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事情聴取 1

卯月の職業が明らかに!

事情聴取が始まりますよ~!!

 志保の遺体が発見された約十分後。卯月達ツアー関係者は、リビングへと集まっていた。唯一外で通話をしていた美智留が、浮かない顔でリビングへと入ってくる。


「通報して頂けましたか? 野々宮さん」


 卯月が聞くと、美智留は躊躇いがちに言った。


「はい、警察には通報しました……けれど」

「けれど?」

「昨日土砂崩れがあったせいで道路が塞がっていて……警察が到着するのは、今日の夕方になるそうです」

「そうですか……」


 司法解剖が遅れるのは痛いが、仕方ない。美智留がソファーに腰掛けたのを確認してから、卯月は関係者達を見渡して言った。


「皆さん。警察が来るまで、私が状況の整理をしたいと思うのですが、個別にお話を伺っても宜しいでしょうか? 一人ずつ食堂にお呼びする形で」


 すると、人形マニアの女性が口を尖らせて異を唱える。


「でも、白鐘さんでしたっけ? あなたが犯人だという可能性もありますよね。私達の話を変に捏ね繰り回して、真実を有耶無耶にするかもしれないのに、そんなの納得出来ません!」


 卯月は、顎に指を当てて考え込んだ。確かに、初対面の人間を信じろと言うのも無理がある。

 チラリと花音や堀江の方を見た後、卯月は言った。


「では、事情聴取の際にこの堀江さんを同席させるというのはどうでしょう? さすがに子供連れの彼が殺人を犯す可能性は低いと思いますし、私の監視役としてはピッタリだと思うのですが」


 人形マニアの女性は、うーんと唸った後、頷いて答える。


「……まあ、そういう事なら……」


 それを聞いた卯月は、堀江の方に向き直って聞いた。


「堀江さん、勝手に名指しして申し訳ありませんが、事情聴取に同席して頂けませんか?」


 堀江は、花音の方に向かって尋ねる。


「……木下さん、僕が事情聴取に立ち会っている時、一人にしても大丈夫?」


 すると、花音は堀江の着ている白いシャツの袖をギュッと握って答えた。


「……出来れば、堀江先生と離れたくないです……」


 卯月は考えた。花音は、山下志保の遺体発見時、堀江の影に隠れていたので直接遺体を見ていない。事情聴取で、生々しい殺人の様子が語られるとも思えない。この子を事情聴取に立ち会わせても、トラウマにはならないだろう。


「……もしよろしければ、木下さんも事情聴取に立ち会いますか? 木下さんも事件の関係者ですし、今更事件の詳細を秘密にする事は無いでしょう」


「どうする? 木下さん」


 堀江に聞かれた花音は、無表情で頷きながら答えた。


「……邪魔にならないようにするので、私も立ち会わせて下さい」



       ◆ ◆ ◆



 それから数分後。食堂には、卯月、花音、堀江、洋太郎の四人がいた。卯月の向かい側に座った洋太郎は、目を伏せたまま弱弱しい声を出す。


「……事情聴取を受けるトップバッターはやっぱり俺ですよね……。改めまして、俺は高嶋《たかしま》洋太郎。二十六歳で、食品加工会社で営業してます……」


 話によると、被害者である山下志保《やましたしほ》も洋太郎と同じ会社に勤めているらしい。志保は洋太郎と同じ二十六歳。二人は二年前に知り合い、今から半年前に付き合い始めたとの事。


 今回は、謎解きに興味のあった洋太郎が志保をツアーに誘った。最近忙しかったので、久しぶりの遠出を楽しみにしていたようなのだが……。


「まさか、こんな事になるなんて……」


 洋太郎は、右手で額を押さえながら消沈した様子で呟いた。卯月は、申し訳なさそうな表情で質問する。


「山下さんが亡くなったばかりで大変心苦しいのですが、昨夜十九時半頃から今朝七時半頃まで、どちらにいらしたか聞いてもよろしいでしょうか?」


 昨日夕食が終わったのが十九時半頃。そして、今朝洋太郎が食堂に現れたのが七時半頃。検視官がいないので、幅広い時間のアリバイを確認しなければならない。

 洋太郎は、宙に視線を彷徨わせながら答える。


「えっと……夕食が終わった後、俺と志保は一旦二階の東にある部屋――201号室に戻りました。そこでも少し言い合いをした後、志保は自分の荷物を持って、部屋を出て行きました。志保が302号室に移動した事は教えてもらっていません」


 その後、洋太郎は部屋で一人ヒントカードの意味を考えたり、音楽プレーヤーで曲を聴いたりして時間を潰していたらしい。そして、誰にも会わないまま今朝まで眠っていたとの事。


 ちなみに、彼は昨日、一階にあるトイレや二階にあるバスルームにも入ったらしいが、廊下で誰かとすれ違う事も無かったと言う。


 話し終えると、洋太郎は悲痛な声で訴える。


「確かに、最近は志保と口喧嘩する事が多くなってました。でも、楽しい思い出も多くて……俺は、絶対に志保を殺してなんかいません! 信じて下さい!」


 演技とは思えない。しかし、アリバイが無いのなら、彼の無実を証明する事も出来ない。

 卯月は、最後に聞いた。


「では、昨夜から今朝にかけて、何か不審な音を聞いたとか、怪しい動きをする人影を見たとかも無かったんですね?」


 洋太郎は、しっかりと頷いて答えた。


「はい、ありません」

山下志保を殺害した犯人は誰なのか……?

次回も読んで頂けると嬉しいです!

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