24.朝デート
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明け方。まだ陽が昇りきらない頃に、ノアたちは宿からの脱出を試みた。
明け方ともなると群衆のほとんどは解散しており、それでも宿の周辺に残っているのは新聞記者か、何が何でも勇者が見たいコアなミーハーだけだった。
「あっ! ひょっとして勇者様ですか!?」
宿から出て来たノアたちに気付いた新聞記者が、カメラを構えて駆け寄ってくる。
「是非ともお話しを――」
「うるさい」
ぶすっ。
低い声で呟くと、ノアは魔法剣で新聞記者を刺し貫いた。深々と漆黒の剣を腹に突き立てられた記者は、ゆっくりと地面に倒れ伏す。そして、すやすやと寝息を立てて眠りについた。
「この時間なら、外で寝ていてもギリギリ誤魔化せるかもしれないね」
「この人は誤魔化せても、目撃者は誤魔化せないと思うわよ」
楽観的なエヴァンと、恐怖に慄いた表情で逃げていく他の記者たちを見送るルル。
「だから私が魔法で眠らせるって言ったのに」
「効果は同じだ。何も問題は無い」
「視覚的な効果はトラウマレベルでしょ」
ルルのツッコミは、ぼやく程度に抑えておいた。出会い頭に人を刺すほど、ノアの機嫌が頗る悪い。不眠三日目に突入し、目は半分座っている。
「今のうちに自然公園に行こう。クワガタ探しをした後、頃合いを見て別の宿屋に移動するよ」
「わかった」
少しだけ、ノアの表情が明るくなる。首から虫かごをぶら下げ、片手に虫取り網を握り、軽い足取りで公園へと向かった。
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「いやぁ、嬉しいなぁ。まさか昨日の今日で、ルチア様に朝からデートに誘っていただけるなんて」
雲ひとつない晴天の下、同じように晴れ晴れとした表情のフェリクスが、ルチアに向かって微笑んだ。
「急なお誘いでしたのに、応じてくださって嬉しいですわ」
ルチアはぎこちない笑顔を顔面に貼り付けて、遊歩道を歩く。
場所は自然公園の芝生広場。リュミエールから真犯人を見つけるよう言い渡されたルチアは、手っ取り早く一番怪しいフェリクスに近付くことにしたのだ。
自然公園は急遽厳戒態勢が敷かれ、一般人は立ち入りを制限された。公園の内外には、幾重にも衛兵が配置されている。本来ならば城の外ではルチアも変身魔法で姿を変えるのだが、相手が婚約者である為、普段通りの姿でデートに挑むこととなった。
「王都の中にこんなにも自然の溢れた公園があるだなんて、バルドレインは本当に素晴らしい国ですね」
「あ、ありがとうございます……」
「あぁ、日傘は僕がお持ちしますね。そこ、足元に大きな石があるのでお気をつけください」
「はあ……」
ルチアは内心で狼狽する。フェリクスのエスコートは非常にスマートで、ルチアに対してとても優しい。この男が真犯人だと睨んでいたのだが、またしてもアテが外れたのだろうかと不安になっていた。
(真犯人はフェリクス様以外の人物……? だとしたら、私にはもう調べる手立てがないじゃない!)
「どうかしましたか、ルチア様?」
「あ……いえ。フェリクス様のお相手が、本当に私で良いのかと考えていました。本来ならばレティシアお姉様が――」
「僕は、貴女がいいのです」
不意に手を握られて、ルチアは不覚にも胸がドキンと高鳴った。フェリクスの青い瞳が、ルチアの顔を覗き込む。
「ルチア様ほどの美しい方は、僕には勿体無いかもしれない。けれど僕は、貴女を一目見た時から――」
「ルチア様。お話し中申し訳ございません」
フェリクスの気持ちが今まさに最高潮に達しようとしたその時、近衛隊長がルチアの前に跪いた。危うく雰囲気に飲まれかけていたルチアは、仄かに赤い頬を手で仰ぎながら近衛隊長に視線を移す。
「何か問題でも?」
「問題……と申しますか……――失礼いたします」
近衛隊長は一礼してから、ルチアに小声で耳打ちした。
「公園内で、勇者一行を発見いたしました」




