表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界転生したら女魔法使いだったが、新制服がエロすぎたので全力で抵抗することにした  作者: 竹屋 兼衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

第19話:決着の王子様

俺の頭上で唸っていた水は――まだ消えていない。


皆の力で集まったそれは、

この場に、確かに残っている。


そして――


俺は、アイスドラゴンと化した王子と対峙していた。


ドラゴンの口が、大きく開く。

凍てつく牙が、俺へと迫る。


だが――遅い。


俺はそれを横へ躱しながら、

残った水を一気に収束させる。


頭部へ、叩き込む。


水が収束し、絡みつく。


逃がさない。


【ヴァトリナ】

「これで――」


一拍。


【ヴァトリナ】

「お前の呼吸を止める」


【王子】

「!?」


王子の吐き出す息で氷になる。


【ヴァトリナ】

「水だろうと、氷だろうと」


【ヴァトリナ】

「息は出来ないだろ?」


【ヴァトリナ】

「みんなの力の前では、何もできねぇんだよ」


【ヴァトリナ】

「お前だろうと――な」


【王子】

「む……ぐ、ぐぐっ……!」


ドラゴンの喉が詰まる。


俺が叩きつけた水は、

氷へと変わってなお――


そのまま喉奥を塞いでいる。


呼吸を奪う拘束。


だが――


バキッ。


嫌な音がした。


ドラゴンが、自らの氷に身体を叩きつけている。


無理やり、砕くつもりだ。


ヒビが走る。


まずい。


このままじゃ――割られる。


【ヴァトリナ】

「クソっ……まだ水が足りねぇか!」


その時だった。


【風紀委員長】

「まだある!!」


場違いなほど力強い声。


【ヴァトリナ】

「なにっ!?」


【風紀委員長】

「イーシアはまだ出していない!!」


一瞬。


全員の動きが止まる。


【イーシア】

「な、なにを根拠に……」


嫌な予感しかしない。


【風紀委員長】

「俺は――」


【風紀委員長】

「ずっと」


【風紀委員長】

「見てた!!」


最低の告白だった。


【イーシア】

「誤魔化せたと思ったのに……」


【イーシア】

「って、なんで見てるのよ!!」


【風紀委員長】

「あの生意気なイーシアが

 どんな顔で出すのか」


【風紀委員長】

「俺は――」


【風紀委員長】

「ずっと」


【風紀委員長】

「待ってた!!」


最悪だった。


【ブラーサル】

「おい、誰か警察を呼べ!!今すぐ!!」


【イーシア】

「死ね!!」


次の瞬間――


風紀委員長は、氷像になった。


ピタリと。


芸術的なほど完璧に。


――静寂。


【ヴァトリナ】

「……イーシア、頼む」


【イーシア】

「はぁ?」


冷たい視線。


【イーシア】

「私は王国の人間じゃないもの」


【イーシア】

「関係ないわ」


……正論だ。


今は、な。


【ヴァトリナ】

「くそっ……」


視線を上げる。


感じ取る。


空気。

熱。

気配。


そして――


水。


まだ、ある。


確かに、ある。


この場に。


この中に。


人間の中に。


【ヴァトリナ】

(……いる)


【ヴァトリナ】

(まだ、終わってねぇ)


