第十五話「横浜港の異変」
5月の初め、俺たちは横浜港に発生したとされる特異点の滅却の応援要請を受けて、
護送車で現場に向かっていた。
「あー眠ー、まーじ眠ぃわー」
護送車の中で、そう宣うのは
将駒だ。昨日の残骸回収が長引いたから
寝不足なのだと。それは俺も同じだけど。
でも、それでも学生が帰らなければならない10時前には帰してもらったのに。
「将駒、昨日12時まわるまでゲームしてたでしょ。知ってるんだからね。」
と、詰め寄ると、案の定
口ごもっていた。なんだ、やっぱりそうじゃないか。
「そんな事よりも、今日の任務地
珍しいですね。横浜港……」
と、白石さんは呟く。
「珍しいんですか?」
何が珍しいのだろう?
別に特異点はどこにでも現れるのでは?
と思っていたら、伊月が教えてくれた
「あー、えっとねぇ、特異点ていうのは、空気が澱んだところじゃないと出現しにくいんだよ。だから街中にあることが多い。
さらに今回はなぜか特異点がないのよ。」
なるほど、空気の問題か……
港は開けているから、
魔力の坩堝になりづらくて、
出現しにくいと……。
そして、特異点なしなのか?特異点と言えば、魔洞獣達がこちらにくるためのポータルみたいなものなのでは?
「伊月の言う通りよ!だから、今日の私たちの任務は、原因調査をメインにしてるの!」
「なるほど……じゃあ、戦闘メインでは無いんだな。」
まぁ、それはそれで、別にいいか。
さて、そうこう話しているうちに
現着した。なんと言うか、
横浜港なんて初めて来た。
潮風の匂いがする。
煉は「あーやだやだ、肌がひちゃひちゃして、荒れちゃう」と、文句を言っている。
警備をしていた隊員に挨拶をして、
中に入れてもらった。
「観測史上、特異点なしでこれほど高濃度のイド(魔力)が残留しているのは異常だ」と、聞いたことのある声で、そう言い放っているのが聞こえた。
作戦会議用の仮設テントでは、
隊員達が険しい顔をしていた。
なんでも、派手な攻撃をできない重要ポートを、でっかいトカゲみたいな魔洞獣に占拠されてしまったらしい。
そんで、現役学生の我々に、知恵を貸してほしいと、依頼してきたらしい。
学生隊は俺たちだけじゃ無い。
一年から何班か、2年から何班か、
三年からも何班か来ている。
と……あれは、一年の同じクラスの別班風丸班に、日延景虎君がいるじゃ無いか。
そういえばさっきの声も、日延くんか!
「あれ、景虎君も来てたの?」
「あ、星宮。そうなんだよ。風丸に一緒に来ないかって言われてな。」
と言っているものの、肝心の風丸君が居ない……
「あの、風丸君は?」
「あー、あいつなら、今とりあえず占拠されてるポートにいるよ。確か…南本牧ふ頭…だっけかな。風丸は突っ走るからな。僕の『索敵』でも追いつけないスピードでさ」
南本牧ふ頭…確か、日本最大のポートで、外国との交易に必須級
なんだっけ。確かにそこが占拠されたらたまったもんじゃ無いな……
でも、そう考えると何でこんなところに
魔洞獣が現れたんだろう。
「順当に考えるなら、誰かが送り込んだとしか思えないんだけど……」
「そうだな…それは僕も考えて…」
ドゴォォン!!!
その時大きな破裂音が聞こえた。
「……!!」
現場指揮官が叫ぶ。
「南本牧ふ頭の方角からです!」
遥か先に見える巨大なクレーンの群れが、爆発の衝撃で揺れている。あの巨大な鉄の塊をなぎ倒すほどの何かが、あそこにいるのか……?
俺は、景虎君と、そして星宮班のメンバー達と目を合わせて、すぐに現場に向かって走り出していた
次回、第十六話「横浜港の大騒動-Ⅱ-」




