第八話「星宮班結成」
前回のあらすじ。
試験を受けに行った星宮は、実戦試験で
猩々型魔洞獣「ヴァスィコキノ」から急襲を
受けるが、即席のチームメイトとの協力により、
退治することに成功した。
A.S.A.U.本部―
鳴島神凪は、秘書のミカから渡された資料を見て、怪訝な顔を浮かべていた。
「うーん……なるほど、まさかうちの子が、"C級"相当の魔洞獣に襲われるとは……」
記録映像もある。
調べさせたが、
AIやCGなどによる捏造はない。
魔術的干渉による映像改変もない。
つまり、
この報告書は嘘を言っていない。
ただ―
「おかしいな…」
そう、おかしいのだ。
試験会場にいるのは自律人形の技術
で作られた擬似的な魔洞獣。
つまる所、ただの傀儡で生きてはいない。
何故なら本物の魔洞獣は特別な例を除けば、人間には制御できない。
しかもそれ以前に、認定試験のレベルなら、魔洞獣の強さ設定は低級なはず。
中級レベルが現れるのは、試験での昇格の時。
何というかきな臭い。
きっと……
「この事故には裏がある…と、
仰りたいのですよね?神凪様」
「あぁ……」
早急に調べなければ、星宮の命が持たないかもしれない。
「すぐに調べてくれ、未来ある子供の命が散るのはもう、見たくない。」
──────────────────
試験が終わり、もう一週間が経っていた。
確か先生の話では……
「もう直ぐ合格通知…が来るって言ってたっけ?」
まだかなぁー、と思いながら、
朝のHRが始まる前の少しガヤガヤと騒がしい、爽やかな教室の中で、ちょっとソワソワしていた。
そしたら、
「おはよう!我が愛しの生徒諸君!」
「神凪先生…!!」
来た!いや、落ち着け、神凪先生が来ただけだまだ。
クラスメイトたちは、こなれたように
「おはようございまーす」と言ったりしていた。
風丸くんは…相変わらずでかい声で
「おはようございます!!!
今日も息災なようで何よりです!!!」と、暑苦しい…
「あはは、風丸。君はいつも通りだな…!
おっと、そうだ、星宮」
呼ばれた!じゃあやっぱり!
と思い先生に近づく。
「楽しみでにやけてるよ、星宮よ。」
ハッとして真顔を作ろうとするが、
やっぱりニヤケが止まらない。
楽しみなんだ。
結果が。
「じゃあ、この封筒を君に渡そう。」
と渡されたのは、大判サイズの
茶封筒。
しかも口が紐で留められてるオシャレなタイプ。
ちょっと内容物が分厚い。
ゆっくりと慎重に開けてみる。
指先が震える。
いざ目の前にすると緊張する。
ゆっくりと中の紙に触れてみる。
分厚い。卒業証書あたりと近い感触。
あと、うん、英語検定の合格書とも似てる。
ゆっくりと紙を出し、
確認する
「……!!」
書かれていたのは、
『合格証書
異能戦闘技能士認定
星宮澄空
令和2年 4月24日生
防衛省主催第390回
異能戦闘技能士認定試験において
頭書の認定をいたしましたことを
証します
令和18年 5月3日
防衛省
大臣 宮本秀治』
と、つまりこれは、合格したということ
「やっ……たぁ…!!来た!受かりました!先生!」
「うん!おめでとう。ちなみに、中にまだ入ってるよ。」
あ、そう言えば、箱みたいなの入ってる。
何だろう?と、取り出してみると、
A.S.A.U.のロゴが刻まれた銀と金であしらわれているバッジが入っていた。
「制服にはそれを付けていること、
A.S.A.U.の公認異能力者である目印だからね、あと…」
…?まだ何かあるのだろうか?
「君に学生証渡すの忘れてたから、
今渡しとくね!」
思い出した。転入したばかりの頃
そう言えば学生証用にと、
新しい制服で撮ってもらったのだが、
ずっと渡されていなかったんだ。
忘れてたのかこの人……
「ごめんねぇ!私もゴタゴタで完全に忘れててさ!」
俺はちょっと悲しくなった。
まぁ、俺も忘れてたけど。
「まぁいいじゃないか!星宮君!
無事合格できたんだ!」
そうだね、そう思おう。
…と、よく見たら学生証に何か
魔術刻印で数字が刻まれている。
どれどれ?準4…?
