↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

事情聴取 2

事情聴取の続きです!

 洋太郎と入れ替わる形で食堂に入って来たのは、人形マニアの女性。彼女は、ムスッとした様子で口を開いた。


「……私は西尾若葉《にしおわかば》。二十五歳。ゲームプログラマーとして働いています。もう気付いているかもしれないけれど、私は人形マニアなの。ここが『人形館』である事は知っていたから、今回のツアーに飛びついたわけ。……こういう事情聴取って、犯人だと疑われてるみたいでなんだか嫌ね」


 卯月は、苦笑しながら若葉を説得する。


「皆様からお話を伺う事で事件解決が早まると思うので、ご協力をお願いします」


 卯月は、早速若葉のアリバイを聞く。若葉は、一つ溜め息を吐いてから質問に答えた。


 それによると、夕食の後、若葉は一人コレクションルームに行き再び人形の写真を撮っていたらしい。


 写真を撮った後、彼女が自室に戻ったのは十九時五十分頃。ちなみに、彼女の部屋は301号室。被害者の隣の部屋である。


 彼女は自室で自身の撮った写真を眺めたりSNSに投稿したりした後、バスルームでシャワーを浴びたと言う。その時間は二十一時頃。それからまた自室でSNSを利用して寝たと言う。


 バスルームに向かう際添乗員の野々宮とすれ違ったそうだが、それ以外には誰とも会っていない。


「私とあの山下とかいう女性は初対面よ。殺人鬼じゃあるまいし、初対面の人を殺害するなんて事しないわよ」


 呆れたような声で若葉は無実を主張する。卯月は、頷いてから最後の質問をした。


「では、不審な物音を聞いたりした事は?」


 若葉は、少し考えた後、思い付いたように言った。


「そう言えば、男性の悲鳴が聞こえたわね。甲高い声。夜の八時頃だったかしら」


 卯月、堀江、花音は、思わず顔を見合わせた。八時頃と言えば、堀江が蜘蛛の巣を見て腰を抜かした時間。若葉は、彼の悲鳴を聞いたのだ。


「あの、廊下に出て悲鳴の原因を知ろうとは思わなかったんでしょうか?」


 卯月が聞くと、若葉は何でも無いといった様子で答えた。


「男性の他にも女性の話し声がしたからね。何かトラブルがあっても、私以外の人が何とかしてくれると思ってたのよ。本当に緊急事態なら、誰かが私の部屋をノックしてくれると思ったしね」


 きっと、若葉はSNSに夢中で、投稿を中断したくなかったのだろう。卯月は、苦笑しながら頷いた。



      ◆ ◆ ◆



 若葉と入れ替わり食堂に入って来たのは運転手の大道進。彼は、自身の年齢が五十一歳である事、勤続二十九年のバス運転手である事を話してくれた。

 彼がこの館に泊まる事になった経緯は知っているので、卯月は早速アリバイを聞く。

 聞かれた大道は、顎に手を当てて考えながら答えた。


「えーと、昨日は十九時時五十分くらいまで、野々宮さんと夕食の片づけとかをしてたな。その後は、リビングでバス会社に連絡を取ったり、二階でシャワーを浴びたり……」


 シャワーを浴びる時以外はほぼリビングにいたという話なので、彼にもアリバイが無い事になる。

 卯月は、最後に聞いた。


「何か不審な物音を聞いたり、不審な人物を見かけた事は?」


 大道は、首を傾げながら答える。


「いや、何も見たり聞いたりしなかったよ?」



       ◆ ◆ ◆



 次に事情聴取を受けるのは、添乗員の野々宮美智留。彼女は添乗員として働き始めて五年目の二十七歳。

 アリバイを聞かれると、彼女は目を伏せがちにして言った。


「私は、大道さんと一緒に十九時時五十分頃まで夕食の片づけをしていました。そし

て、スマホで旅行会社に連絡をしてから、休む為に寝室へ……」


 美智留もほとんど部屋に一人でいた為、アリバイが無い。二十一時頃に二階のシャワールームに向かった際、美智留と若葉がすれ違ったという話の信ぴょう性が増しただけだ。


 何か不審な物音等に気付かなかったかと問われた美智留は、「いいえ」と答えて首を振った。


 事情聴取を終える直前、美智留は眉尻を下げて言った。


「実は私、昨夜うっかりマスターキーをキッチンに置き忘れていたんです。先程302号室を開ける為に寝室にマスターキーを取りに行ったら、見当たらなくて血の気が引きました。マスターキーを置き忘れるとしたらキッチンか食堂しか無いと思っていたので、すぐ見つかりましたが……。これは、事件と関係あるんでしょうか……」



