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天星UNFOLD〜占星術士の群青戦記〜  作者: 逢松十五
第2章 The starting at battles編
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第十一話「窮鼠虫を噛む」

前回のあらすじ

蛹の魔洞に有効打を与え続けることができたものの、

殲滅できたと思われた蛹は、変態を遂げ

羽化してしまった。

真っ先に飛び込んだ星宮だったが……

あれ、俺今…気絶してた?

いってぇ……いったい何メートル吹き飛ばされた?

背中がすごく痛い。

俺は確か、モスキートに挑んで…そして

気づいたら宙に浮いてて……あそうだ、

そして木に背中を打ちつけて、気絶したんだっけ……

早く…立ち上がらなければ


「痛っ…ゲホッ…」


は?口から赤い…液体?血液?

やばい、マジでやばい…かも。


「あぁっ、まだ動いちゃダメですよ。

星宮君。もしかしたら骨折してるかもですし……確実に内臓が傷ついていますから。」


この声は……白石さん…だ、

声がした方を向くと、やっぱり、

真面目そうな感じのメガネをかけた

寡黙系っぽい少女がそこにいる。


「し、白石…さん、その、……

今、皆んなは?」


「みんな戦っています。あなたが吹き飛ばされたのを見て、これはまずいと全力で……」


あぁ……不甲斐ない。

なんて不甲斐ないんだ。俺は

考えなしに突っ込んで、挙句吹き飛ばされて気絶して、リーダー失格じゃないか。

「あの、ちなみに俺は……どれだけ……吹き飛ばさ……れました?」


「推定10mほど…生きててよかったです……治癒魔術を施しますね。」


『豊穣の女神の力は我が手に宿り、

かの者に輝きを与えたまえ』


「【簡易治癒魔術(キャストヒーリング)】」

そういうと彼女は、手のひらの上で黄緑色の結界を作り、その効果を俺の体に照射した。


「骨折や外傷はこれで……あとは内臓を治します。病院でのアフターケアはもちろん必要ですが、とりあえずは今すぐに動けるようになりますからね。」


『豊穣の女神よ聞き入れたまえ。

私が望むは、循環する命の加護。

我が願いのもとに、

その御力でかの者に再び、命の奔流を与えたまえ。』


「【神聖治癒魔術(セイクリットヒール)】」


彼女がそう唱えると、

直ぐに草原を思わせる、豊穣の力を持つ黄緑色の輝きが俺の体を包んだ。


「ふぅ……これは、状態異常など内側の事情まで治すことが出来る治癒です。酷い外傷であれば、治癒魔術・強(グレートヒーリング)で十分ですが、念のため、内臓も心配だったので。」


そこまで考えた上で、かなり理力を消費するであろう大技を使ってくれたのか


「…ありがとうっ、もう動けそうだよ!……じゃあ、迎撃開始だ…」


「それは…よかったです。」


理力を大きく減らしてしまったようだ。


「……リーダー、みんなを、お願いします」


もう2度はあんなヘマはしない。

俺は、モスキートたちと戦うみんなの元へ、走り出していた。


一方―


「くっ、速いっコイツ……」


車ほどの速度で突進してくる

モスキートに、伊月たちは手を焼かれていた。


「伊月ばっか狙ったんじゃねェ!」


ズドンッ!と、モスキートにパンチを入れると、少しよろけていた。

間髪入れず、煉の爆発がモスキートを襲う。


「こっちにもいるの忘れんな!」


『キィィィッ!!』


斬撃や魔術、打撃や爆撃と、

攻撃の応酬で息つく暇もなく

攻撃を続けていたのだが、

いまいち手応えがない。

このままジリ貧で耐えられたら、

"アレ"が来る……

その前に仕留め切らなければ……


「オイ!!伊月!怯んだ今がチャンスだ!」


「了解!」


伊月は思いっきり踏み込んで、飛び上がり理力を刀に集中させて、

振り下ろした


「たぁぁぁ!!!」


刃が脳天を貫く。その直前だった。


『キィィィィン!!!」


空気が揺れるほどの、高周波を

そのモスキートは放った。

これはモスキートが追い込まれたと判断した時に行う、防衛手段。

『ノイジービーツ』と呼ばれる攻撃。

羽と羽を擦り合わせることで、金切り音に似た高周波を倍増させて、中枢神経や内耳に作用してバランス感覚を鈍らせる。

ちょうど空中にいた伊月は、

そこで力が抜けてしまい、刃が通らなかったどころか、着地にも失敗してしまい地に伏せる。

「お゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!」


バランス感覚を担う耳の内部の機関が

高周波で刺激されてバランス感覚を失い、同時に迷走神経反射を起こしたことで、嘔吐を起こしてしまったのだ。

世界がぐにゃりと歪み、天と地の区別がつかなくなる。胃液がせり上がり、立っていることすら奇跡に近い。

片耳からは血が出て、あんまり聞こえない。多分鼓膜が少し破れた。


将駒と煉も同様に、地に伏せてしまう

将駒の方は少し耐性があった様で、そこまでだが、

煉が失神してしまっている。

迷走神経反射が強く出たのだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ……ゲホッ……あぁ…」


(コイツ自体は…そこまで強くない…でも、高周波攻撃によるデバフ……これが最悪すぎるタイミングできた……星宮がいない今……アタシたちでなんとかするしか……)


