけようとして体勢を整えようとしていたところに、僕が顕の上から鞘を思いっきり振り下ろすと、カボディアは体勢を崩した。
その隙を狙ってオーガンが切り込もうとしているのが見受けられたので、振り下ろした剣をそのまま上げ、オーガンの剣を遠くへ飛ばした。ついでに、距離を取らせるために、少々手荒だがカボディアを剣を持っていなかった右手で思いっきり地面に押し込み、剣を飛ばされてひるんでいるオーガンを鞘でけがにならない程度に突き刺した。
最後に、こちらに気付いていないヴァルキーを鞘で突き刺したときの踏み込みで浮いた足で蹴り飛ばした。
「がっ!」
「うぐっ!」
「ぐはっ!」
それぞれが苦しむ声をしていたがここは心を鬼にして対処する。しかし、威力が強すぎたのか、3人とも倒れ込んでしまった。
「あ、やり過ぎた…」
「何してんすか、リオさん!全員倒れちゃったじゃないっすか」
「ああ、まずい…」
と心配したのも束の間、全員すぐに立ち上がった。
「ええ、強すぎじゃない?」
「これヤバいっすね、どうするっすか?」
とおどおどしていると例の言葉が発せられた。
「「「邪魔するな!」」」
女性同士の男の取り合いでの定番セリフである。大体はここで男側が引き下がるが、僕は対応を変えた。
「黙れ!!! 止めないなら容赦しないぞ…!!!」
もちろん冗談ではあるが、やや圧をかけ過ぎたのか3人とも萎縮し、その場で座り込んでしまった。僕は怒らせると怖い人のあの圧のある笑顔をまねしながら3人に対処し始めた。
「ここに集まれ…」
「「「はい…」」」
「正座!」
「「「はい!」」」
「あなたたちデントロンの人にどれだけ迷惑かけたかご存じ?」
「「…」」
「そうですよね、皆さんパニックでしたもんね」
「よくわかっているじゃないかカボディア、じゃあなんで戦いに混ざった?」
「それは…リオが取られると思ったら」
「僕他の人に迷惑をかけ過ぎる人嫌いなんだよね~どうする?このままだと誰も僕と結ばれるの無理だけど」
「「「それは嫌!」」」
「じゃあ、周り見渡してみてごらん?」
そういって3人に周りを確認させると…
「お分かりいただけた?環境破壊よこれ、生態系崩して薬草取れなくなったら責任取れる?」
「無理なのだ…」
「無理ですね…」
「無理だわ…」
ここでそれぞれが語尾を取り戻し、大分冷静になってきたようだ。
「特にヴァルキーとオーガン!」
「「はい…」」
「どうしてここに僕来たか分かる?」
「分からない」「のだ…」「です…」
「デントロン近郊、つまりここで爆発あったからだよ?ヴァルキーなんかビーム使った?」
「手から出せるやつを一発…」
「ふ~ん? それを僕じゃない人に?死んでたらどうしてた?」
「…」
「次からは絶対に僕が許可するまで使わない、そして僕の許可なしで外出しない!今回の件で信用がなくなりました」
「ええ?それは無理なのだ…」
「じゃあ、また僕を想う女性が現れたらどうするの?そのときは冷静に対処できる?」
「自信ないのだ…」
「だよね、じゃ次オーガン」
「はい…」
「はっきり言う、ストーカーキモイ、監禁しようとするのも気持ち悪い、僕そんな人と付き合いたくない」
「うっ…」
「ちょっ!言い過ぎなのだ!」
「それには私も同意だわ」
「え?それよりも、その行動のせいでこれだけの被害が出てる、本当ならもっと怒られ、罵られる、それは分かっての発言?」
「「いや、それは…」」
「今回は、喧嘩ってことで処理してあげるけど、本来ならもっと重い罪になるわけ。それの引き金はもちろん、オーガンあなたなんだよ。それに乗っかったヴァルキー、カボディアも悪い。それはしっかり自覚して?」
「「「はい…」」」
「話は以上…帰るぞ…」
本当なら僕を取り合わないで…!みたいなことを言って収めるべきなのだろうが、この世界では薬草がなくなるのは冒険者の収入源が失われるのと同義。最悪、ゴルドナ中の経済を揺るがす問題にまで発展しかねない。だからこそ、僕は多少厳しくてもこのような言葉をかけた。その効果は絶大だったらしく、3人とも落ち込んでいる様子だった。これにて反省してくれたらと思うが…とりあえず、デントロンの方へ戻ろう。
「リオさんってあんなに強かったんすね…逆らえないっす」
「あれは演技だよ演技。普段ならあんなことしないから~」
「いや、それは無いっす…」
どうも、ラードンにまで怖がられてしまったようだ。先ほどの現場から10分ほど歩いていると報告書を届けてくれたニトリードが合流した。
「あら?3人とも元気がないようですけど…リオさん何しました?」
「お説教」
「なら、かなり強い言葉でやったようですね。カボディアの方は私たちの方でメンタルケアをしておきますので、他二人はよろしくお願いしますね」
「そうしてくれると助かります。僕も少し冷静でいられなかった節があるので…」
「まあ、仕方ないですよ、多分こうでもしないと止まらなかったんでしょう?」
「おっしゃる通りです」
「まあこれは喧嘩両成敗ということでいいでしょう」
こうして、僕も若干のお叱りを受けつつ、デントロンの町へ歩いて行った。到着すると、どうもギルド長がかんかんのご様子。この後、僕も含め4人でギルド長にこっ酷く1時間ほど叱られることになった。せっかく遺跡探索したのにこれでは意味ない。しかし、その原因を突き止め、解決してくれた僕には感謝の言葉があった。叱られた後なので複雑な感情ではあった。
どうも、winger86です。今回のお話はいかがだったでしょうか?理鳳は自身の力を使ってごり押しで解決してしまいました。もちろん、騒動の発端であるオーガンとその相手のヴァルキーの連れである理鳳もちゃっかりしかれています。仕方ないですね。次回は、この正妻戦争の事後処理と次の目的についてのお話になる予定です。お楽しみに。それでは、次回のエピソードでお会いしましょう。




