第28話 パートナーの戯れ
トゥーロンをそそくさと逃げ出すように離れた僕たちは、ギルドの人の情報から、初めにブラフォードを訪れることにした。この町は、さほど規模が大きいわけではないが、トゥーロンからちょうど1日で進める限界の距離にあるため、ここを通る冒険者、商人には人気の町である。
街から出て数時間が経ち、湖畔から離れる場所までたどり着いた。
「もう、このウォンタリー湖ともお別れだな~ヴァルキーは寂しくない?」
「あの湖から離れたのは1000年ぶりだからの~むしろワクワク感のほうが大きいのだ!」
「なら心配なさそうだねよし!いざデントロンへ!」
「ハイなのだ!デントロンで何をするのだ?結構慌ただしかったのと、他の女に気を取られてあまり聞いていなかったのだ」
「デントロンにある『オートマ―遺跡』に行くんだよ」
「ああ、そういえばそんなこと言っていたのだ…また、一緒に戦うことになったら我をしっかり頼るのだ!」
「本当に頼もしい限りだね、よろしく!」
こうして目的地の再確認と湖に別れを告げてブラフォードへ続く『ノースプレール街道』を進んだ。この街道は以前の噴火でもあまり降灰があったところではないため、特にこれといった異常はない、診療樹林の中を進む街道だった。トゥーロンとデントロンの間は貿易が盛んなために往来の人数はやはり多い。それこそファースト街道と同等くらいだ。
またまた数時間歩き、僕はふと気が付いたことがある。それは、すれ違う人が皆揃いも揃って僕の右下を見るのである。そこにはヴァルキーがいた。そう、ヴァルキーの見た目はこの世界でも珍しい青っぽいエメラルドグリーンとでも表現すべきだろうか、とてもきれいな髪をしており、その神は腰の上に来るくらいに長い。そして、目はぱっちりとして大きく、顔だちも若干幼く見えるがそれでも整っている。おそらくまだ成体ではない龍なのかもしれない。
つまり、僕は今見た目が目立つ美少女とともに冒険をしている状態にあるということだ。ただ、幸い僕はヴァルキーのことをペットと認識しているので特に問題はない。まあ、ヴァルキーはそんなことないみたいだけどね…
「ぬ? リオ、今我のこと意識して無いみたいなこと考えた、絶対」
「思考盗聴は止めようね…あ、まずい、カマかけられた!」
「やっぱりそうだったのだな!ブラフォードに着いたら覚悟するのだ!」
「冒険終わるまで待って!」
少し気を抜くとこのように猛アプローチが始まる。このやり取りをしていると、すれ違う人はみんな生暖かい目をしだす。多分夫婦喧嘩とでも思われているのかな、そんなつもりないけど。
そんなこんなで、順調に旅は進み、まず1日目の目的地のブラフォードにたどり着いた。外はすっかり暗くなっていたので、さっさと泊まるところを確保し、夕飯のために二人して街に繰り出した。
「リオ、冒険ってこんなもんなのか?何もなくて退屈だったのだ」
「何か起きるほうが辺だって話する?たしかにヴァルキーに会うまで色々あったけど、こっちの平穏なほうが良いよ。さすがに、いつもいつもハプニングばかりじゃねぇ~キツイよ」
「リオは体力あるから大丈夫だと思うのだ。我も今日はあんまり疲れていない、体がなまってしまいそうなのだ」
「まあ、水龍だもんね仕方ない。じゃあ明日はクエスト受けに行こう!」
「クエスト?ああ、この間の遺跡探索みたいのか?それなら体も動かせて楽しいのだ!」
「すまんね、普通遺跡探索クエストは大きな町にしかないの。ここはそういうのは無いから薬草採取クエストかな。受けるとしたら」
「へーそういうクエストもあるのだな~じゃあ早速明日やりに行こう!どんなものなのか気になるのだ!」
「そだね、一応経験しておこう!あ、そんなことしている場合じゃないわ、後ろからヤベーの来てるんだった、ごめんまた今度にしよう」
「えええ?その前に言ってたオーガンとカボディアのせいなのか?許せぬ、こうも我の楽しみを奪いおって、さらに、愛しのリオまで迷惑をかけおって!出会ったらただじゃ置かないぞ!」
「久々に昔の口調に戻ったな。懐かしい。とはいってもまだ1週間もたってないけど」
「いやだったか?もしそうならやめるのだ」
「全然大丈夫よ、気にしないで自分の好きなようにしゃべりな」
「安心したのだ、変なこと言って嫌われたらいやなのだ」
「うぐっ…!僕にもダメージが…」
「リオ?どうしたのだ?」
こうして他愛のない話をしながら今日の晩御飯のお店に入った。その店はいわゆる飲み屋で、他のお店は大行列で入れなかったので仕方なくここに入ることにした。僕とヴァルキーそれぞれ注文をし、ちょっと僕が席を話したタイミングで事件があった。席に戻ろうとすると、油断していたのだが、ガタイのいいお兄ちゃんたちにヴァルキーが囲まれていたのだ。ナンパである。ちょっとこういう時のヴァルキーのあしらい方が気になったので、ちょっと遠くで見守ることにした。
「何の用なのだ?」
「お嬢ちゃん一人?顔可愛いね、この後俺たちと別の店で飲みなおさない?」
「それは我についてこいということか?いやなのだ、話はこれで終わりなのだ、じゃあさっさとどっか行って!」
「お嬢ちゃんつれないな~そんなこと言わず、ちょっとだけでいいからさ、ね?いいでしょ?」
なんだろう、テンプレートのナンパ文句である。本当にこんなこと言う人いたんだ~でも、これって用は絶対失敗するテンプレートだからな~果たしてこのしつこいナンパ男どもを一体どうするのか?ヴァルキー?
