第29話 タイガは続くよどこまでも
飲み屋でちょっとした出来事があった翌日、僕たちは朝から次の町に向けて動き出していた。
「次の町はどこなのだ?」
「次はねロンドに向かうよ」
「そこはどんな街なのだ?」
「こことそんな変わらないよ」
「また、あのへんな男たちに絡まれるのか?もう懲り懲りなのだ…」
「そうだね、今度から僕も気を付けるよ」
「リオもリオなのだ、帰ってくるのが遅い!」
「ごめんね、気を付けるよ」
昨日の観察のことは言わなかったが、謝罪はしっかりと行った。それはともかく、忘れてはならないあの存在のこともあるので先を急ぐことにした。正直次の町のギルドで後方の状況を聞けたらいいのだけど、そんなピンポイントで聞けるかね?そんな一抹の不安を抱えながら先へ進んだ。数時間経って、ヴァルキーがこんなことを言い始めた。
「さっきからほとんど景色が変わらない気がするのだ。我は少人数を自分の作り出した空間に閉じ込める魔法を使えるが、今は使っていないのだ。なのにここまで景色が変わらないのは誰か別の人が使っているのか?」
「いや、普通に景色が同じだけだよ。だって、このあたりただの深い森だからね。仕方ないよ。しばらくはこの景色がずっと続くんじゃない?我慢だ我慢」
「なんか嫌なのだ、龍に変身してさっと進むんじゃだめなのか?」
「それやったらどうなると思う?絶対討伐されて、僕が大変な目に合うことになるからもっと人の救いないところでね」
「人に見えなければいいのだな?なら水の中を泳げばいいのだ!そうと決まれば大きい湖を探すのだ!」
「こっから南に1日ほどかかるけどどうする?飛んで言ったらすぐかもしれないけど見つかったらそこでおしまい、冒険不可になる、そんでもってあなたは想い人を得ることができず、命を落とすことになる。どうする?」
「そっちのほうが嫌なのだ!!!我慢するのだ…」
「分かったならよろしい、今度撫でてあげる」
「…!うれしいのだ~♡」
チョロインの方々はかなり扱いが楽(メンヘラは除く)なのは様々な作品で履修済みなので助かる。それにしてもあまりにも同じような風景が続いて空きつつあるのは分かる。直近は反対側から来る冒険者なり商人なりがどんな人かを見ることくらいしかやることがない状態なのだ。何か暇つぶしはと色々考えている内に夕方になり、そのままロンドへたどり着いた。あまりの長い長考だったためにヴァルキーが頬を膨らませてこちらを睨んでいる。
「どうにかなさいましたか?ヴァルキー様?」
「さっき、リオは我に我慢しろといったな?」
「ええ、そうですわね」
「さすがにさっきの話を聞いて我慢しようと思ったのだ。でも!」
「でも?」
「どうして日差しが真上の時から暮れるまでずっと話かけてくれなかったのだ?さすがに一回我慢の限界がきてリオに話しかけたら、見たことかずっとリオは考え事をしていて我の話を一向に聞こうともしない!そこから何回も話しかけたのに何も返答が帰ってこない!どういうことなのだ!」
「それは申し訳ございません。暇つぶしの方法を考えていました」
「は?それだけ?それだけであんなに長い時間我を無視するのか!?全く…今日という今日は許さないからな…リオ、今日は夜遅くまで付き合ってもらうぞ!今日無視された時間の分!」
「もちろん、お付き合いたします」
てっきり今夜は寝かさない!とか言われるのかと思っていたが、そんなことはなかったようだ。現実はそんなに甘くないのね。現実じゃないけど、え?期待してたって?多分誘われたら断ったけどね~僕はチキンなのでね。相手ドラゴンだし、子供っぽい容姿しているし。まあそれはともかく、今日は睡眠時間が少なくなるのは覚悟しておく必要がありそうだ。そんなこんなで、町の飲食店で夕飯を済ませ、宿に向かい、そのまま夜中の間、ひたすらヴァルキーを撫で続けた。翌朝――
「ちょっと睡眠足りない…自業自得だけど…」
「当たり前なのだ!今度から気を付けるように!」
「はい、重々承知しています。それでは、先を急ぎましょうヴァルキー様」
「なんで変な口調のままなのだ?」
