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冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。  作者: KAME
冒険者の流儀

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二日目の昼休憩

 平原を通るルートを選んだのがよかったのか特に魔物の襲撃もなく朝になり、スープの残りを温め直しただけの朝食を摂って二日目は始まった。


「そういえば、ニビトイ村に特産品はあるのかしら?」


 今日の予定は平原の道をひたすら歩くだけ。

 こういう場所は魔物もあまり出ないし、見晴らしが良いので警戒も楽。さらにルート変更したおかげで歩く速度もゆっくりでいいとなれば、休憩を多めに挟みつつの余裕を持った行軍となる。


「そうですね……山間を開拓した土地ですので農耕地は限られていますし家畜も少ないのですが、山の幸や川の幸は豊富ですよ。あとは狩人が獲ってくる獣や小型の魔獣の毛皮なども特産品になるでしょう。レーマーも村に行商に来ては、空いた荷車に毛皮を積み込んで行きました」


 その話題が出たのは日が真上にかかり、平原を横断する川に到着したころ。火をおこして川の水を湧かしている時。

 お嬢様はどうやら、ニビトイ村に新しい商売の可能性を期待しているようでした。


「毛皮……悪くはないけれど、ありきたりね。片道三日もかけるなら、あまり利率が高い商材とは言えないわ。罪人も扱っていたようだし、珍しいものではないのでしょう?」

「魔物素材の毛皮は高価で売れるようですが、いつも獲れるものではありませんからね。なるほど、ニビトイ村の新しい商材ですか」

「ええ。今後どうなるにしろ、そのレーマーとかいう罪人が今後もニビトイ村周辺で行商を続けるのは難しいでしょう? もし良い取引ができるなら、販路を丸ごともらうのも悪くないわ」


 悪いことを考えますねぇ。

 まあお嬢様が冒険者になるのを許されたのは、そこに新たな商売の可能性があると目されたからです。なんの成果も出せなければ冒険者を辞めさせられるかもしれないのですから、商機に貪欲なのは当然でしょう。


「マグナーンが新たに行商人を遣わせていただけるのですか? それでしたらありがたい話ですね。ニビトイの村周辺ではあまり岩塩が採れませんから」

「うちが直接やるかは分からないし、やらない可能性だってあるわ。商人だって生活がかかってるから、ちゃんと利益を上げられなければ販路にはできないもの。……でも町の西方は険しい山が多くて大きな都もないから、商人の往来も少なくて未開拓のイメージがあるのよね。そのぶん新しい何かが見つかるかもって期待はしているわ」


 着火の魔術でつけられた火は順調に大きくなり、短時間で焚き火となって鍋の水を熱している。

 休憩と言っても、どちらかと言えば川で水筒に水を補充することが目的だ。夏場なので日中は歩くだけで暑く汗をかく。水の補給は必須です。

 ただし川の水は一度沸かさないと飲めませんから、火をおこすついでに昼食でも摂りましょうというのがこの休憩の流れでした。


 水で濡らした布で首元を拭きながら、川の方を見る。幅は広いが流れが穏やかで、水が澄んでいるいかにも綺麗な河川だ。たしか地図だと、この上流には湿地帯があるのだったか。

 細く荒れた道幅には似つかわしくない立派な橋があって、そこに領主様の名前が大きく書かれているのが妙におかしかった。この橋はどうやら、架けられてから十年もたっていないらしい。


「特産品ですか……町にはないものですよね。そうですね、今の時期だと畑で素晴らしく美味しい赤い実が採れるのですが……」

「赤い実? どんな名前の植物かしら?」

「分かりません。わたくしも植物の本を取り寄せ調べてみましたが、あれは載っていませんでした。なので便宜上、赤い実とだけ呼んでいます」

「へぇ、いいじゃない。そういうのが欲しいのよ。がぜん興味が湧いてきたわ」

「しかしレーマーが言うには、保存が利かず痛みやすいうえ、町で植えても育たなかったと……」

「ずいぶん難しい品のようね。でも、それをどう商売に繋げるか考えるのは商人の仕事。だから思いついたことはどんどん教えてほしいわ。もし新しい商材があるなら、それは村にとってもいいことのはずでしょう?」


