真相 2
次回で完結です!
そして現在。卯月は、あたかも自分が真相に気付いたかのように説明を続ける。刑事たちと話し合い、名探偵が秀一郎である事は公表しない事にしたのだ。
「和歌山県警のお二方と館を調査した際、ちょっとした実験をしてみました。堀江先生にも協力してもらいましたが。田辺さんに305号室の手前にある廊下に立ってもらい、そこから大声で叫んでもらったんです。そしたら、201号室の前にいた私には微かにその声が聞こえました。そして、その隣にあるコレクションルームにいた堀江先生には全く声が届かず。東の上階段にいた伊勢崎警部には、単語もはっきり聞こえていたようです」
雅人が悲鳴を上げた当時、201号室の高嶋洋太郎は音楽を聴いていたので、雅人の悲鳴は聞こえなかっただろう。
ちなみに、和歌山県警の別の警官には一階にいてもらったが、声は全く聞こえなかったらしい。
「成程……。でも、もしかしたら私は甲高い声を出せるのかもしれないし、それだけでは私が殺人を実行した証拠にはならないでしょう?」
「ええ。でも、もう一つ状況証拠を見つけました」
「状況証拠?」
首を傾げる大道に、卯月はこう言った。
「大道さん。あなた、庭にあったホースで地面に水を撒きましたね?」
大道は、大きく目を見開いた。卯月は、再び秀一郎の推理を思い出す。
◆ ◆ ◆
伊勢崎にお手柄だと言った直後、秀一郎は玄関で説明を始めた。
「犯人――大道進は、ホースで地面に水を撒いたんだ。目的は恐らく、足跡を隠す為」
「足跡?」
今まで黙っていた雅人が首を傾げる。秀一郎は、雅人の方に視線を向けて言葉を続けた。
「ああ。恐らく犯行直後、大道進は玄関とバスの間を二往復……いや、三往復している。その跡を、隠したかったんだ」
ここからは大いに想像が交じるが、恐らくこんな事があったのだろう。
昨夜の犯行後、大道はそっと一階のリビングに戻ろうとした。しかし、思わぬハプニングに見舞われる。玄関と食堂の間にある廊下を歩いた時に床が壊れてしまったのだ。
バキッという音が響き、大道は焦る。一階にいる野々宮美智留にこの音を聞かれ、何をしているのか尋ねられたら終わりだ。
しかし、誰も廊下に出てこない。美智留は疲れて深い眠りに就いているのか。
このままリビングに戻ろうとした大道だが、ふと思い至る。
もしこの廊下が壊れているのが明日の朝にでも発見されたら、誰がいつ足を踏み外したのかと追究されるかもしれない。そしたら、最初に疑われるのは一階に泊まっている自分か美智留だ。
それはまずい。何の為にこの廊下を歩いたのか聞かれたら、大道は答える事が出来ない。
そこで大道は、こっそりと廊下の床を修繕する事にした。わざと強度を上げずに。
バスから工具を取って来るのに一往復。廊下の修繕後、工具をバスに戻すのに一往復。玄関とバスを合計二往復した。
音を立てないよう慎重に作業をした大道は、修繕終了後、額の汗を拭った。
これで、明日の朝に大道がわざと廊下の床板を踏み外せば、朝まで廊下は壊れていなかったと思わせる事が出来る。
もちろん、だからといって犯人が犯行時に廊下を渡らなかった証拠にはならない。しかし、少しでも自分が疑われる可能性が減らせるのなら、作業をする意味はあるように思えた。
今後こそリビングに戻ろうとした大道は、ハッとする。今は雨が止んだばかり。道路はぬかるんでいる。玄関とバスを二往復した足跡が残っているはずだ。
それはまずい。バスから工具を持って来て修繕した事がバレるかもしれない。そこで大道は考えた。庭にホースで水を撒き、足跡をグチャグチャにして隠してしまおうと。
そして大道は、一旦バスまで行き、ホースで水を撒きながら後ろ向きで玄関まで戻る。不自然にならないように、庭の広い範囲に水を撒くのを忘れないようにして。
大道が玄関に辿り着く頃には、足跡がほとんど見当たらない庭が出来上がっていた。
ちなみに、工具のある場所を知っているのは大道だけの可能性が高く、他の者がこの偽装工作をするとは考えにくい。
残り一話!
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