       ◆ ◆ ◆



 事情聴取は、美智留で最後……というわけではない。卯月、堀江、ついでに花音も、犯人である可能性がゼロではないのだ。

 美智留には食堂に留まってもらう事にして、早速卯月が話し始める。


「改めまして。警視庁捜査一課係長の白鐘卯月と申します。現在三十一歳。今回は、リフレッシュする為にこのツアーに参加しました。謎解きは好きだったので」


 美智留、堀江の二人が目を見開いた。卯月は今、白いパーカーに紺色のジーンズという服装。そして、長い金髪を靡かせている。少し童顔なのもあり、とても三十一歳には見えなかったのだろう。


 まあ、そんな事は今どうでもいい。卯月は、構わず自身のアリバイについて語った。卯月の部屋は304号室。被害者である志保の部屋の西側に位置している。

 卯月も一人で部屋にいる時間が多かったので、アリバイは無い。敢《あ》えて言うなら、二十時頃に悲鳴を聞き、廊下で堀江や花音と会話をしたという事くらいか。


「ちなみに、私も不審な物音を聞いたりはしませんでした。……では、次に堀江さん。お話を伺って良いですか?」


 卯月に話を振られた堀江は、静かに頷いた後話し始めた。


「改めまして、僕は堀江雅人(まさと)と申します。実は、僕はここにいる木下花音さんの主治医で、今回は彼女の保護者としてこのツアーに参加しました」



 話を聞くと、花音は現在とある事情から養護施設で暮らしているらしい。花音は謎解きが好きで、今回の宝探しツアーに興味を示した。


 しかし、小学生が一人で参加する訳にはいかない。そこで花音は、主治医である雅人に付き添いを頼んだのだ。



 アリバイについて聞かれると、雅人は淡々と答える。


「夕食が終わってから、僕と木下さんは二階にある書庫に行きました。木下さんは読書が好きなので、書庫にある本の中で気になる作品のタイトルをメモしていたんです。そして、二十時より数分前かな? 三階にある部屋に戻ろうとしました」


 当初、雅人は302号室、花音は隣の303号室に泊まる予定だった。しかし、二人が東の階段に向かっていると、下から声が聞こえる。


「だから、305号室に泊まるのは嫌だって言ってるの!」


 気になった二人が一階に降りてみると、廊下で志保と美智留が言い合っているのが見えた。美智留は、困ったような顔で言う。


「しかし山下様。もう他の部屋は塞がっていて、305号室しか空いてないんです。掃除はしますので、どうか……」

「だったら、誰か他の客に説明して部屋を交換してもらってよ。私、例え掃除したとしても、305号室に泊まりたくないの!」


 志保はどうしても305号室を避けたいようで、荷物を持ったまま怒鳴り続ける。困り果てた美智留を見かねた雅人は、思わず志保に声を掛けた。


「あの、もしよろしければ、僕の部屋と交換しますか? 302号室なんですけど」


 すると、志保はパアっと目を輝かせて答える。


「あ、いいんですか? すみませんねー。ありがとうございます!!」


 こうして、雅人は部屋を移動する事になった。美智留が305号室の掃除をしようかと雅人に提案したが、彼女の手を煩わせるのも悪いと思った雅人はその提案をやんわりと断る。

 そして花音と一緒に305号室まで行こうとした雅人だが、蜘蛛の巣を見て腰を抜かしたというわけだ。


 雅人の悲鳴を聞いて駆け付けた卯月と別れた後、雅人と花音は305号室で少し本の話をした。そして二十時二十分頃、花音は部屋を後にして、303号室へと戻る。

 その後雅人はスマホや持ち込んだ資料で医学の勉強をしてから、シャワーを浴びて寝たという。花音と別れてからは一人だった為、やはりアリバイは無い。


「ちなみに、不審な物音などは?」

「聞いてません」


 雅人は、首を横に振りながら迷いもせず答えた。


 卯月は、念の為花音にも不審な物音がしなかったか聞いたが、彼女は「何も気付きませんでした」といって首を振るばかりだった。

 ちなみに、花音は一人になった後ずっと303号室で本を読んでいたとの事。


 卯月は、小さく溜息を吐く。全員にアリバイが無い。しかも、志保を殺害する動機のある者がいない。

 敢えて言うなら志保と喧嘩をした洋太郎に動機があると言えなくはないが、あんな喧嘩をしたくらいで彼女を殺害するだろうか?


 何の収穫も無いまま、事情聴取は終わった。

感想等を頂けると嬉しいです(´艸`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。