視線を定める。


次の標的へ。


【ヴァトリナ】

「――総書記長!!」


視線を叩きつける。


逃げ場はない。


【総書記長】

「……私ですか」


他人事みたいな顔をしている。


ふざけるな。


こいつは――

全部わかってて、盤面だけ動かしてやがる。


【ヴァトリナ】

「裏でコソコソ動くだけで、人を弄ぶな!」


【ヴァトリナ】

「少しは表に出ろ!!」


一瞬。


空気が張り詰める。


【総書記長】

「……私一人では、足りませんよ」


【ヴァトリナ】

「なら――」


一歩、踏み込む。


【ヴァトリナ】

「“足りる状況”ならやるんだな?」


総書記長の目が、わずかに揺れた。


【総書記長】

「その時は――」


間。


【総書記長】

「私も、逃げるのはやめましょう」


……言質は取った。


次だ。


【ヴァトリナ】

「王子側の風紀委員の奴ら――何故だ!!」


【ピューイ】

「我らは下級貴族!」


【ピューイ】

「力ある者を重用してくださる殿下の方針こそ、我らの希望だ!」


――理解はできる。


だが。


【ヴァトリナ】

「それはな」


【ヴァトリナ】

「お前らより“強い奴”が現れた瞬間、全部切り捨てられるって意味だぞ」


【ヴァトリナ】

「どれだけ尽くそうが――関係なくな」


【ピューイ】

「それは……」


揺れる。


だが。


【ジュレン】

「それでも、だ」


迷いなく、言い切る。


【ジュレン】

「我らには、元から希望などなかった」


【ジュレン】

「力が認められている“今”があるだけで十分だ」


【ジュレン】

「落ちるなら――元に戻るだけだ」


……覚悟、決まってやがる。


厄介だな。


【ヴァトリナ】

「ヴェーラ!」


【ヴェーラ】

「私は殿下につきます」


即答。


一切の迷いなし。


【ヴァトリナ】

「王子が間違ってるのは――」


【ヴェーラ】

「ジュレンさんの言葉で、私も覚悟を決めました」


【ヴェーラ】

「殿下と共に落ちる覚悟を」


……そう来るか。


なら。


【ヴァトリナ】

「わかったよ」


肩の力を抜く。


そして――


【ヴァトリナ】

「そんなに“強い奴の言葉”しか聞けないってんなら」


【ヴァトリナ】

「――言い訳をくれてやる」


視線を、周囲へ向ける。


まだ動いていない連中。


傍観者。


【ヴァトリナ】

「おい、他の連中はどうだ!!」


【生徒A】

「殿下に従え!」


【生徒B】

「巻き込むな!」


【生徒C】

「勝手にやってろ!」


――バラバラだ。


まとまらない。


……面倒くせぇ。


【ヴァトリナ】

「……もういい」


静かに言う。


【ヴァトリナ】

「才能だの、理屈だの――」


【ヴァトリナ】

「全部、後でいい」


一歩。


踏み出す。


【ヴァトリナ】

「まずは――止める」


【ヴァトリナ】

「王子様を」


拳を握る。


【ヴァトリナ】

「――全員でな」


間。


そして――


【ヴァトリナ】

「≪聖水の振動ホーリーウォーター・バイブレーション≫」


空気が震えた。


次の瞬間――


【みんな】

「ぎゃああああああっ!?」


体内の水が、強制的に揺らされる。


逃げ場はない。


拒否権もない。


全員、巻き込む。


【イーシア】

「なんで、私まで!?」


【ヴァトリナ】

「独りぼっちは可哀想だろ」


笑う。


【ヴァトリナ】

「こういうのはな――」


【ヴァトリナ】

「みんなでやるから、尊いんだよ」


【イーシア】

「後で殺す」


上等だ。


水が、集まる。


意志を失った連中から。


諦めた連中から。


流れるように――


俺の元へ。


【ヴァトリナ】

「……よし」


手応え。


十分だ。


【総書記長】

「君は……本当に、めちゃくちゃだ」


【ヴァトリナ】

「お互い様だろ」


一歩、前へ。


ドラゴンを見上げる。


【ヴァトリナ】

「――でもな」


【ヴァトリナ】

「今回は、俺の勝ちだ」


集めた水を叩きつける。


氷の拘束を――さらに強化する。


逃がさない。


今度こそ。


【王子】

「――っ!!」


ぐらり、と。


巨体が揺れた。


そして――


王子は、そのまま膝をついた。


氷の拘束。

呼吸の阻害。


限界は、確かに近い。


(……決まったか?)


