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22話 ゼニス歴1071年 ニール視点

その後、完治したピノはしばらくして治癒院を出てい、、、かなかった。

ピノはイルルに懐いたらしく、イルルと森に薬草を採りに行く手伝いをしている。


俺は「抗う薬」の量産化を目指すも、現代技術がないこの世界において、それは不可能であった。

この世界においての細菌を寄せ付けない青カビそのものの特定は出来た。

問題はそのカビを大量に培養させ、菌糸を濾しながら成分を抽出する作業を何日もかけてようやく1人分出来るのでやっとであり、大量生産なんて夢のまた夢であった。


俺は方針の根本を変えていく。

要は細菌感染症を減らせばいい。

酒や酢等を活用し、傷口についた細菌を繁殖させない様に対処していく。

これで傷口の表面についた細菌を減らすことが出来る。

また、煮沸消毒の概念や精製水なんてものも製造し、この世界の医療概念を根底から否定していく。


「この治療院に来れば、治してくれる」


その噂が市井の間で広まり、俺は本格的にエルバート王国に対抗する力を手に入れるべく行動を開始した。


そんな最中に、ある女の子が妹を診てくれと夜中にやってきた。

顔は全く一緒。どうやら双子の様だ。


「妹を助けろ!」

痩せた姉と思われる少女が同じ顔だが、顔色の悪い少女を背負っている。


息が荒い。

目が血走っている。


「金なら時間かかってでも払う!慰み者になってもいい。なんだってする!だから診ろ!」

叫び声が夜中の治療院に響く。


背中の少女はぐったりしている。兎に角、顔色が悪く、唇も紫がかっている。

俺は近づく。

「降ろせ」


姉は一瞬ためらいながら、すぐにベッドに寝かせた。

「妹だ」

そりゃそうだろう。姉はロング、妹はショートボブ風と髪型は違うが顔がそっくりだ。

「最近ずっと調子が悪かった・・・」

言葉が途切れる。


歯を食いしばっている。

診る。

腕に小さな傷がある。

治っていない。それどころか滲んでいる。

口元、歯茎。

(出血してるな)

体を触る。

一瞬、姉の方が目を強めたが、気にせず触診をすすめる。


弱い。明らかに弱い。

だが、細菌感染症ではない。

傷でもない。

頭の中である病状に繋がる。

(栄養欠乏・・・?)

「お前ら、最近、何食ってる?」

俺は聞く。


女が睨む。

「は?なんでそんなもん言わなきゃならねえんだ」

「いいから答えろ。最近の食事は?」

「・・・干し肉だ」

「それだけか?」

「それで十分だろが!腹が少しでも膨れりゃそれでいいんだ!」

姉は俺に怒鳴る。そりゃ当然だ。


でも俺は告げる。

「足りない」

「はぁ?もっと食えってのか!?」

「違う。栄養が足りてない。だからこの子は死にかけてる。」

空気が止まる。


「・・・ふ、ふっ、ふざけんな!」


姉は声を荒げる。

「食ってるだろ!そりゃ最近体調悪かったから仕事が出来てなかったし、少し少なかったかもしれねえ。でも、ちゃんと食ってんだ。飯食ってんのに人が死ぬわけねえだろが!!」

「死ぬ!」

俺は即答した。


「・・・なっ!!」

沈黙が流れる。

イルルが口を開く。

「・・・本気?」

俺は頷く。

「果物はあるか?」

「シナールでよければ」

シナール。いわゆる林檎の様な果物だ。

「なんでもいい。あと野草も追加で」


しばらくして籠にシナールと野草が出てきた。

「これを食わせろ」

「てめえ!ウチらが汚ねえ病人だからって馬鹿にしてんのか!!」

俺に掴みかかってくる。が、俺は意に介さない。

「今すぐにだ。やらなければこの子は今夜にでも死ぬ」


しばらく睨み合いが続く。


やがて、舌打ちをした姉が折れ、そして言われた通りに動きだした。

「・・・チッ」

シナールの皮を剥き、野草と共に食べやすく擦りおろしたものを妹に少しずつ口に入れていった。

手先は器用な様だ。ナイフの使い方も上手い。

結構な手練れだな、こいつ。


時間が流れる。

一日。

二日。

三日。

そしてーーー。

「・・・ミラ、おはよぉ…」

かすれた声。だが確かに生きている声。

「・・・馬鹿ミア、遅えよ」

姉は咽び泣く。

「ミラ、ごめんねぇ…」

「いいんだ。」


ミアと呼ばれた少女が快復し、治療院を出ていく日。

「・・・ありがとな。」

ミラと呼ばれた少女が俺に言う。

「気にするな。身体に必要だったものが足りなかっただけだ」

「・・・そんなもんで」

「人間なんてそんなもんだ」


沈黙。


やがてミラは立ち上がる。

まっすぐに俺を見る。

「あんた名前は?」

「ニール。別に覚えなくていいぞ」

少し考えて、そしてニヤッと笑った。

「面白いな、あんた」

「それはあんまり言われたことないな」


ミラは続ける。

「あんたのその知識、いくらになる?」

俺は少し考える。

そして答える。

「お前ら、どうせ碌な仕事してないんだろ。だったら働け、ここで。俺達には手が足りない。」

双子の少女は一瞬止まる。

それから笑った。

「いいぜ」「いいよ~」

「その代わり、その知識全部盗ませてもらう」「もらいます~」

盗賊姉妹が仲間に加わった。

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