第38話 プレ正妻戦争
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我―ヴァルキーは昨日遺跡の探索から帰り、愛しのリオの隣で眠りについた。しかし、朝になんだか宿の外から嫌な雰囲気を感じ、リオには内緒で外に出ることにした。もちろん、昨日リオからもらったこの腕の防具をつけて。
そして、宿の外に出ると、茶色の髪をした女性が一人立っていた。腰から剣を佩いているその女性の目を見ると、我たちが止まっている部屋あたりを凝視してにやけている。何とも気味が悪い女性だ。恐らく、この女性が嫌な雰囲気の正体だと我は確信した。
「そこで、一体何をしているのだ?」
「あら、可愛い子ですね、特別に教えてあげます。実はここのホテルに私の大好きな人が泊まっていまして、同じホテルの場所が分からなくて、最終受付時間に間に合わなかったから、外から眺めているんです。いったい彼は今何をしているのかな?ふふ、考えるだけで胸がドキドキしちゃう」
「そ、そうだったのか…邪魔して悪かったのだ…じゃあ我はこれで戻るのだ」
「あ、そうそうこのホテルに泊まっているリオって人知らないですか?」
その瞬間、我の体に電撃が走った。この女が狙っているのはあろうことかリオだったのだ、そういえば前に追いかけられている女性がいたとか言っていたのを思い出した。
「お前、名前は?」
「オーガンです。あら?口調が変わったということはリオさんのことご存じですね?どこの部屋に泊まっているんですか?」
「そんなの知ったところでどうなる?」
「教えてくれないんですね、ということは…リオに近い人物ということ…つまりリオさんは、またほかの女と連れ添っていた…!浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気…!!!!」
「浮気ではないのだ、我はリオのパートナーだ!」
「はい?パートナー?リオさんの妻は私しかありえない!リオさんだって絶対そう思ってる!でも、私を邪魔しようとしている泥棒猫のあなたには消えてもらう必要がありそうですね…早速と言いたいところですが、場所を変えましょう。ここは北の方に大きな平原があります。そこであなたを消しますね。たとえ、押さなくても容赦はしません。泥棒猫ですから、」
「その勝負受けるぞ!お前はリオの近くにいちゃいけない人だ。だから!もし、我が勝ったら今後リオのもとには絶対近づかないと約束しろ…いいな?」
「ええ、もちろん望むところです。万が一にも私が負けることはあり得ません。なぜなら、この世界で一番彼を愛しているのは私です!愛の力があればどんな相手にだって勝てます!」
「我もリオのこと大大大好きだ。愛の力なら我だって負けない!絶対に勝つ!」
こうして、二人肩を並べながら決戦の地へ向かった。その間は両者ともに一切手を出さなかった。そして、その場所に着き――
「ここで、決着をつけましょう、私も遠慮しません、だからあなたも遠慮しないで戦ってくださいね?」
「我がなめられているようだな。安心しろ、こっちも手加減はしない、全力でいく!」
こうして、リオをめぐる戦いの火蓋が切って落とされたのだった。我はいきなり全力でオーガンを殴りに行った。正直我はこれだけで決着がつくと考えていた。しかし、オーガンは我の全力パンチを見事に剣一本で受け流し、我にカウンターを仕掛けてきた。これには我も動揺が隠しきれなかった。
「おや?渾身の一撃が受け流されて動揺しているようですね。私を見くびらないで下さい。私も剣術は一通り習得しています。高威力の技の受け流しくらいお茶の子さいさいです。」
「でも、そっちも我の攻撃で腕がひるんでいるんじゃないか?その証拠としてカウンターのスピードが遅かった。大口切っているだけで余裕はないのだろう?」
「言いますね~でも、そんなことを言っていられるのも今の内ですよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
こうして拳VS剣の戦いが続いた。
*
「リオさん、もしかしてあの水色というか青緑に近い女の子がさっきの話の子っすか?」
「そうそう…案の定だったな…」
「ということはなんとなく原因は予想がついていたということですか?」