一瞬、そう思った。


だが――


違う。


王子の体が、軋むように変色していく。


青が、焼けるように赤へと染まる。


【ヴァトリナ】

「……まだやる気かよ」


舌打ちする。


【ヴァトリナ】

「ファイアードラゴン化か!?」


氷を焼き切るつもりか。


……しつこい。


いいだろう。


なら――


【ヴァトリナ】

「こっちも、やり方を変える」


俺は上着を引きちぎるように脱ぎ捨てる。


胸元に巻き付ける。


構えを落とす。


“殴る”姿勢だ。


【ヴァトリナ】

「ムスカール!!」


振り向きもせず、叫ぶ。


【ヴァトリナ】

「俺にバフを掛けろ!!」


【ヴァトリナ】

「《筋肉啓蒙マッスル・エンライトメント》だ!!」


【ムスカール】

「いや、それは――」


【ヴァトリナ】

「王子もやってただろうが!!」


【ブラーサル】

「そうだ!やっちゃえムスカール!!」


【ムスカール】

「……ふん。覚悟を決めたぞ!」


一拍。


【ムスカール】

「《筋肉啓蒙マッスル・エンライトメント》」


――熱が走る。


筋肉が、膨れ上がる。


骨が軋み、血が巡る。


力が、満ちる。


同時に――


氷の拘束が、耐えきれず崩れた。


【王子】

「ぶはっ……!はぁ……はぁ……!」


ドラゴンが、息を取り戻す。


だが――遅い。


【ヴァトリナ】

「終わりだ」


踏み込む。


床を砕く勢いで。


氷塊を掴む。


――重い。


だが関係ない。


【ヴァトリナ】

「おおおおおおおおっ!!」


振り抜く。


叩きつける。


ドラゴンの頭へ。


鈍い衝撃が、体育館に響いた。


【王子】

「……っ」


巨体が――崩れる。


そのまま。


動かない。


静寂。


誰も、声を出せない。


【ヴァトリナ】

「……おい」


息を整えながら、周囲を見る。


【ヴァトリナ】

「風紀委員長?」


……反応がない。


【ブラーサル】

「氷漬けのままだよ」


【ヴァトリナ】

「だろうな」


肩を竦める。


その時――


【総書記長】

「では、私が」


一歩、前へ出る。


そして、はっきりと宣言する。


【総書記長】

「勝者――ヴァトリナ・リンドストレーム!!」


……終わった。


やっと。


長かった。


俺は、右腕をゆっくりと掲げる。


歓声が上がる。


【ブラーサル】

「やったー!!」


【サーブル】

「見事だ!」


【ムスカール】

「筋肉の勝利だ!!」


【ヴァトリナ】

「……ああ」


息を吐く。


【ヴァトリナ】

「筋肉が、勝ったな」


笑う。


だが――


全員が喜んでいるわけじゃない。


沈黙。


ざわめき。


視線。


【イーシア】

「ヴァトリナ」


冷たい声。


【イーシア】

「あとでツラ貸しなさい」


【ヴァトリナ】

「……はいはい」


怖ぇな。


歓声とブーイング。


安堵と不満。


勝利と、火種。


全部が混ざったまま――


体育館は、ざわつき続けていた。


【ヴェーラ】

「殿下!」


崩れ落ちた王子へ、ヴェーラが駆け寄る。


【王子】

「……ヴェーラか」


かすれた声。


だが、その目はまだ死んでいない。


【ヴェーラ】

「はい。私です」


【王子】

「……そうか」


ドラゴンの巨体が、ゆっくりと仰向けに倒れる。


天井を見上げる。


その視線は、どこか遠い。


【王子】

「……負けた、か」


静かに。


事実だけを噛みしめるように。


次の瞬間――


光が収束する。


巨体が縮み、人の形へと戻る。


王子はそのまま床に横たわり、息を吐いた。


俺は、歩み寄る。


一歩ずつ。


【ヴァトリナ】

「王子様」


【王子】

「……おめでとう」


ゆっくりと視線がこちらを向く。


【王子】

「そなたの勝利だ」


【ヴァトリナ】

「違うな」


即答する。


【ヴァトリナ】

「これは――全員の勝ちだ」


ざわめきが、わずかに広がる。


【王子】

「……」


【王子】

「意に反した者すら使って、か?」


責めるでもなく。


ただ、事実を確認するように。


【ヴァトリナ】

「ああ」


肩をすくめる。


【ヴァトリナ】

「悪いとは思ったが、使わせてもらった」


【王子】

「……」


一拍。


そして――


【王子】

「くく……ははは……」


笑う。


かすれた声が、やがてはっきりとした笑いへ変わる。


【王子】

「なんとも……ふてぶてしいな」


【ヴァトリナ】

「民主主義ってのは、そういうもんだろ」


視線を逸らさず、返す。


【ヴァトリナ】

「少数は、多数に従う」


【ヴァトリナ】

「それがルールだ」


【王子】

「……」


王子は、しばらく黙っていた。


やがて――


【王子】

「……そうかもしれんな」


小さく、呟く。


【王子】

「余は……少数だったのだ」


【王子】

「いくら“輝く星”を集めようと」


【王子】

「夜空そのものには、なれなかった」


その言葉に、ヴェーラが目を伏せる。


【ヴェーラ】

「……申し訳、ありません」


【王子】

「よい」


優しく遮る。


【王子】

「そなたは、正しく輝いた」


【王子】

「道を違えたのは――余だ」


静かに言い切る。


責任から逃げない声だ。


……悪くない。


【ヴァトリナ】

「そうだな」


俺も頷く。


【ヴァトリナ】

「なら、聞かせろ」


一歩、踏み込む。


【ヴァトリナ】

「お前が間違えた理由を」


【ヴァトリナ】

「なんで――あの新制服になったのかを」


空気が変わる。


戦いとは違う、別の緊張。


【王子】

「……」


王子は天井を見たまま、目を閉じる。


【王子】

「くだらん理由だ」


【ヴァトリナ】

「決闘での条件だ」


【ヴァトリナ】

「逃げるなよ」


【王子】

「……」


わずかに、笑う。


【王子】

「そうだったな」


ゆっくりと、目を開く。


その瞳は――


もう、王子のものではなく。


一人の“敗者”のものだった。


そして同時に――


何かを決めた者の目でもあった。


【王子】

「ならば、話そう」


【王子】

「余が――」


【王子】

「あの愚かな服を作らせた理由を」


――静寂。


誰も、言葉を挟まない。


その続きを、待っている。


その理由が――


この戦いの“本当の終わり”になると、知っているからだ。


――こうして。


王子との決闘は、幕を閉じた。


だが――


本当の問題は、まだ終わっていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