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冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。  作者: KAME
冒険者の詩

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ビッグラット

 大きい、というのは分かりやすい特徴だ。大きい分だけ強くて、大きい分だけ重くて、大きい分だけよく食べる。獣が巨大化したような魔物は多い。

 けれど単に大きな獣が魔物とされたような例だと、あれは獣だとか獣に近いとかいいや魔物だとか、学者さんたちの間ではかなり意見が割れる。王都の学院などではそれが原因で、たまに掴み合いの喧嘩が起きるそうだ……と、そう受付嬢のイルゼが言っていた。

 湿地によくいると聞く大蜥蜴とかはその例だ。あれは大きいけどただのトカゲであってただの獣であり、魔物的な特徴がないと言われている。


 その点、大ネズミ……ビッグラットに関しては、そんな議論をされることはなかった。ヤツらは完全に魔物であると結論づけられているのだ。

 特別に強いわけではない。魔法を使うわけではない。賢かったりもしないし、貴重な素材が手に入るわけでもない。

 獣と違う点はただ一つ。明らかに自分より大きい相手に対しても、躊躇なく襲いかかって来る凶暴性。


「やっ!」


 暗闇から跳びだしてきたのは二匹。どちらも猫より二回りも大きい灰色のネズミ。そのうちの片方へ槍を突き出す。

 複数の相手だ。まずは一匹仕留めて、数を減らさなければならない。そしたら、すぐに後ろへ引きつつ牽制を……―――


 大ネズミが横っ跳びに槍を躱す。そのまま。


 ネズミとはいえ、大きいだけあって的は決して小さくない。だから当てられると思った。まさか、俊敏性が小さいネズミのままだなんて聞いて……聞いたような気がする!


「くぅ!」


 とっさに槍を半回転させて、掬い上げるように石突きで打つ。当たって弾き飛ばす……が、浅い。ヂッと怒りの色の鳴き声が聞こえてくる。

 昨日、大部屋で聞いた。大ネズミはいきなり複数で襲いかかってくるし、すばしっこくて攻撃を当てづらいし、牙が鋭くて噛まれると病気になるからけっこう厄介だと。


「キリ君!」


 ユーネの悲鳴が聞こえた。一匹を相手している間に、もう一匹が跳びかかってきたのだ―――それも、上から。

 思わず目を見開く。下から来る一匹に気を取られていたから、完全に意識の外。壁伝いに助走をつけて高く跳んだのか、顔へ飛来してきた一匹の牙をとっさに左腕で防御する。鋭い牙が服を貫通して二の腕に深々と刺さる。痛みと不快感に悲鳴が漏れた。

 さらにもう一匹が足に突撃してくる。牙は脚甲が防いでくれたが、衝撃で体勢を崩してしまう。


 ヤバい。正直、舐めてた。油断していた。しょせんはネズミだと思ってた。

 これでも冒険者に討伐を依頼された魔物だ。下水道で命を落とす初心者だっていることくらい、とっくに知っていたのに。


「ああっ!」


 倒れ込みながら、腕に齧り付いたネズミを床に叩きつける。ヂィッという悲鳴と共に腕から離れる。足にとりついた方のネズミはもう片方の足で蹴っ飛ばした。

 床スレスレに槍を振り回す。当たらないけれど、身体から離れたネズミたちが距離をとる。跳ねるように立ち上がって槍を構え直す。

 その僕の横を抜けるように、二発の魔弾が二匹を撃ち抜いた。


「キリ、怪我はっ?」


 リルエッタが後ろから駆けて来る。

 魔術によって撃ち抜かれた大ネズミ二匹は死んでいるのか、血を流し痙攣して倒れていた。どうやら魔弾一撃で倒せるくらいには弱いらしい。

 ネズミを見下ろしながら構えを解く。心臓が痛いほどに暴れていた。腕はもっと痛かったけれど、それらの痛みよりも今の危機を脱したことの安心感が強い。


 今のは、ヤバかった。

 速度で槍の間合いの内に入られて、上下の攻撃で転ばされた。なんとか突き放せたからリルエッタが倒してくれたけれど、もう一匹いたら援護が届く前に首筋を噛まれていたかもしれない。

 大ネズミ討伐で命を落とす冒険者のことがよく分かった。大ネズミは人を殺せる力があるのだ。


「すごく痛い……」

「見せて!」


 僕が怪我した腕を出すと、リルエッタは自分の水筒の水で汚れを洗い流す。傷口に染みた。


「ユーネ!」

「はいー」


 続いてユーネが治癒術をかけてくれる。病気を治す術と、怪我を治す術。

 それで、けっこう酷かった傷口が塞がる。痛みも傷痕もなくなってしまった。


「ありがとうリルエッタ、ユーネ。助かったよ」

「思っていた以上にすばしっこいわね。大丈夫?」

「大丈夫」


 通常のパーティならここで撤退も十分あり得る。怪我が酷ければ武器が持てないのだから、それ以上進むことはできないだろう。

 治癒術士が重宝される理由が分かるな。傷がすぐ治るのは冒険にすごく有利だ。


「戦い方を決めましょう」


 リルエッタは怪我の治った僕の腕を睨むように見ながら提案する。


「大ネズミは素早いし、壁も足場として活用してくるから動きが読みにくい。思っていた以上に危険だわ。遭遇したら前衛は時間を稼ぐことに専念して。そうしてくれたら、わたしが魔術で倒すから」


 まあ大ネズミは魔弾で倒せることは分かっているから、有効な戦法だ。さっきの戦いもいきなり一匹を仕留めようとせず、まずは牽制で近寄らせないように立ち回っていたら、あそこまでピンチにはならなかったかもしれない。


「でもそれだと、すぐに魔力切れちゃいませんかー?」

「そうね。ある程度慣れてきたら前衛が仕留めてもいいと思う。でも、何戦かはこの連携でいった方がいいわ。いくらユーネがいると言っても、できるだけ怪我はしない方がいいもの」


 たしかに怪我が治るとはいっても痛い思いはしたくないし、死んだら生き返らない。僕にとってはありがたい作戦だ。けれど、リルエッタの負担が大きい作戦でもある。

 魔力には限度があるし、そう短時間では回復しない。だからなるべく早く慣れた方がいいだろう。

 僕が一人でネズミを仕留められるようになれないと、途中で戻ることになりかねない。けれど、今まで戦ってきた相手とはあまりにも違うその動きに、すぐに対応できる自信は……正直、なかった。


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― 新着の感想 ―
ハ、ハンタウイル〇警戒?(時事ネタ) 狭いので棍棒ないしメイスがあると 良さそうですね 振り回せれば牽制も出来ますし 当たれば痛打となりえるし 刃筋考えなくてすむし
[一言] 人型と四足獣型では、戦い方が全く異なるのは当然ですね。これまでキリが戦ってきた相手は、ゴブリン、サハギン、人間なので、なまじそれらに慣れてしまった為の弊害でしょう。 キリの新たなステップに期…
[良い点] 最初は読み流していた話でも話が進展してから再度読み返してみると、チョイチョイ伏線が見つかって面白い! [気になる点] キリは欲しがってた足甲ありの靴も購入出来てたみたいだけど、そろそろユー…
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