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囚われの恋人ごっこ


レイヴェルのよくわからない行動は、日々続いた。


朝、目が覚めると枕元に花が置かれていたり、

食事の時間になると「お前はこれが好きだっただろう」と、私が以前話した料理を用意してきたり。


夕刻になれば、何の前触れもなく「散歩に行くぞ」と誘われ、湖のほとりを二人きりで歩く時間が増えた。


 


一度、不思議に思って問いかけたことがある。


「……何を企んでいるの?」


すると、レイヴェルは当たり前のように言った。


「女はこういうのが嬉しいんだろ?」


 


意味がわからない。


私の戸惑いなど気にもせず、彼はまた新たな花を摘んで、私の手のひらに押しつける。


――なぜ?

私は彼の捕虜で、彼は私を裏切った男で――


どうして今になって、こんな風に恋人ごっこを再開しているの?

というか、そもそも「女」って……?


 


「……色気がないって言ったくせに」


皮肉を込めて嘲るように言う。

だが、レイヴェルはまるで面白がるように唇を歪めた。


 


「だからこそ、そそられるんだろう?」


「っ……誰が……!」


反論しようとした瞬間、彼がゆっくりと手を伸ばし、私の髪を撫でた。


 


「あの時の言葉、傷ついたのか?」


ふいに落ちた低い声が、耳元をくすぐる。


驚いて顔を上げると、レイヴェルはじっと私を見つめていた。

琥珀色の瞳が、まるで私の心の奥底まで覗き込むように揺らめく。


 


「……ごめんな」


優しく紡がれた言葉に、胸の奥がひどくざわついた。

謝罪なんて、彼の口から聞くとは思わなかった。


ただの気まぐれか、それとも――

彼の本心を知るのが怖くて、私はただ視線を逸らした。


だが、優しい指先が、私の髪を梳くようにゆっくりと動く。


 


「……っ」


言葉が、喉の奥でかき消えた。


 


「色気がないとは思ってない」


レイヴェルは淡々とした声で続ける。


「ただ、お前の感情的になる顔が可愛くて、ついな」


心臓が、嫌なほどに跳ねた。


 


「……頭でもやられたの?」


言葉を振り絞るように言い、恥ずかしさを紛らわそうと目を逸らす。


すると、レイヴェルの瞳がわずかに細められる。

その眼差しは、まるで獲物を狙うように鋭く、けれどどこか甘さを孕んでいて――


 


「……生意気な女だな」


次の瞬間、強引に唇を塞がれた。


 


「……っ!?!?」


驚きに息を呑む間もなく、熱い舌が容赦なく入り込んでくる。


甘く、けれど支配的な口づけ。


腰を強く引き寄せられ、彼の熱が全身にまとわりつく。


 


「んっ……は……っ……!」


息をする隙さえ与えられず、唇を割って舌が絡め取られる。


強引なのに、どこか心を蕩けさせるような深いキス。


 


「っ……やめなさい……!」


必死に抗おうとするが、レイヴェルは余裕の笑みを浮かべながら、私の耳元で囁いた。


 


「お前は今、誰の手の中にいるか……理解しているのか?」


耳朶に落ちる熱い吐息。

思わず背筋が震えた。


 


「……っ……」


熱が、喉の奥に絡みつくようで、言葉が出てこない。


 


「ふざけないで……!」


拒絶の声は、ひどく掠れていた。


 


「ふざけているのは、どっちだ?」


そう言った彼の唇が、再び重なる。


抗う声が、甘い吐息へと変わっていく。


 


彼の腕の中で、逃げ場を失い、溺れていく――

それが、たまらなく悔しかった。


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