「くっ、うぅ……はぁ、はぁ、」


刀を支えにしながら、

なんとか立ち上がる。

そして切先を相手に向けて、構えた。


「星宮に代わって……アンタはここでアタシが殲滅する……!!」


そう叫んで距離を詰め、また振り下ろすと、今度はヤツの腕が刃の様に鋭くなって受け止める。

ガギィィン!!と、カチあったのち、

金属が擦れ合う音が響き渡る。

そして、力で押し負けて、

伊月は後方に吹き飛ばされていた。


「くっ……ぐはっ……」


ガードレールに背中を打ちつけて、

前に倒れ込んでしまう。

骨はイっていないが、それでも激痛は激痛。反動で口から唾液が漏れ出てしまう。


『光……あれ…

人に宿りし理の力は……

一条の……(すいせい)となって…放たれん』


(オヴィ)…」


その瞬間、右端の視界でとらえたのは、青白い光を強く放つ、一条の彗星だった。

キュゥゥゥン!!と空気を割く音が、

その軌跡に送れる様にやってきて、

それは、モスキートの頭を砕く。


「キィィ!!!?」


その彗星は確かに知っている。

あれは、星宮が使う彗星弾。


そして自身の目の前に飛んできたのは、


「大丈夫……じゃぁ、ないか、…ごめん、俺が不甲斐ないせいで吹き飛ばされて、みんなを大変な目に合わせちゃった。」


星宮…まさしく星宮だ。

やっときてくれた。と、

心の底から安心した。


「あとは、任せて。」


数刻戻って星宮視点―


俺は走り出していた。

自分の不甲斐ないせいで、

みんなが大変だ。

自分が弱いせいで、

みんなが苦しむ……

悔しかった。

あの時もっと正常に、

出方を見ることができれば……

ミカさんの時も、

猩々型と対した時も、ちゃんと見れただろう。

異能戦闘技能士の資格を得たから、

調子に乗っていたんだろう。


俺は両頬を両手でバシバシと叩き、

気合いを入れた。


「しっかりしろ!俺!」


走って走って、もう5メートル付近まで到達したところで、

甲高い金切り音みたいなのが、

聞こえてきた。

「がっ……なんだこれ…っ!」

いきなりのことで、立ち止まってしまう。

一時的だが聴覚が失われる。……

だがすぐに察した。

5m地点でこれであるならば、

爆心地は相当なものなのではないかと、

であれば本当に急がなければみんな死ぬ。


またすくみ出した足を、叩いて起こし、

またひたすらに走り出した。


モスキートの姿が見えてきた頃には、もう既に伊月が追い詰められていた。


まずい、早くなんとかしなければ。

考えるより先に、異能力を発動していた。


「…【星辰天環(せいしんてんかん)】」


俺の周りに半径2mの、半透明の青い天球が広がる。

そこで生成できる星粒に、推進力を与えて、モスキートに向かって放った。


モスキートが伊月を襲おうとした瞬間に、モスキートの側頭部に彗星が当たり、少しだけ頭が弾けて怯んでいた。


その隙を見て俺は、彗星の推進力を足に宿して飛び上がり、伊月の前に着地した。無理をして出力したから、足に響いてしまった。


「っ〜!大丈夫…!?…じゃぁ、ないか…ごめん…… 俺が不甲斐ないせいで吹き飛ばされて、みんなを大変な目に合わせちゃった。」


だからこそ、俺はここでコイツを倒す。


「あとは、任せて。」


そう言って、刀を構えて出方を見る。

今度こそヘマをしない様に……

と、その時


「ばーか。もっと仲間(アタシ)を信じてよ」


と言って、左隣に立って刀を構えていた。そうか、そうだった。

俺は一人じゃなかったんだ。

何を勘違いしていたんだ、

俺のヘマだから俺が責任取って一人で倒す?

バカ言え。コイツは俺の手に余るくらいの強さだ。

じゃあ、みんなで力を合わせないと倒せないじゃないか。


「オイ、オレも居んぞコラ……」


少しよろけながらも、こちらにきて

右隣に立ち、拳を構える。

相当ボロボロだ。俺も言えたことじゃないが、結構酷い状態だ。

それでも立ててるのは単純(シンプル)だけど、彼が度外に硬いんだと思う。


二人とも…いや、俺も含めて三人皆満身創痍なのに、何故だか、

安心していた。

少々とちっても、この二人ならカバーしてくれる。そう思えた。

そう思わせてくれた。

きっと彼らも痛いはずなのに。

じゃあ俺がするべきは、

二人に背中を預け、

思いっきり戦う事だ。


まさしく『窮鼠猫を噛む』ならぬ、『窮鼠虫を噛む』だ。


きっと、今なら胸を張って言える。


「やろう!俺たちなら勝てる!」


「うん!」

「おうよ!」


意気込みや思うことは、きっと、

皆同じだ。

「よし、」

「さぁさぁ」

「いくぜ!」


気合い十分、調子は上々。

ボロボロの体、破れた服、それでも瞳の奥の火だけは消えていない

今、性質の違う3人の心のベクトルは

ただ一つ。

声高らかに叫んだ。


 「「「反撃、開始だ(リベンジマッチ)!!!」」」

次回、第十二話「反撃開始」

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