第15話 バタバタノース
ウィードたちから受けとったヨウカビジリスのおかげで傷はすぐに回復した。それでも、傷を修復するのに体力を多く使ったのか、宿に着くころには朝日が出始めていたが、すぐに寝付いた。数時間寝た後、外はまだお昼といった感じだった。しかし、なんだか様子がおかしかった。それは、ニュークの警備隊が総動員で誰かを探し回っているのだ。
「見つかったか?」
「いえ、まだ見つかっておりません。ですが、探索していない建物はここだけです!」
「よし! 全員突撃だ!!!」
ちょっと不穏な雰囲気を感じる。
「もしかして僕を探しに来たとかいうんじゃないだろうね? 一応ここあのカジノ街からまあまあ離れた州侵害にほど近いはずなんだけど、こわ」
昨日あのサンバルスのスロングを切ってしまったため、何らかの事情聴取を受けるのだろうと思った。
「まあ、人切ったらどのみちこうなるよね~」
と独り言を発してすぐに自室のドアが叩かれた。
「ここに誰かいるか? いるなら返事をし、ドアを開けてくれ。」
と優しい口調で言いながらも、その声の後ろのほうでこのドアを打ち破る準備をしているような声が聞こえた。なので、仕方がなくドアを開けることにした。ここで下手に逃げると余計怪しまれるからね。
「はーい、何か御用ですか?」
「貴様、この顔の人物と似ている!警備本部までご同行願いたい。」
「ちなみに何の容疑がかかっていますか?」
「それは答えられない。本部まで来い。」
なんかよくわからないが、手錠をかけられ、ニュークの町はずれにあるニューク警備部隊本部まで連行された。取調室にて――
「貴様、名前は」
「リオです」
「名前まで似ている。この人物が身内にいなかったか?」
と渡されたのは自分の自画像と名前のリーである。容疑は『殺人』であった。やっぱりである。仕方がない白状しよう。
「リーは僕の偽名です。これは僕本人で間違いないです。」
「なら、貴様にかけられている容疑は見ての通り殺人だ。昨日の夜中、カジノ街を歩いていた一般男性をリーと名乗る男が切りつけ、その後その男性は死亡した。というものだ。この容疑に間違いはないな?」
「容疑を否認します。なぜなら、その時間は僕は別の場所にいたからです。」
「なんだと!? この期に及んで容疑を否認するだと? だが、一応アリバイはある。それがこれだ。」
と言って見せられたのは例のコロシアムカジノの隣のカジノ店であった。そこに僕と被害男性らしき人がおり、ちょうどナイフで刺された場面であった。この写真をよく見ると、僕と同じような服を着ているものの、僕に比べて圧倒的に背が低いように感じる見た感じでは150cm後半くらい?すこしこちらからもどのくらい検証したのかを聞いてみることにした。
「どうしてこれが僕が犯人であると確信したのですか?」
「この事件があって現場に急行した際、この被害男性が犯人をリーと名乗っていたことを言ったからだ。そして、その男性が応急処置を受けている間に、犯人の特徴を聞いて似顔絵を描いたのだ。それがこの写真だ。本人が言ったのだ。これは間違いないだろう。結局応急処置を済ませたが、彼は助からなかった。遺族のためにもすぐ罪を認め、償え!」
「ちなみに、こちらからいくつか質問を良いですか?」
「ダメだ。認めない。」
こりゃ駄目だ。認めるまで動けない感じだ。この世界では殺人がどの程度重いのか分からなかったので、絶対に認めるわけにはいかない。あっちの世界では、1人なら無期懲役、2人以上なら死刑が多いって聞くし。
「どうも、写真を見る感じ自分に見えないです。似顔絵も同じような顔の人がいる可能性があります。もう少し検討を重ねてみては?冤罪ならあなた方の面目が丸つぶれですよ。」
「ごちゃごちゃ言うな! さっさと罪を認めろ!」
検察官らしき人が苛立ちを露わにしてきた。机を「バン!」と叩き、脅しのようになりつつあった。もしかしてどこからか圧力がかかってる?あっちの世界のテレビ番組でこういう経緯で冤罪になったのを見たことがある。裁判所とかないのかな?とりあえず、観念して答えるまで質問攻めし返すことにした。この時すでに検察官は罪を認めろbotになっていた。
