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冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。  作者: KAME
冒険者の春風

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人攫いの末路

 昼からの聞き込みで、教会では三人の子供たちが故郷へ帰ったことが分かった。そしてその内、二人は同郷だった。

 その二人を騙して奴隷にしたのは、村に出入りしていた行商人。塩を扱う者でこそなかったが、身元まで完全に分かった。


「死んでいたわ」


 翌朝、わたしはキリとユーネにそう報告した。

 マグナーンのツテを頼って調べたが、結果は残念。


「村人たちから私刑にされたらしいわね。捕らえられたのがちょうど、子供たちが攫われた村らしくって、ちょっと兵士たちが油断して目を離した隙に死ぬまで袋だたきだったそうよ」


 聞いてきたことを話して、その内容に辟易しながらわたしは小粒の果物を口に入れる。春の果実で、甘みは少ないが水分が多い。根から吸い上げた雪解け水をそのまま実に閉じ込めたかのような清涼な味のそれは、わたしの数少ない好物だった。

 干した保存食ならともかく、みずみずしい果実は嗜好品の認識が強いのか、とにかく量が多い冒険者の店でも少なめだ。あまり食べる方ではないので、食欲が湧かない日はありがたい。


「元々あまり評判のいい商人じゃなかったみたい。商品の品質が悪いくせに値段は高くて態度も悪い、田舎の足元を見た商売をする人だったようね。そんなのが悪さをしていたのだから、おかげで行商が信用されなくてやりにくいって、その村へ行っている他の商人がぼやいていたわ」


 つまり昨日の昼からの調査は無駄に終わった、というのが結果だった。

 せっかく有力な情報が得られるところだったのに、村人たちの浅慮でフイにしてしまったのだ。小さな村ではみな家族も同然で、子供は宝である。犯罪者を裁くために国が定めた法が適用されることもほぼなく、人攫いなど殺されて当然ではあるが……おかげで問題の根本までは迫れなかったのである。


「ああうん。そういうこともあるよね」


 すでに食事を終えたキリが頷く。思っていたよりもあっさりした反応で、わたしは少し安堵する。

 この話をするかどうかは、少し迷った。あまりにも彼を騙した商人の話と酷似している。

 たしかレーマーという名前だっただろうか。その男も村人たちから私刑に合いそうになっていて、それを辺境巡回神官がやめさせようとしていて……結局、キリが直接私刑にした。

 今でもまざまざと思い出せるが、あれは死んでも構わないという殴り方と蹴り方だったと思う。


 結果、レーマーは生きてはいたが逃げて、そして逃げた先で死んだ。あくまで結果でしかないけれど、貴重な情報源はそこでも失っているのだ。

 まるで、あのときの間違いを突きつけられたよう。


「その村の人たちは間違ったと思うけれど、気持ちは分かるよ」


 ……あっさりしているように見えたけれど、べつにその件を忘れたわけでも、これが似た例であることも分かっているようだ。

 そのうえで、自分にはこれ以外のことを言う資格がない、と飲み下したのだろう。

 いかにも彼らしい。これは単純に、誤魔化す気がないだけだ。


 カラトア神官の苦労が分かる気がする。殺されて当然の相手を、もしかしたら自分の手で殺してやりたいとすら思っていたかもしれない相手を、あまり重い罪に問えないかもしれないのに町で裁こうとしていた彼女。

 あのときは神官はなんともしち面倒くさいものだと思ったものだけれど、こうして調査する立場になってみると尊敬の念すら湧いてくる。


「もう一人の被害者は、誰に攫われたのかも分からなかったみたいね。知らない相手だったのなら野盗とかかもしれないわ」


 わたしは意識して話を先に進める。どうせ進展がないという報告なのだし、深掘りする必要はない。


「では、聞き込みは空振りということですねー」

「まあ衛兵たちが調べても無理なのに、聞き込みだけで崩せるほど簡単じゃないでしょう」

「そうかな? さっきの行商人は村人たちが殺さなかったら尋問されてたと思うし、違法奴隷を扱った人は危ない橋は渡ってると思うよ」


 ユーネは肩を落としたが、キリは逆に考えたようだ。

 ……たしかに、殺された行商人は兵士たちが身柄を一度確保している。裏組織らしく口封じを送り込まれたとかであればわたしたちの手に負えないが、村人が暴走しただけだ。

 この件に関しては単に奴隷商の運が良かっただけだろう。


「そうね。地道にやればなにか掴めるかもしれないわ」


 一回空振りしただけだ。諦めるには早い。……とはいえ、これ以上この方向性で聞き込みを続けるのもどうなのか、という感はある。

 おそらく人攫いをやったことがある者は、今も捕まらずにいるだろう。そういう者を探し出して捕まえて兵士に突き出せば、この依頼はもう終わったも同然だ。

 しかしそれは本当に近道なのだろうか。そんなどこの誰かも分からない犯罪者を闇雲に捜すくらいなら、店を構えているゼルマの身辺調査をした方がなにか出てくるかもしれない。


 例えばゼルマに家族や親戚などがいれば、なにか知ってる可能性はあるだろう。交友関係はどうか。店の従業員はどのような者か。

 もし違法奴隷を扱っているとしたら、どれだけ酷い扱いをしていても食事くらいはするだろうから、食材の調達などに違和感がないか調べるべきかもしれない。

 やれることはある。しかし……あまり踏み込み過ぎると勘づかれるかもしれない。


「二人とも、今日は廃村と薬草畑の方に行ってみたいんだけれど、どうかな?」


 悩んでいると、キリからそんな提案があった。

 ガルブ一家が奴隷たちを使って危険な薬草を栽培していた森の中の畑と、そして薬物を調合していた廃村。

 昨日彼がチッカから仕入れてきた情報だ。そこもあったか。


「ユーネは賛成ですよー。一度は足を運んでみるべきだと思いますー」


 わたしは少しだけ考える。

 たしかに一度行く必要がある場所だし、行くなら早めがいい。他にも確認したいことはあるが、急ぎではないのだし。

 反対する理由はない。もしかしたらまだ見つかっていない隠し部屋などがあって、そこに大量に薬品が収納されていました、なんてこともあるわけだし。兵士たちが一度調べたにしろ、もしかしたら魔術までは使用してないかもしれないのだし、やはり自分たちの目で一度は見ないことには収まりが悪かった。

 うん、と一つ頷く。


「わたしも賛成するわ。今日は件の廃村に行きましょう」


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― 新着の感想 ―
[一言] 外から見るとキリの心のうちってわかりにくいもんですね なんも考えてないのかもしれないけども
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