16話 ゼニス歴1066年 ファラン視点
本日より第2章のスタートです!
ここはエルバートエルバート王国の首都エルドラッド。王城での話である。
エルバート王国の王、ファランは高揚していた。
人生において4回目の転生儀式は無事に成功。
今回の転生者4名全員共に確保済み。
今日で3歳となり、記憶を取り戻したであろう、転生者がまもなく王城へ上ってくる。
前回は1名を取り逃がし、最後は死んでいたというクソの様な結末であったが、今回は首尾よく進んでいる。
順調だ。
実に順調だ。
年齢から考えて今回の転生術が我が人生で最後の転生術になるだろう。
あとはこの転生者から有益な情報を引き出し、軍備増強の足掛かりとする。
そうすれば我がエルバート王国の繁栄は未来永劫の物となるだろう。
そして私はエルバート王国の歴史の中で最も偉大な王として語り継がれるだろう。
王ファランは興奮していた。
「陛下、まもなく転生者が参ります!」
「あい、わかった!」
王は玉座へと向かった。
【視点:香織】
「・・・ここは、どこ?」
「・・・なんでワタシはこんなところに連れてこられている?」
「・・・なんでワタシは子供なの? 3歳児くらい?」
「・・・刀祢はどこ?」
謎が謎を呼ぶ完全なループ。
稲見香織は混乱していた。
といっても子供になっている香織には為す術がなかった。
言葉はまったくわからないし、通じない。
腕は十字にされ完全に固定されている。
荷台の様な、台車の様なものに棒が立てられ、それに香織は縛り付けられていた。
捕虜にしても不当な扱いであった。現代社会においては、だが。
ギギィィ!!
目の前の大きなドアが開かれる。
「なに、ここ?
よく映画とかで見る玉座の間みたい・・・」
王様かな? どうやらワタシに何か言っているみたい。
「●●●! ●●●●●●●●●●●●!」
「●●、●●●●●●」
え?
なに?何されるの!?
周りの人がざわめいている。
だが、ワタシを見る目からして、決して私の味方というわけではない事だけはわかった。
ワタシ、殺されるのかな・・・。
王様っぽい人と綺麗な女の人が近寄ってくる。
「あ、あの、一体なにを・・・」
女の人がワタシの額を触る。
「●●●●●●●●● ●●●●●●● ●●●!」
そうするとワタシの体が青く光り出した!
「え?え? えーーーーー!!!」
同時にワタシの記憶は薄れていった。
【視点:ファラン】
「転生者1名! 謁見を望みます!」
「入れ!」
「ほう、今回の転生者は女か」
「まあ、かわいらしい女の子だこと」
「さすがに性別まではわからんな」
「さあ、どんな知識を示してくれるのかしら」
「ふん。こちらも魂を削って転生術をほどこしているからな。役に立ってもらわないと困る。」
「陛下、こちらが此度の転生者がうち1名、『テオ』と申します。」
「そうか。大義であった」
「テオよ、そなたの頭には異世界の知識が詰まっておろう。それを我々に示してはくれまいか?」
テオと呼ばれた子は全く意に介していない。
挙動不審に周りを伺っている。
無理もない。
気付いた瞬間、自分の体が3歳の子供になっており、言葉も、文化も、なにもかも違う場所にいる訳なのだから。
自分にこのような事が起こったのなら発狂するのだろうな、とファランは哀れんだ。
ただ、これもすでに4回目だ。
哀れむことはあっても、同情はない。
なぜなら、これは「正義」なのだから。
「ふん、やはり今回も言葉はわからんか」
「はっ!」
「仕方あるまい。頭の中をのぞかせてもらおう、マルグリット」
妻、つまり王妃を呼ぶ。
「はい、陛下」
「お前の『スキル』の出番だ」
「はい。お任せください」
儂はテオに向き直り、伝える。
「テオよ!今より貴殿の転生知識を確認する!」
「では、失礼しますね」
儂はマルグリットはテオに近づいた。
「●●、●●●●●・・・」
意味不明の言葉を言っているが特に気にしない。
マルグリットはテオの額に手を当て、スキルを発動させた。
「一体なにを持ってきてくれたのかしら。 でも大丈夫よ。 すべてはエルバート王国の為に。」
テオの身体が青く光り出し、そしてテオの意識はなくなった。
「マルグリット どうだ?」
「・・・陛下」
「どうした?」
「この子の知識は『当たり』なのか『外れ』なのか、私には判別しかねます。
彼女の頭の中にある知識は、我々では到底理解の出来ないものです。
一体、この子は前世でなにをしていたのでしょうか。」
「もっと具体的に教えてくれないか」
「はい 彼女は『神官』だった模様です。」
「神官だと?神官でもどの位の位置にいた神官なのだ?」
「それが、はっきりとはわからないのです。いままではもっとわかりやすい事ばかりだったのに。
なにやら黒いものをみながら文字のようなものをみて、しきりに指を打ち付けている、ずーっとそればかり行っています。神官?いや罪人?彼女は贖罪をしているのでしょうか」
「なんだそれは?もう一度見るのだ」
「はい。・・・・あ、あ、あああああ!!!!!!」
「ど、どうしたのだ!」
「やはり彼女は神官なのだわ! これは楽器なのよ!
神と交信すべく何かの楽器の様なものを両手10本の指を器用に動かして神に向かい演奏をしています。
彼女が演奏をしたら暗闇の中から神がそれに呼応すべく文字の様なものが浮かび上がってくるのです。
彼女はヴォイド(闇)と会話しているのよ!!
彼女はヴォイド教の高位神官なのだわ!!
ヴォイドと交信できるなんて、なんてうらやましい!
一体彼女はなにを交信しているのでしょうか!!!
あああ!!!!!」
「お、おおお? それはすごい、のか?
マルグリットのスキルは「頭の中のイメージ」を読み取るものだからな。
うぅむ、聞いても良くわからん。
とりあえずこの子を育て、言葉を学ばせよ。
1か月後、また1か月と進捗と状況を報告するのだ。」
「ははっ!」
「陛下、このテオという子はもしかして神の子なのかもしれませんのよ!」
「わかった。わかった。その可能性もあるかもしれぬ。
その場合は丁重にな。アステリズム神聖国に目を付けられると厄介である。
いずれにせよ我が国にとって有益であれば抱え込み、無益であれば処分するという方針は変わらぬ」
「貴方!」
「わかった、わかった、わかっておる」
かくして、稲見香織の異世界生活が始まる。
やっとテオを出せました。




