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天星UNFOLD〜占星術士の群青戦記〜  作者: 逢松十五
第1章 A rising stars編
4/29

第三話「誰が為に振るう力」

前回までのあらすじ。


土壇場で覚醒した異能力により、

謎の少女月見里伊月を助ける事に成功した

星宮は、突然現れた青年、鳴島神凪の誘いに乗り、

A.S.A.U.防衛大学附属中高一貫防衛専門学校

通称「A.S.A.U.防衛専門学校」に転入し、その力を

人の為に使う事を決意する。

記録:2036年 3月14日

東京都. シブヤ区某所┐


A.S.A.U.異能科学技術研究所職員2名が、

東京都上空およそ1500m

にて、黒がかった紫色の

水晶のような構造物が、

浮遊しているのを確認。

すぐに、魔力視認化(イドグラフィー)カメラを用いて簡易測定したところ、

活性化していないB-(ビーマイナス)(クラス)

特異点(インターポイント)と同程度と断定。仮に地上に落ちてきた際の

予測地点は、17年前、特異点(インターポイント)収れん爆破(エクスプロージ)による壊滅と魔境化を起こした

旧新宿(シンジュク)封鎖区域(ロックタウン)であると断定。

封鎖区域には派遣調査隊(ハウンズ)を動員し、

調査を開始した。



_______________________________


2036年 3月13日 東京都スギナミ区

時刻AM.6:30 ─


この日、俺は朝早くから家を出発し、

A.S.A.U.防衛専門学校があると言う、

東京都スギナミ区に向かっていた。

かつての学校のクラスメートには

転入する事になった旨を伝え、

別れを告げた。

意外にも、別れを惜しんでくれる人達は

いた。

それこそ、高橋なんかは大号泣しながら

俺に(はなむけ)の花と寄せ書きを

渡してくれた。

隣に恋人を携えて。


「この季節だと、まだこの時間は日が上り始めるくらいだよなぁ。」

朝焼けが、車窓から見える。

夜と朝のちょうど境目。

美しい景色だ。


そういえば、防衛専門学校は、

俺の地元から遠い為、学校の生徒寮

での生活になるらしい。

衣類やある程度生活に必要なものは、

キャリーケースに入れて父さんが

用意してくれた。


電車に揺られながら、窓の外を見ていると、たまたま隣の席に座っていた

老夫婦が話しかけてきた


「あなた、学生さん?」


「え、あ、はいっ、そうです。

今年で高校生になりました」


いきなりのことで、ちょっと反応が

キャドってしまったが、老婦人は

微笑みながら続けた。


「一人旅かしら?若いのに凄いねぇ」


「あ、いえ俺、実は地元を離れて

ある学校に転入するんですよ。」


「あら、そうなの?凄いわねぇ

決心できるってことは、強い心を持った

いい子なのねぇ」


強い心を持っている……かは分からないが確かに相当な覚悟で決心したつもりだ。

ただ、ちょっとリアクションをどうすればいいのか分からなかったので、

あはは…と笑ったら、

「おい母さん、その子困ってるだろう。

お前はいつも若い子に話しかけ─」

「いいじゃないですか、お父さん

若い子が1人で長い距離を移動してるなんて、話しかけちゃうでしょ?」

「むぅ……」

老旦那と老婦人は、とても円満な関係なのかもしれない。そう思った。


老夫婦と色々話していたら、

目的地の萩窪駅に着いていた。

ここが目的地なんで、そろそろ。

と、一言言うと、

老旦那は、

「そうか、ふむ、まぁ、達者でな」

と、少し寂しそうに言っていた。

俺も、何だかんだ楽しかったし、

ちょっと寂しかった。

老婦人は、

「寂しくなるわ、でも、新しい生活頑張るのよ、おばちゃん、あなたの事を応援するわ」

と言って、俺を送り出してくれた。

俺は、まるで春の朝のような

とても爽やかな気持ちで

電車を降りていた。─


爽やかな気持ちは、一瞬にして冷めやった。

道に迷ってしまった。だって、

土地勘がなかったんだから。


とはいえ、スギナミ区は

とても緑が多く"空気が綺麗だ"

迷ってしまうほどの広さと建造物があるのに、植物も共生してる。

俺の実家がある、八王子の山の中くらい

空気が澄んでいる。


と言うのも

昔はどうか知らないが、

スギナミ区は国内有数の

テクノロジー&グリーンシティ。

それも、先進的なものをかなり取り入れている。

その理由はなんでも、スギナミ区には

A.S.A.U.異能(いのう)科学(かがく)技術(ぎじゅつ)研究所(けんきゅうしょ)

通称「異能研(いのうけん)」の本拠地があり、

日夜、現代科学と魔術を融合した

魔道具を発明し、エコでクリーンな

エネルギー源を使った都市開発が

行われているそうだ。

道中、木かと思ったら空気清浄機だった時は驚いたが…


さて、話は戻るが、

俺は迷っている。

一体、どこに学校があるのだろう?