 ここぞとばかりにお嬢様がグイグイ詰める。カラトア神官は商売に関しては疎いのでしょう、ちょっと引き気味だ。

 けれど田舎の村でも良い商材があるのであれば、お金が稼げるだけではなく行商人が訪れる回数も増えるはず。きっと豊かになるのですから、悪いことではないですよね。

 とりあえず、素晴らしく美味しい赤い実とやらは楽しみにしておくことにしておきましょう。口にできる機会があればいいのですが。


 話し込んでいる二人については放っておくことにして、川の下流へと目を向ける。……そこでは鎧を脱いだ男性三人が、魚を獲ろうと頑張っていた。

 どうやら石で行き止まりをつくって、ニグさんとヒルティースさんがそこに追い込んだ魚をキリ君が手で捕まえるという作戦のようだ。網もないのにあれで獲れるのだろうか。

 まあ、楽しそうだからいいか。ああも動き回っていては休憩になっていない気もしますけれど、三人とも体力はまだまだあるようですし。


「ああしていると、普通の子供ですねぇ」


 万が一溺れたときのためか鎧を脱いで、ズボンの裾を折り腕まくりしているキリ君を眺める。歳のわりにずいぶんと賢くてしっかりしているし、いろんな技術を身につけようと頑張っているし、以前は命まで助けてもらったこともあって、この子はいったいどういう育ち方をしたのだろうと不思議に思った事はあったけれど……まさか勇者候補だったとは。

 まあ通常の勇者候補とはかなり違うのでしょうが、やはり驚きです。どうにも彼と勇者のイメージが結びつかなくて困るくらいに。


「家柄の貴賎や、産まれ持っただけの素質や才能。それは、勇者の資質になりうるのか、ですかー……」


 小さく小さく呟く。

 答えは、いいえ。たとえもの凄い力を持っていても、悪人ではダメです。高潔な善人でなければ勇者は務まらないでしょう。

 けれど同時に、力のない者は正義を通せません。魔物に祈りは通じないのです。


「つまり産まれ持った特別なものがあってー、どんな魔物も倒せる強い力があってー、善良な心を持つ人物がやるべきなんですよねー」


 指折り数えてみる。条件はたったの三つだ。捜せばどこかにいるのではないか。カラトア神官の話が本当なら、本命もちゃんと育成しているのでしょうし。

 おそらく……いいえ。ほぼ間違いなく、キリ君が勇者になることはないでしょう。この愚僧めですら、そんなことは分かります。だってもしずらっと並んだ勇者候補の中に彼がいたとして、選ぶ理由があるでしょうか? 見たところ普通の子供ですよ。

 もし彼が勇者に選ばれるとするなら、Aランク冒険者にでもなって国中に名声が轟くくらい実績を積み上げる必要があるでしょう。まず無理ですね。


「資格、かぁ」


 特別さと、力と、心。それはそれぞれ、勇者になるための要素にはなるだろう。

 けれどなにか違う気がした。それだけでは全然足りないと思った。

 勇者とはもっと、こう―――



「ユーネさん! 魚獲れたぜ!」

「すぐに焼いて食べましょう。新鮮な川魚ですよユーネさん!」



 名前を呼ばれて、いつの間にか地面へと向けていた視線を上げる。ニグさんとヒルティースさんがまだ暴れている魚を持って走って来る。その後ろにはキリ君も魚を持って歩いていた。一人二匹持っているようだから、ちょうど人数分だ。

 ……まさかあのやり方で獲ってくるとは。この川はよほど魚が多いのでしょうか。


「ワタを処理して串焼きですかねー?」

「そうですね。リルエッタさん、やり方を教えますのでナイフを準備してください」


 カラトア神官の言葉に、う、とお嬢様が尻込みする。

 ジャガイモの次は魚らしい。精神的にも技術的にも難易度が上がってしまった。以前釣りに行ったときも、お嬢様は生の魚には触れなかったくらいですし。

 でもまあ、冒険者ですからね。依頼人の前ですので、これくらいで怖じ気づくわけにもいかないでしょう。


「安心してくださいお嬢様。もし指を怪我しても、ここには治癒術士が二人もいますからー」


 チェリーレッドの髪の少女はこちらを少し恨めしそうに見てから、かっくりと項垂れる。そんなふうにしても手伝うつもりはありません。

 小食で偏食のお嬢様にしては珍しく、昨日のジャガイモのスープは残さず食べていました。それを温め直しただけの朝食もです。

 自分で料理したものは不思議と美味しく感じるもの。もしこれでお嬢様の偏食が直るのであれば、ここで恨まれることくらいなんでもありません。


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― 新着の感想 ―
あの二人、キリの友人としてなかなか良いポジションじゃね? 一緒に切磋琢磨しあって遊んで、元々子供にはあんまり好かれてなかったキリからしたら意外と好感度が高かったりして
[一言] ペリドット「君は英雄になるよ」 ……このペリドットさんのお世辞もとい妄言あらため宣言が、予言になってしまいそうで恐ろしいですね。なにせ未だ十歳未満。その年齢にしてすでに実戦をいくつも経験し…
[気になる点] リルエッタは火属性は使えるけど、水属性の魔術は使えないのかな キリは草や川の水を直に飲んでも平気だからいいけど、魔術で水が出せたら着火より便利そう 探査か軽量化の魔術が地属性だったと…
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