「そもそも、我一人じゃなくてパートナーと来ているのだ、一緒にどっか行くならパートナー以外は考えられないのだ、その他の男には興味ない、だからお断りするのだ」
「絶対その彼氏より俺たちのほうが楽しませられるよ、試しにこれからその場所行く?連れてってあげる」
まさかこんな爆速で下心出してくるとは…さすがの僕もドン引きである。果たして、どうする?
「楽しいことって何をするのだ?何かと戦うのか?」
「そうだね、俺たちと戦ってもらうよ、それ用の場所があるんだ、そこに付いてきてくれれば遊べるよ、どうする?」
「戦うにしたって、具体的にどんなことするのだ?」
「それはもちろん気持ちいことだよ」
「戦うことが気持ちいのか?どちらかと言えば達成感のほうが大きいと思うのだ」
「それも気持ちいことだけど、俺たちとやるのはちょっと違うね、とりあえず来てくれれば教えてあげる、さあ」
そういって、しつこいナンパ男どもはヴァルキーの腕を引っ張ろうとした。すると――
「触らないで欲しいのだ!次触ったら許さないのだ」
「許さないって、君女の子でしょ?俺たち男だよ、力で勝てると思う?」
気付かないのも無理はない、かなり完成度の高い、人への変身だ。ぱっと見じゃ女の子、もしくは女性にしか見えない。さあ、怒らせるとボコられそうだけど、ちょっとヤバそうだったら介入することにしよう。
「余裕なのだ、いいだろう、外に出て相手してやる!」
「そういう強気なのそそられるね~いいよ、男には勝てないことを教えてあげよう」
そういって、ナンパ男とヴァルキーの決闘が始まった。さすがに、大事になると面倒なので本当に交えそうになったところで止めに入る。
「最後に忠告だけど、本当に俺たちと戦うの?君じゃ絶対勝てないよ、今ならなかったことにしてあげるよ?どうする?」
「負けることはないのだ、かかってこい!」
「じゃあ遠慮なく!どおリャアアア!!!」
「こっちもなのだ!オリャアア!!!」
なんと本当に戦い始めたのでさすがに間に入ることにした。
「ストップ!」
「邪魔するなよ~今いいところだったのに、誰?」
「邪魔するな!…って、あ!リオ!遅いのだ!」
「もしかしてパートナーってこの人?」
「そうなのだ!リオはかっこいいのだ!だから我はリオ以外に興味ないのだ!」
「ここで告白はいいから、で、この後どうします?僕のパートナーをお持ち帰りしようとしてましたけど?」
「いくら男だからってさすがに複数人相手では勝てないだろう?このまま押し切る!」
「はあ~分かりました」
僕はナンパ男たちに腹パンを一発ずつお見舞いした。
「この人…強い!分かった負けを認めよう、パートナーに手を出して悪かった。俺たちはここで失礼するよ、お前たちもいくよ!」
そういってナンパ男どもはしっぽを巻いて逃げていった。ガタイのわりに言葉口調が優しいのは少し面白かった。
「もしかして我を守ってくれたのか?」
「大事にしてほしくなかっただけだよ、今度は気を付けてね、なるべく穏便に済ますように」
「分かったのだ、店に戻ってご飯食べるのだ」
「そうだね、お腹減ったよ~」
こうして、二人でご飯を済ませ、宿に戻り休息をとった。
どうも、winger86です。本作品をお読みいただきありがとうございます。今回は、ナンパ回でしたがいかがだったでしょうか?もちろん、ドラゴン娘と言えばどの作品でも美少女、もしくは美人ということでその特徴を生かした内容にしました。こっちの世界でも青緑の髪と言えば2次元なら初音ミクが思いつきますが、3次元だとやっぱり珍しいですよね。私も現実では1度しか見たことがありません。そんな珍しい色の挑発と容姿を兼ね備えたヴァルキーをチラ見してしまう気持ちもわかります。ということで、次回はまた別の町に向かいます。ここから先は割と平和な回が続きます。是非お楽しみにお待ちいただければと思います。それでは、次のエピソードでお会いしましょう。
メモ
ブラフォード:
トゥーロンからほど近い宿町。トゥーロンを朝一で出発するとここに日が暮れる少し前に着くことから大きくなった町である。だが、規模はトゥーロンの半分以下しかない。街は基本的に冒険者を労う店舗が多く、おいしいグルメ店、飲み屋が多い。