「先生、これは何ですか?」
「あぁ、これはね君の異能士としての階級だよ。まぁ、本来は6級からなんだけど、君たちチームは優秀だったからね、
準4級からスタートだよ!」
ガヤガヤと騒がしかった教室が静かになった
「へぇ…?風丸君、これって凄いの?」
「凄いよ!準4級相当なら、低級の中位から上位は余裕だし、中級下位くらいならギリ倒せるんだぞ!」
詳しく聞いてみると、
等級には全部で十段階
一番上から、
1級
準1級
2級
準2級
3級
準3級
4級
準4級
5級
6級
とあるらしい。
何故5から上は準があるのかというと、昔4級以上では同じ階級でも実力差がかなりあったためであるとの事。
また、異能力の危険性や本人のポテンシャルや異質性から、
特別に付与される階級もあり、
それが特1級と呼ばれるらしい。
神凪先生がそうなのだとか。
想像はつかないが。
また、階級ごとにあてられる任務も
異なり、
特異点の危険度をA+を最大とする15段階に分けていて、
降順に
A+
A 準1から1級の領分で上級
A-
B+
B 準2〜2級の領分で中級上位
B-
C+
C 準3級〜3級の領分で中級下位
C-
D+
D 準4〜4級の領分で低級上位
D-
E+
E 5〜6級の領分で低級
E-
だそうで、これもまた
新宿を壊滅させた17年前くらいの出来事となると測定不能ゆえにSとされている。との事。
ちなみに、風丸君は3級、将駒は2級
伊月は準1級で、このスリートップが
若くしてかなり高位に挑める存在らしい。
それ以外は基本4級かそこららしい。
―
さて、時間は進むが、
放課後のことだ。
ちょっと大学の方の
図書室本を読んで
寮に帰ろうとした時、
伊月が話しかけてきた。
「やっほ、ちょっといい?」
と、もしかしたら結構話し込むかもしれないので、座って話すことにした。
「さて、と、異能士認定おめでと、
早速だけどさ、班制度とペア制度って知ってる?」
「班制度は知ってるけど、ペアって?」
班制度は授業で言っていた、
学年は問わず、班を結成して
行動する学校の制度。
これは認定された異能士となった生徒は絶対組まなければならない。
ただ、ペアは、何なんだ?
「ペア制度は、班とは別に独立してある、A.S.A.U.の制度
チーム制度で2人一組になってお互い
任務での行動を見て評価するの。」
話を聞いていくと、どうやら
ペアはある特定の条件を達成した
者が申請すれば、ペア契約のための装置を貰えるらしい。
そしてその装置の片割れを相手にあげて承認すれば、完了とか。
その目的は互いの成長のためのみならず、任意で位置を発信して、
行方不明になったりした時の救出に役に立つとのこと、そして
「んで、アタシとね、ペアになって欲しいんだ」
「うん…いいけど…」
と言うと、彼女は少し頬を赤らめて、
ちょっと嬉しそうな顔が漏れ出ていた。
「こほん、えっとじゃあ、これを…」
左手の中指につけていたシンプルな
銀のリングを、二つに分けると、
片割れを俺に渡してきた。
「これを、つけるの?」
と、聞くと、無言で頷いていた。
「わかった、じゃあ」と、
伊月に倣い、左手の中指に付けた。
すると伊月は俺の付けた指輪に自分のつけている指輪をコツンだとぶつけて
微笑んだ
「これで…ペア契約は成立…あとはね、班を作るんだけど……」
後ろを見てから、こっちに向き直した。
すると、本棚の影から、
将駒、陽那さん、そして煉ちゃんが現れた。
と、言うことは……
「そ、アタシ達と班を組んで欲しんだよね!……星宮が班長でね!」
「うん…!うん…!?」
耳を疑った、俺が班長なの!?
だって一番階級が高いのって、
伊月だろう?
「お、俺?……いや、伊月の方が高いんじゃ……」
「あー、いや、アタシはそう言うのめんどーだから遠慮。」
何だ、めんどくさがりか……
でも、なんか嬉しい。
頼りにされてるってことか?
それとも……
「オイ、澄空、いいのか悪いのか
はっきり言ってくれや」
……そんなのはもちろん。
「結成しよう!星宮班!!」
と、言うと伊月の目がすごく輝いてから
「ぃやったぁぁぉ!!!」
と叫び出したので、白石に諌められたが、
その後すぐ、みんなで円陣を組み、
皆自身の右手を真ん中に差し出した。
俺は班長として、決意の言葉をかける。
「よーし、星宮班……頑張ろう…!」
と、そして皆で声を合わせ……
『オー!』
と叫んだ。
あぁ、楽しいなこう言うの、
これからはこの班が、俺の第二の居場所なんだ……と、感慨に浸っていた。
「あのー、あのー!!
ここ図書室なので!お静かに!」
と、メガネをかけたおさげの図書委員さんに注意され、俺たちは我に帰ったのだった。
お疲れ様。十五だよ!
星宮達の本当の戦いはここから始まるんですね。
では、次回予告
次回、第九話「星宮班の初任務」お楽しみに!