撫で過ぎで手が痛くなってしまった。幸いにも聞き手とは逆の左手で撫でていたので何とか剣は握れる。備えておいてよかったと改めて思う。それはともかく、どうもヴァルキーの肌のツヤが普段よりもいい気がする。昨日撫でただけで?まあそういうことにしておこう。今は眠い目をこすりながら先へ進む。ここ数日はただ進んでいるだけというのもあって本当にやることがないのは事実。昨日思いついた方法は、今後起きるであろう正妻戦争の件についてである。それはおそらくヴァルキーも関心が高い上に、様々な話をすることができそうだ。そう思って、ロンドの町を出発した後、早速この話で暇つぶしを始めた。
「昨日、考え事してたって話したじゃん?」
「それのせいで我がどんな目にあったかは分かっておるのか?あん?」
「それについては再三言っている通り申し訳ない。それは一旦置いておいて暇つぶしに正妻戦争の件について話そうと思う。」
「正妻ってあの罰を与えるほうのか?」
「違う違う、正しい妻のほう。どうせどっかで決着付けないといけないんだ、ここで作戦会議で持ってね」
「それはいいと思うのだ!我もリオを取られたくない以上戦わないといけないだろうしの、で何か考えているのか?」
「おそらく正妻戦争はカボディア、オーガン、ヴァルキーの3人でやるんだろうなって思ってる。まあ、この先で新しいライバルが登場しかねないのは否定できない。ゴルドナの女性はどうも命を救われただけで心酔するほどに好感度が上がるみたいだし。それも含めて、先に1人決めておいた方が自分の身も安全になるかなってね」
「確かに!リオは優しいから人助けしてどんどん女と仲良くなりそうなのは理解できるのだ!それなら我が先に立候補するのだ!それで解決では?」
「あなた初めにまだペットっていう立場なのご存じ?この正妻戦争で手に入れられるのは僕からの恋愛的な好感度、優先的な告白権、そして結婚となった際に一生涯一緒にいるという約束かな。どうかな?」
「つまり、勝てば高い確率でずっと一緒にいられるってことか?報酬としてはいいところだと思うのだ!」
「そゆことだね。こうすれば、女除けにもなると思うし、早めに相手を見つけておくのは悪いことじゃない。ただ、これ注意点があって、もし戦争に負けたら今後は僕は恋愛対象として扱わないってことかな、だからもしヴァルキー以外が戦争に勝ったら今後はその人と一緒に冒険することになると思う。でもヴァルキーは例外、正直一緒に冒険する仲間としてはかなり頼りがいがあるから正妻戦争の勝敗にかかわらず、付いてきて欲しい。正直虫が良すぎるとは思うけど。」
「その通りなのだ。もし負けたら『恋愛対象としては扱わないけど戦いの道具としてなら一緒にいてもいいかな?』って感じに思えるのだ。」
「ん?じゃあこの時点で正妻戦争はヴァルキーの勝利?」
「やったのだ!これでずっとリオと一緒にいられるのだ!これからよろしくなのだ!」
「気が早いって、でも龍と人間って大丈夫なの?僕としては普通に家庭を築きたいけど…」
「我の一族の中には人間と契りを結び、子を宿している者もおる。だからそこは心配しないでいいのだ!ちなみに子供は何人欲しいのだ?」
「だから早いっつの、まだ本当に勝ったとは決めていないし、そういえば勝負方法はどうする?」
「ただ殺し合いのように戦うのではだめなのか?」
「僕もそのつもりなんだけど、それだと圧倒的にヴァルキーが有利なのよ。さすがに、生身の人間VS水龍じゃね。さすがに、だからヴァルキーには少しだけハンデをかけるね。じゃあそれをこれから話し合おうか」
「ちょっと不服だが、仕方がない。ハンデ有りでも負けないのだ!」
そうして正妻戦争の詳細について議論兼作戦会議を進めることにした。
どうも、winger86です。今回も本作品をお読みいただきありがとうございます。さて、このお話はあまりに森が続いたことで起きたトラブルを描いた閑話でしたがいかがだったでしょうか?このお話は基本火山がメインのお話なのですが、最近は若干脱線気味になっていると個人的に感じています。(恋愛系の話が書きやすいと感じているのは事実…)私個人としてももうそろそろそっちの話に戻るべきだと考えているので、このお話と次回含めてその大枠を書いていこうと考えています。火山の話をご期待の方はもう少しだけお待ちいただければと思います。
それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。