「被害男性の身長は?」
「知らん! なんで否認する! このような写真まであるんだぞ!」
「事件の時刻は何時ですか?」
「教えん!」
「犯行に使用された凶器はどこですか?」
「知らん!」
「その凶器から指紋は見つかりましたか?」
「指紋とは何だ?お前の使った凶器の名前シモンというのか! ついに白状したな!」
「僕の身長はご存じですか?」
「そんなことに興味ない! 今の凶器の名前でお前は罪がより明白になった。それでも未だに否認するか!」
「正直こんなことまで調べていないなんて警部部隊の取り調べ人たちは何をしているのでしょうか?」
「貴様! 俺たちを侮辱するのか! 許さん!」
「いえ、私は何をしているのですか?と聞いただけです。」
「黙れ! お前の罪はもう確定しているんだ! こんな悪あがきをしていないでさっさと認めろ!」
びっくりするくらい聞き分けの無い人である。と思っていたら、この図体のでかい検察官の部下らしき人が外に出ていった。さっきまで隣でメモを取っていたのだ。代わりに別の人がメモ要員として入ってきた。そうして、押し問答を繰り返すこと数時間、さっきのメモ係が髪を持ってきて、検察官に手渡していた。するとメモを渡した人が――
「申し訳ございません、先ほどよく精査したところ、被害男性の身長は170cmほど、犯行時刻は夜中2時、先ほどその周辺のカジノの記念写真データを調べたところ、このお店の隣のカジノに11時ごろに入店し、朝5時まで店から出ていなかったことが判明しました。また、この証拠写真から推測するに、加害者は身長160cm前後であると推測でき、あなたの冒険者カードを調べたところ、身長も合わないことが分かりました。そして、あなたの所持品、宿泊施設、ニューク中のゴミ箱を点検したところ、凶器が見当たりませんでした。そのため、あなたにアリバイはありませんでした。この度はこのような杜撰な捜索態勢によりあなたをご忍耐をしてしまい申し訳ございませんでした。ちなみに、真犯人のほうは見つかっており、サンバルスのメンバーだったそうです。何か心当たりはありますか?」
「そうですね、昨日その隣のお店でコロシアムカジノをやった…あ、」
「なるほど、そこでサンバルスのメンバーと確執が生まれたということでしょう。あのお店はあまりに治安が悪く、私たちでも取り締まれないので、そこであったことに関しては今回は不問とします。次に同じ場所に向かった場合は正式に殺人としてまた逮捕しますのでよろしくお願いします。」
「本当にすいません…」
「俺は認めないぞ! 俺は自分で探した証拠しか認めない!」
「そういうのは止めてください、今回のその発言はさらに上のほうにご報告させていただきますので」
「何…? それだけはやめろ! クビになってしまう! これは上司命令だ! 今すぐ報告をやめろ! 貴様、絶対に許さない! ここで俺が直接死刑を言い渡す! 覚悟しろ!」
そういって僕に襲い掛かってきた。もちろん、メモ部下は止めることができず、一直線にこぶしを振り下ろしてきた。
「もうこの人は制御できません! 今回ここから逃げたことも正当防衛として処理しますので心置きなく逃げてください!」
「すいません!!」
そういって本部を爆速で抜け出し、本部の近くで待機していたサンバルスのメンバーとさっきの検察官に追われながらニュークを後にし、再び北へ向かった。
「なんで追手が増えてるの!?」
どうも、winger86です。いつも本作品をお読みいただきありがとうございます。今回は、ゴルドナ最大の都市をお尋ね者(?)という形で抜け出すという話でした。いかがだったでしょうか?次回はまた火山に関する話に戻っていきます。これからも毎日投稿を続けてまいりますのでよろしくお願いいたします。それでは、また。