キョロキョロとしていたら、上空に何か小さいものが見えた。

何だあれは?紫っぽい色の……粒いや、水晶か?

方角的には多分東の空だ。

あんなのもあるのか…凄いな東京の中心地って。


色々と彷徨っていると、後ろから声が聞こえてきた。


「あはは、いたいた

君、めっちゃ迷ってんじゃん」


その声の主は神凪さんだった。

相変わらず長身で、すらっとしてて

美人さんって感じだ。


「土地勘ないならマップで検索すればいいのにさ、もしかして新しい学校で浮かれてたー?」


ちょっと。いや、だいぶ鬱陶しい表情で

そう言われてムカつきかけたけど、

正直図星でぐうの音も出ない。


「はぃ………正直わくわくしてて、そんな考え浮かびませんでした」


「あっははは!ほんと面白いね君

うちの生徒たちにはない個性してるよ

ホント」


そんなに珍しいのだろうか、

自分みたいな普通の人間。


「まぁ、立ち話もなんだし、とっとと

行こうぜ、少年!」


この人、ちょっと思ってたけど、

なんか軽薄っていうか

ノリが軽いって言うか、

教師としてはどうなんだって性格してる気がする。

人のこと面白がるし。


そういえば気になることがある。

「神凪先生」


「ん?」


「あの、空の上にある紫色のクリスタル?

って何ですか?あれも、なんかA.S.A.U.の防衛装置だったり?」


「あー、本当だー何だあれ……

私も知らないっていうか……

ほんとに何だあれ?……」

(怪しいなありゃ、ちょっと異能研の奴らに調査させようか。後で連絡しておこう。)


「え、知らないんですか?

神凪先生でも?」


「うん、ごめんね私も今確認したから……あれが特に何事もない事を祈るよ」

なんと、神凪先生みたいな何でも知ってそうな人も知らないとは、まぁ、そんなもんなのかな

それはさておき、

神凪先生の案内で面白いほどスムーズに

学校の正門前まで着いていた。

凄いところだった。

白を基調としているのは学校らしいが

学校の塀は結構高いし、

なんか半透明のドーム状のバリアみたいなのが張られてるし、

学校っていうより……


「要塞みたいだ……」

と思った。口に出た。


「要塞みたいでしょ?

でも実際、滅多にないと思うけど、

もしスギナミ区が襲撃されたら、

うちか、防衛大学の領地内が、

避難所になって最後の砦になるんだ。

まぁ、そうなった時はもう、

極限状態だろうけどね」


衝撃だ。本当に要塞だったなんて。


「ちなみにぃ〜……君が迷ってたあの街

実は丸々A.S.A.U.防衛大学

及び防衛専門学校の学園都市でぇす!」


「え゛………」


まさか、そんなまさか…

あの広さが丸々?

頭がおかしいのでは?


「あと、一応辞書の定義上の学園都市

じゃなくって、

政府の方々がこの学校を建立する

にあたって設定した、

誰でも出入自由なだけの学校の敷地内なのですねぇ…」


いやぁーすばらしい!と、

なんか興奮気味に拍手をしながら

神凪先生は説明していた。


「おっと、さて、今日は転入日ではあるけど、書類だけじゃ君のことがわからない。

って事で、学長に会ってもらって、

軽ーく面接してもらいまーす。

私からの援護射撃はないから、

覚悟してよー?」


ごくりと喉を鳴らした。

援護射撃がない。

即ち、自分だけの力で

認めてもらわねばならないという事か!


なんか、凄く…凄く!

緊張してきた。


学長室に着くまでの間に、

神凪先生からこの学校の歴史を学んだ。

この学校は、源流となっているのは

1000年前、国を守るための

陰陽術や呪術など、

そう言った力をうまく使えるように

教育する陰陽塾。

ただ、その後の度重なる戦乱や、

災禍に見舞われ、一度は壊滅した。

しかし、ちょうど150年前

各国列強ができたり、

ノルマントン号事件が起きたりした

辺りの時代。

いざという時に列強と対抗できる

異能力者を育成するための専門学校を作ろうという事で、1000年前に陰陽塾を開設した人の子孫が、その意思を受け継ぐ形で、国立妙術学校を建立。

しかし第二次戦を機に一旦は閉校となった。

ただ、第二次戦後、魔洞が活発になった事で、やはり防衛の措置は必要だと、

再度、異能術教育学校と名をあらためて

数多くの精鋭異能力者を輩出した。

80年前に起きた世界中を巻き込む

特異点災害。それを機にできたW.S.C.O.