「朝からあの女の子が僕の部屋にいなかったからね~名前はヴァルキーって言うんだけど」
などとラードンとニトリードに話していると、カボディアの様子がおかしいことに気が付いた。まあ、理由は分かる。
「リオを一番好きなのはこの私よーーー!!!!!」
そういって二人の間合いに入っていってしまった。ほら言わっこっちゃない、特攻しちゃった。しかし、通常なら、ヴァルキーが圧倒的に力量で有利となるが、この前もニトリードが言っていたように、恋は人を変えるらしい。それぞれが互角に戦いあっている。三つ巴の戦いとなっていて若干面白いので観察することにし、ついでに報告書を書いておくことにした。
「あ、あなたは!村での泥棒猫ではないですか!いったいここまで何しに来たのですか!」
「あんたを止めに来たのと、リオを私のモノにしに来たのよ!」
「! お前もリオを狙っているのか!」
「そういうあんたはいったい誰なのよ!」
「我はリオのパートナーだ!リオは我の物だ!」
「「そんなわけない!リオは私の物」」
「!」
「です!」
といった形で言い合いをしながら僕を取り合って戦いを続けている。正直カボディアもオーガンもここまでの実力があったとは思っていなかった。
「今のリーダーこの間より動きが早くて無駄が無いっす。正直短期間でレベル上がりすぎじゃ無いっすか?」
「そうね、この間のスフィールド村の戦いの時よりも動きが洗練されてる。ついでに前に戦ったオーガンさんも同じく進歩してる。そして、あのヴァルキーさん?はそもそも剣無しであそこまでやりやっている。あの腕の防具があるとはいえ、とても身体能力が高いんですね。さすが水龍といったところですね」
「そうだね、一応報告書は書き終わったから申し訳ないんだけど、増援要請の取り消しと、この報告書の提出お願いしていい?多分斥侯の方が早いでしょ?」
「もちろんいいですよ、その代わりティアの子と頼みますよ。多分あの3人を止められるのはあなただけでしょうから」
「任された!じゃあそっちもよろしくね」
こうして、ニトリードに頼み、ギルドに報告書を提出してもらった。残った男性陣2人は少しだけ作戦会議をした。
「僕がフィランデル流剣術上級を取得しているのは知ってる?」
「それ本当だったんすね、ここまでくる中で明らかに実力が高い人だとは思ったっす。」
「それでね、上級技には実はこんな技があるんだよ」
と言って、とある技を木に向かって放った。その技により、直径1mほどの木が切れた。ラードンに見せたのは上級技の斬撃を飛ばす技である。この技は、上級で最初に教えられる技で、最長射程範囲は人によるが、20m以上とされる。参考までに、僕は最大30m飛ばせる。これでも、師匠には及ばない。
「ええ…これ当てる気っすか?あの3人に」
「多分、ヴァルキーには多少の切り傷程度で済むと思うけど、他の二人は致命傷になりかねないね。だから、威力を抑えるんだ」
「どうやって?」
「剣を鞘に隠せば切れる部分がなくなるから多少は威力下がるかなって」
「どうなんすかね、ちょっとあの木で試してはどうっすか?」
「さっき切ったやつ?」
「ここにはあの木しか近くにないんで仕方ないっすけど」
「やってみるか」
そういって、切られた木のところに向かい、先ほどより近距離かつ、上の細いほうに鞘をつけた状態で斬撃を飛ばした、するとしっかり切れることはなかったが、僕よりも重量のあるこの木が後ろに5mほど飛んだ。
「これでよさそうだね、よしちょっとこれで収まるかやってみる」
「やり過ぎないように気を付けてくださいっす、うちのリーダーが傷つくのは嫌なんで」
「それは僕も同じだから心配しないで」
そういって、ついに戦いの場に茶々を入れに行った。
どうも、wigner86です。本作品を読んでいただきありがとうございます。今回は、ついに始まった正妻戦争の前哨戦でした。いかがだったでしょうか?ついにヒロインの座をかけた戦いが始まりましたが、どうやら理鳳は何かを企んでいる様子ですね。これで更に拗れなければいいですけどね…次回は正妻戦争を何とかして理鳳が対処しようと奮闘します。お楽しみに。それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




