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3話 【ゼニス歴1060年 ニール視点】

「ここなら少しゆっくり出来るだろう」

腰を落ち着ける訳ではないけど、慌ただしく旅をするフェーズは終わったらしい。

俺達は山の中の小さな村で家を借りて生活を始めた。

俺としてもそろそろ本格的に薬草の調査をしたいと思っていたところなので、素直に嬉しかった。


デイルはこの村の危機管理役として、剣術指南や獣害からの防衛柵の建設等の仕事を始めた。


すなわち俺はヒマになったのだ。

当然学校なんてもんはない。

村の子供たちは親の手伝いをし、時間があれば子供たちで集まって遊んでいた。


そんなときにイルルという少女に出会った。


俺は元35歳のプライドもあり、あまり村の子供たちと絡もうとはしなかった。

逆に、草花に夢中で同年代の子供からは避けられていたような気がする。


ある時、家の前の地面にコレクション?を並べて乾燥させていた。

丸い葉、細い葉。

赤い茎の草。

白い花、赤い花。

木の皮のようなもの。

細い草の根っこ

黄色い根っこの塊、、、


これが薬になる!

ワクワクして乾燥させていた時、

イルルは俺が乾燥させていた花に興味を持ったらしく、そこから色々と話すきっかけが出来た


「なにしてるの?」

「乾燥させてるんだ」

「へー。」

「特に面白くないだろ?」

こう言って追い返そうとしたときに、イルルは興味津々に聞いてきた。

「お花、すきなの?」

「へ?」

「私はお花好きだよ」

「あっそ」

「お花好きじゃないのになんで飾ってるの?」

「だから、これは飾ってるんじゃないって。乾燥させて、薬を作ろうと思って、、、べ、別にいいだろ」

「どうして葉っぱとお花と別々に並べてるの?」

おっ?こいつ、なかなかいい所に目を付けてくるじゃないか。

「ああ、これは【分類】別に並べているんだ」

「ぶんるい?」

「効能別だ」

「こうのう?」

「薬の効能」

「くすりってなに?」

「薬ってのは、怪我や病気になった時に、って、何でもいいだろ、うるさいな」

「ふーん。変な子だね」

「よく言われる」

「でも、」

「?」

「わかんないけどすごい事してるんだねっ!」

「・・・まあな」


こんな感じで、イルルとの交流が進んでいった。


この村の子供たちはなにかしらの仕事をしている。

畑仕事をする子、狩りの罠を作る子、衣服や靴の針仕事をする子、子守をする子、水汲みをする子、様々だ。

イルルは、というと森の入り口付近で野草やキノコを取ってくる母の仕事を手伝っていた。

イルルの母は野草や薬草を採取し、それを教会に納めて生計を立てていた。

イルルの母は森の草花やキノコの生育状況を把握しており、俺はイルルの母によく話を聞いていた。

仕事にもよく一緒に連れて行ってもらった。

ちなみにイルルの父親はいないそうだ。なんでも、もの心ついた時には亡くなっていたらしい。


あれから1か月ほど経ち、俺達は村にだんだん溶け込むようになっていた。

今日も俺はイルルとイルルの母の仕事を手伝っていた。

一応、お小遣い程度の賃金をもらっている。

働かざる者、食うべからずだ!


「さあ、今日もいい天気ね。イルル、ニール、行きましょう!」

「ヤマルさん、今日もお願いします!」

「いいお返事ね、ニール」


イルルの母は森の中に入っていくが、俺達は森の入り口付近で野草を採取している。

やはり危険を伴うらしい。


「今日は私もニールと一緒にお花を摘むよ」

「ああ」

「今日は素直だね~」

「断っても付いて来るじゃないか」

「ふふーん、ようやくワタシの事を理解したんだね」 面倒くさいだけだよ」

「えーー!!」


しばらく薬草を探していると、イルルが騒ぎ出す!

「ニ、ニール!蛇だよ!」

「ああ、蛇だな」

「毒持ってるやつだよ、このヘビ!! 逃げなきゃ!」

「馬鹿いえ!こんな貴重なヘビ、逃げるなんてもったいない!とっ捕まえて素材にしよう!」

「えーー!!」

俺は蛇を捕まえ、首を落とした。

すばやく口の中からヘビ毒を取り出す。



「ニール!薬草みつけたよ!」

「ん?どれ?」

「じゃーーん!」

イルルが出したのは、トゲトゲした葉っぱのついた草だった。

「すごいでしょ!一人で見つけたんだよ!」

「イルル、それ…」

「なに?」

「毒薬だ」

「…え?」

「それ触るとかぶれるぞ」

「えーーー!」

イルルは慌てて草を放り投げた。

しかしもう遅い。

イルルの手は赤くなっている。

「ニ、ニール、なんかかゆい気がするぅー!」

俺はため息をつきながら言った。

「だから、かぶれるって言ったろ?」

「ニール、かゆいよぅー!」

「治してやるからちょっと待ってろ」

「治すってどうやって?」

「俺は薬師だ。薬師に出来ない事はない。」

「本当に!?」

「ウソ」

「えーー!!」

「薬師に出来ない事はいっぱいある。別に強くないし、頭がいいわけでも、足が速いわけでもない。」

「じゃあ…」

「でも、このケガは治せる!」

「…本当に?」

「ああ、まかせとけ。お前のケガも病気も俺が全部治してやる!」

俺はカバンの中から草を一つ出し、指で潰し、白い汁を絞り出した。

その汁をイルルの手に塗った。

「ちょっと冷たい…」

「我慢しろ」


数分後


「……あれ?」

赤みが引いてきた。

「治ってる!」

イルルは俺を見た。

「なんでこんなこと知ってるの?」

「それが薬の効能」

イルルは少し黙り、それから失礼な事を言った。

「やっぱり変な子!」

「だからよく言われるって」

「…でも」

イルルは少し楽しそうに続けた。

「ニールってちょっと面白い子!」

「それは初めて言われた」

イルルは俺のカバンの中の草や葉っぱを見て言う。

「これって全部「薬」なの?」

「おそらく」

「どういうこと?」

「まだ調べ切れていないんだ」

「へー。じゃあさ、一緒に調べようよ!」

「え?」

「決めた!私もニールと一緒にこの葉っぱの「こうのう」を調べる」

イルルは満面の笑みを浮かべて言った。


「今度は私がニールを助けてあげる!」


俺は少し考えてから言った。

「うん」

イルルは嬉しそうに笑った。

「やった!」

この時、俺はまだ知らなかった。

この少女と始めた小さな遊びが、やがて俺達を苦しめ、この国を揺るがすものになることになろうとは。


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