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嫌な予感

なんと、階段が崩れ落ちるというトラブルが!!

 話によると、大道は弁当屋のスタッフと館の外で雑談していたらしい。すると、突然強い雨が降り出した。


 弁当屋のスタッフ達は慌てて自身の店所有のワゴンに戻る。そのワゴンが屋敷を離れるのを見送ってから、大道は館の方に走って行った。

 野々宮さんに挨拶をしてから、自分も早めに退散しようと思ったのだ。


 しかし、突如大きな音が屋敷の外まで聞こえてくる。慌てて屋敷の中に飛び込み音の原因を探した大道は、目を見開いた。


 この館には東と西に階段があるが、西の方の階段が崩れ落ちていたのだ。しかも、一階から二階へと続く階段、二階から三階へと続く階段の両方が。赤いカーペットに覆われているので分かり辛いが、元々この階段は老朽化していたのだろう。


 そして、雨漏りだか何だかが引き金となって一気に崩れた。


 定期的に業者が館の清掃、修繕をしているはずだが、業者は何をやっているんだろう。いや、それよりも、ツアー客達が怪我をしたら大変だ。早く知らせないと。


 そう思い、大道は食堂まで駆け付けて来たらしい。




「大道さん、わざわざ知らせて下さりありがとうございます。後でうちの会社を通して業者に話をしておきます」


 美智留はそう言って大道に頭を下げた後、ツアー客達の方に向き直って言葉を続けた。


「皆様、そういう事ですので、西の階段……ホストの寝室がある方の階段は、上階段も下階段も使用しないで下さい!」


 どうやら、一階から二階へと続く階段を下階段、二階から三階へと続く階段を上階段と呼んでいるらしい。

 少し不便だが、使えないものは仕方ない。卯月は、無言で頷いた。


「じゃあ、俺はバスで帰るよ。また明日」


 そう言って食堂を後にしようとした大道だが、不意に軽快なメロディーが聞こえて足を止める。彼のスマホが着信を告げているのだ。


 廊下で通話をしていた大道だが、しばらくするとまた食堂に顔を出した。そして、申し訳なさそうに美智留に向かって言う。


「野々宮さん、申し訳ないけれど、今日この館に泊まらせてもらえないかな。今弁当屋から連絡があって、麓で土砂崩れがあったそうなんだ」

「ええっ!!」



 聞くと、弁当屋のスタッフがワゴンで麓を走っている時、背後で大きな音がしたらしい。スタッフは、ワゴンを止めて慌てて背後を確認。

 すると、狭い山道を崩れた土砂が塞いでいたという。幸いにも弁当屋は、土砂に埋まる事も立ち往生する事も無かった。


 しかし、バスの運転手である大道は帰れないかもしれない。心配した弁当屋のスタッフは、すぐに大道に連絡して来たらしい。



「それは大変ですね……。客室は全て塞がってますけれど、今日はホストの寝室で休んで下さい、大道さん」

「それはありがたいけど、野々宮さんはどこで寝るの?」

「私はリビングで寝ます」

「いやいや、女性をリビングのソファで寝させるなんて出来ないよ。俺がリビングで寝るから、野々宮さんは寝室で寝な?」


 しばらく考え込んだ後、美智留は笑顔で大道に言った。


「では、お言葉に甘えて寝室に泊まらせて頂きます。ありがとうございます、大道さん」


 大道は、手を横に振って苦笑しながら答える。


「いやいや、俺の方が飛び込みなんだからさ。それに、弱小の旅行会社と弱小のバス会社同士、仲よくしよう」


 そんな美智留と大道の会話を聞きながら、卯月は窓の外に目を遣る。既に闇の色に染まっている空。何となく、もっと良くない事が起きそうな予感がした。

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