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天星UNFOLD〜占星術士の群青戦記〜  作者: 逢松十五
第3章「影の支配者」編
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第二十一話「影の支配者ジェミラ・シードライヴァー」

「澄空くん…!!危ない!!」


ミリアポーダと対峙している星宮の元に

特異点の中から、何かが飛び出すのを、

桜庭桃李は視認した。

そこからの彼の行動は早かった。

理力で身体を瞬時に強化して、

その影に突進し、阻止する

そして【桜花万燗】の桜の花弁で

自身の背中を押して窓の外へと脱する。


三階からの落下高さはまぁまぁだが、

着地をミスれば死ぬ。

謎の魔洞を下敷きにしながら、

五点接地による着地で、体勢を立て直して、刀を構える。


不測の事態に備え、

この辺りの人たちは避難させており、

そして通行も止められている。

存分に戦えはする。


「何者?……」


桃李はそう問うた。

言葉が通じるやもしれない相手だ

そう感じたのは、奴に飛びついた時。

確実に人の形をしていたから。

その黒い影は、ゆっくりと立ち上がる。


「いってぇ……なぁ?…」

「…オレの事が知りてぇって?……オレは…」


立ち上がった人物は

チェーンや銀の装飾がついた黒い革のパンツに、白いシャツ、黒い革ジャンを着ている、中性的な顔立ちの黒髪短髪の少女だった。

そして奴は名乗る。


「オレは、ジェミラ…ジェミラ・シードライヴァー……影の支配者だ。」


「僕は桜庭桃李……よろしく。」


「ハハッ!何がよろしくだ。

オレたちゃ今から殺し合いをするのによぉ?…まぁ、宜しくなぁ?」


そう言った瞬間、彼女の足元から

青い輝きを放つ黒い影が広がる。


「影操作……」

(なるほど…()()()と似た能力かな)