日本も、それに加入して、異能術教育学校で育った異能者を集め、防衛省直属の

魔洞対策組織。その名も「対特異殲滅部隊」通称、対特を設立した。

それと同時に学校も対特異能防衛大学へと名を改めたが、

それから少しばかり時が経ち、大学の過程だけでは質が追いつかなくなり、

中高一貫の附属専門学校、

対特異能防衛専門学校を設立した。

また17年前に対特異殲滅部隊の略称が

「A.S.A.U.」へと変わったのを機に、

防衛大学も、防衛専門学校も、

対特からA.S.A.U.へと名を改めた。

よって、A.S.A.U.防衛専門学校は

今で大体創立75周年だそうな。


「さて、着いたよ。

ここが学長室だ。」

重厚そうな木製の扉を、

神凪先生がノックをした

「入れ」

と渋い声がそう言ったと同時に

青白い光の紋様が浮かび上がり、

扉が、一人でに開かれた。


「っ……!?」


なーにこれすっごいかっこいいー!

え、そんなSF映画とか

異世界ものとか、漫画みたいな事が

実際できちゃうんですかー?!

てか、絶対この学長室の扉は

学長の趣味だろ!

さて、中にいたのは

黒髪で、ちょっと白髪混じりの、

うねった肩まである髪の毛をもち、

素晴らしくダンディーな髭を蓄えた

中年くらいのいわゆるイケおじ

と言うやつだった。

ただ、左目は黒い眼帯をしているし、

なんか顔傷あるし、目が怖い!

人何人もヤってますみたいな顔してやがる!

このせいで、

俺はマジで面接辞めたいかも。

と思ってしまった。

でもきてしまった以上は仕方ない。


「よ、よろしくお願いします!

星宮澄空です!

趣味は星座観察と占星術!

あとちょっと剣術とか齧ってました!」


深々と頭を下げて挨拶をする。


「私は学長の海原廻(うなばらめぐる)……まぁ、そう固くならずに、

ソファーに一旦座りなさい。」


思いの外柔らかい表情で、

学長殿は来客用のソファーに案内してくれた。

そして向かいのソファーに座ると、

机に肘を置き、口の前で手を組む。


「さて……何しにここにきた。」


何しに?あぁ、

本校を志望した理由は何ですか?

と言う事だろうか?

じゃあ言うべきことは一つだ


「はい!御校に転入を決めた理由は、

自分の力を誰かの─」


「違う」

一瞬、空気が重くなった。

比喩じゃなく、マジに

こう、ずんっと空気が重くなってのしかかる。

そんな感じが…した。


「そんな形式的な儀礼はいらん、

私が問いたいのは、()()()()ここへ来た?ということのみだ。

お前がその力を人の為に使いたいのは分かっている。

ここにいる者たちは皆そうだ。

だが、その果てに何を求める?

何を目標とする?

お前は前にいた高校の面接の時、

『御校で学べる事を全て学びたいです』と言ったか?

お前はきっと、『御校で学べる事を学んだ後は、大学に行きたいです』だの『就職を見据えています』だの言ったろう?

それはうちでも同じだ.それを言えて初めて、面接官は合格とする。

お前はどうだ?うちで戦いの術を学び、切磋琢磨し、一体何がしたい?」


なるほど、確かにそうだ。

俺は勘違いをしていた。

ここはただ戦いを学ぶだけじゃない。

要項書にも書いてあったが、

任務にも出る。

そうして最終的には

A.S.A.U.の正規隊員として戦う事になる。

生半可な覚悟じゃダメだ。


「俺は、目の届く範囲、手の届く範囲で人を助けたいです!

その為に、A.S.A.U.の正規隊員になりたいです!

だから、ここで防衛や戦いの術を学ばせてください!」


と言って、俺は頭を下げた。

我ながらいい下げっぷりだと思った。

勢い余って、額を机にぶつけてしまった。


「……基本…中等部からずっとここで教育を受けてきた子たちばかりだ。

一般の出でしかも高等部からの中途入学は、異例だ……まぁ、前例がなかったわけではないが、恐らくは茨の道になるだろう。覚悟はあるか?」


そりゃ、怖い。だって、

命をかける場に身を投じるのだから。

でも。

そんなの答えは一つだ。

「はい!」


沈黙が生まれた。あれ?返答間違えたかな。


「……合格だ。その返事が聞きたかった。神凪がわざわざ紹介したんだ。

そんな事をコイツがするということは、君は相当な逸材なのだろう。」


俺は安堵のため息をついていた。


「廻君さぁ……本当はどんな言葉でも合格にするつもりでしたでしょう?

この子、一応転入試験ほとんど80点くらいの優秀な子だし。」


「筆記では分からんこともある。

口頭試問こそが人を見る為には

最適なのだよ。」


こうして、俺は無事転入試験を突破した。

去り際、廻さんが、「似ているな…君は」と言われたが、すぐに咳払いをして誤魔化されてしまった。なんのことかはわからなかった。

兎に角。

俺はこれからこの学校で、

新たな青春を過ごす。

だが、この時はまだ知らなかった。

この瞬間が俺の人生の大きな

ターニングポイントになっていたとは。

十五です!ここまで連続で見てくださったらもう、

私、感無量の助侍!

さて、星宮君はやっとスタート地点に立ちました!

しかしやはりポッ出の転入生ですから、

それが気に入らない奴もいるわけですなぁ。

次回第三話「初めましてと一波乱」お楽しみに!

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