「ほらほらどうした?早く逃げないと

影に食われちまうぞ…?お嬢さん」


「ご忠告ありがとうございます♪

あと僕、男です」


足元に広がってきた影を跳躍で避けながら、桃李はそう答えた。

すると、ジェミラは驚愕したような顔で言った


「は?お前が男…?いや、まぁオレも男に見紛われるから言えねぇか…」

「まぁ、んなこたぁどうでもいい!!」


影がさらに広がり、刃のように飛び出て

桃李を襲う。しかし

「【桜花万燗】」


彼が指先で刀の側面を軽く撫で、

そう唱えると刀が砕け、2センチ四方の

桜の花弁型の刃がそれら影を相殺する。


「うふふ、びっくりした?僕の異能力は、触れた鉄を桜の花弁型の刃…

桜刃(おうじん)』に変えるんだ。」


「へぇ、おもしれぇ、

何でわざわざ情報を晒す?」


ほくそ笑むようにジェミラが尋ねる。


「だって、その方が…楽しいじゃん?」


そう、彼はいつも戦いを楽しんでいる。

と言っても戦闘狂いという訳ではない。

戦闘という非日常で、それでいてキツいことをするくらいなら、

楽しんだほうがいいと考えている。

わざわざ情報を開示するのは

そういうことだ。

でもそれだけではない。

自分の異能力が言伝的に広まれば、

相手にとっての脅威となりうる。


「へぇー、楽しい、ね……

じゃあオレも…オレの能力は『無因影界(ゼロコードシェーダー)』…影を操る能力だ…副次効果もあるが…ま、見りゃわかる」


影が波のように押し寄せて、

桃李に襲いかかる。

桃李は当然桜刃を用いて

それを凌ぐ…が、

刃で凌いだ瞬間に、桜色の光を宿していた桜刃が、その光を失い、刀へと戻ってゆく。そして元の刀身の形に戻る。


「これって……」


異能力が、解除された。

そして影が桃李に近づいてくる。


「そう、それがオレの影の力…

2回以上異能力と打ち合えば、異能力を強制解除できる。無因(ゼロコード)ってのはそういうこったな…じゃ…さよならだな。影に呑まれて死ね…」


影が桃李を包み込んでしまう。

辺りがシーンと静かになる。


「さ、このまま影に包んどきゃ…ものの数秒で死ぬな……はぁ、あとは星の子だけ…か」


と、ジェミラが安堵の表情を浮かべて立ち去ろうとしたその瞬間。

刀の風切り音が何重にも重なって聞こえたと思う間もなく、包んだ影が切り裂かれ、

桃李は脱出していた…


「な、何で出れるんだ!」


「異能力(桜刃)が消される直前に、影の結び目を物理的に斬り裂いたんだよ」


ジェミラはもう一度、影の波で打ち払おうとする。しかし、

桃李は何も言わずただ、理力で脚を強化して、踏み込んでくる。


「僕の後輩が危ないかもしれないんだ…

さっさと決めさせてもらうよ」


そう言って、刀を横薙ぎする。

が、ジェミラも影を刀の形に形成して、すぐに防御していた。

ガァィン!と音を立ててぶつかり合う。


「へ、へぇ?あんた、そんなちっこくて細っこい見た目なのに、案外力あんじゃんか」


「ん?まぁ、見た目通り僕は非力だよ?

ただね……その分強化する術は人より

何倍も研鑽してきたんだよね!」


丁々発止の勢い止まず、

二人の鍔迫り合いは行われていた。

影の沼から槍や腕のようなものも襲ってくるが、その都度小規模展開する桜刃で何とか凌ぐ。

異能力が強制解除されても、

2度と使えない訳じゃない。

ヒットアンドアウェーに徹すれば、

全然切り合える。ただ……

(無因の効果のせいで、ジリ貧で僕が負けちゃいそう……あーあ、原宿のドリンク、新作が出たのになぁ…まだ死にたくはないなぁ…それに…)


後輩を一人にしてしまった以上。

先輩である自分が早く仕留めてしまって、もう一度加勢しなければならない。


「悪いけどジェミラちゃん、

僕、君を早めにどうにかしないとなんだ」


「へぇ!舐めてくれちゃってまぁ…

意外と強いなオマエ」


「でもさ、足元…見てなかったろ」


油断していた。そう言えば足元は影だ。

そこを沼化させられたら、掬われる…

いつの間にか足元が影沼となっていてハマってしまった。

体勢が崩れた。その隙をついて、

ジェミラが腹を殴り、飛ばしてくる。


「ぐっ……」


鈍痛が脳まで届く。

距離を置かれてしまった。

そして、影の腕で掴み掛かろうとしていた―


その瞬間、

花弁が爆発的に広がる。


無数の刃が嵐のように舞った。

影の腕が一瞬で細断される。

異能力は解除されて元の刃の形に戻っていくが…


「影とは言ってたけどさ、結局物質だもんね……物質である以上斬れるよね」


ジェミラは楽しそうに目を細めた。

「いいね……

そういうやつ好きだよ」


彼女は建物の方に視線を向けた。

その中ではまた、微小の特異点が拍動している。


「でもさ…」


「オレの目的って…君じゃないんだよね…」


桃李は顔を顰める。

「ま、そうだろうね…」


ニヤリと微笑んで彼女は言った。

ただ、目は笑えていなかった。

どこか怯えているように見えた。

そんな気がした。


「あの、星の子…」


桃李の瞳が静かに鋭くなる。


「澄空くんのこと?なんで?」


ジェミラは答えない。

ただ笑っている。


「さぁな?そういう命令だったから

オレにもわからねぇ」


彼女は両手を広げていた。

無因影の沼が、さらに広がる。

心なしか、桃李の目にはその時の彼女の表情が、追い詰められているように感じた。


「なぁ、桃李。アンタは面白いし、

こんな立場でもなきゃ友達になりたかったと思うよ。だがな。邪魔するなら殺す」


桃李は小さく息を吐き、

そして答えた

「それは困っちゃうなぁ……」

刀を構えると、また桜刃となり、

中空に舞う。

「だって僕、先輩だもん。」

次の瞬間―

嵐のように花弁が吹き荒れた。

「後輩は…守らなきゃ。」


そう言った瞬間に、彼女の影が

大波のように押し寄せ、

その中で槍のような形作られる。


それに対抗して桃李も桜刃を

大量に展開する。

その二つがぶつかり合い、

しのぎを削るような攻防戦の最中、

桃李は少し違和感を抱いていた。

殺しに来ている割には、

影が…全て自分を逸れているか、

致命傷を避ける部位に来ていると―

「本当は、殺したくないんだ?」

「黙れ…、黙れ黙れ黙れ!!!」


この時、全ては確信に変わっていた。

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